2023年秋の雑貨見本市は「素材感」と「手触り」を重視した製品がトレンド
東京では春と秋に雑貨関係の大きな見本市がいくつも開催されます。2023年秋も、ギフトショー、LIFE×DESIGN、大日本市、EXTRA PREVIEW、NEW ENERGY (ニューエナジー)などが開催されました。しかも、街に人が戻ってきたことを証明するかのように、出展者数も入場者数も多く、どの見本市でも面白い製品がいくつも見つけられました。特に、今回は久しぶりにコロナ禍以前のような規模での開催ができるようになった展示会が増えたこともあり、雑貨のトレンドもコロナ禍以降の生活や趣味を予見するようなものになっていたように思います。それは、例えば、「素材の質感」や「手触り」といった部分にフォーカスした製品に良いモノが多かったことにも表れていると感じました。
機能性や便利性といったことはすでに当たり前になって、その上で感じられる「人の手による仕事」や「従来の技術のアップデート」といったことが生かされた製品が、今後の生活雑貨や趣味・実用のアイテムの主流になっていくと感じさせる展示でした。出展している各メーカーも危機感を持って本気の製品を出してきているような気もしました。
そこで、今回の見本市で見つけた、質感や手触りといった部分に優れた、これからの雑貨の本流になりそうな、それでいて新鮮な製品を、2回に分けて紹介します。今回は、趣味や実用品の新しい潮流になりそうな製品たちです。
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紙や木を生活の中で生かした製品たち
hacomo「WOW!」シリーズ。写真右「カプセルガチャ」990円(税込、以下同)、写真左「うまい棒サーバー」1320円。他にも、「飛び出せ海賊くん」990円、「ダイヤル式金庫」1320円など、安価だけど、ちゃんと動くし組み立ても簡単なキットが並ぶ
・京都烏丸六七堂「張り子(おみくじ付き)」 紙では、和紙を使った縁起物やぽち袋などの小物を多く作っている京都烏丸六七堂の「張り子(おみくじ付)」のかわいさにもやられました。これが神社に並んでいたら、うっかり買ってしまうことは間違いないでしょう。昔からある張り子というアイデアの可能性はまだまだ大きいと思いました。
・ストーリオ「テーブルトップ・ウェルネス」シリーズ 曲げ木の技術を使って、木工製品ながらスタイリッシュな製品を作っているストーリオの「テーブルトップ・ウェルネス」シリーズは、いろいろな意味で画期的でした。
特に、「ハンドグリップ」は、オブジェとしても面白く、ハンドグリップとしてのバネの強さも、本気で鍛えるというものではなく、気軽に手遊びレベルで使える感じで、とても実用的。手で握る道具だから木製なのがとても心地よく、その意味では、見た目よりかなりズッシリと重い「ウッドダンベル」も面白い。「ミラー」の、自由なポジションで机上に置いておける鏡というコンセプトも素敵でした。
・島田小割製材所「温故知新シャープペン」 このところ、中高生を中心に大流行の木の軸の筆記具では、島田小割製材所の「温故知新シャープペン」に驚きました。
欅(けやき)、樫(かし)、槐(えんじゅ)、桜、栃、朴、黒檀、銀杏、花梨、一位、屋久杉、本鉄刀木、シャム柿、パドック、ブビンガ、パロサント、ゼブラウッド、パープルハート、イエローハートといった、多彩な木材を使ったシャープペンが、なんとどれも7700円。好きな木が選べて、同価格で買えるというのは、木製軸の筆記具が好きな人にはたまらないと思います。
これが可能なのは、作っているのが製材所だからというのも面白いと思いました。普段からさまざまな種類の木を扱っているからこそ可能なラインアップと、端材を使えるサスティナビリティも素晴らしいです。
素材をどう扱うかに新しさを見せるアイテムたち
素材感の面白さが際立っていたのは、design88の新製品。「経年侵化」と名付けられたシリーズは、厚みのある樹脂フレームに着色した後でエイジング加工を施した凝ったもの。しかも、使っている内に塗装が削れ落ちて、色が変化していきます。その新作「5010 明日?そんな先の事はわからない。」は、その一見派手なルックスなのに、実際に掛けてみるとすんなりと収まって日常的に使えます。しかし、ワンポイント的な装飾があったりと、攻めるところはしっかりと攻めているのが、とてもカッコいいのです。デザインに関しては「シンプル」がもてはやされがちですが、ただシンプルであれば良いというものではないということを教えてくれるメガネフレームだと思いました。
・PICUS「HANGING MULTI CLIP」 金属素材では、PICUSの「HANGING MULTI CLIP」がとても好みでした。バネ性の優れたリン青銅を使ったロングクリップで、見た目の主張は控えめで、売り場にあったら見逃してしまうかもしれないような製品ですが、この長さと、素材自体が持つバネ性をフルに活用したアイデアのおかげで、かなり幅広い用途に使えるクリップになっています。
マネークリップからしおり、メモホルダー、もちろんゼムクリップ的にも使えて、ペンケースに入れたり、バッグのポケットに差したりできるのは、道具としても優れていると思うのです。リングが付属しているので、メモなどを吊り下げることも可能。アクセサリーとしてもカッコいい気がするのです。
・スギテック「kachan ショルダーポーチ」 スギテックの「kachan ショルダーポーチ」は、カチャンと閉じる金属製の大型バックルを作っていたメーカーによる、PVC樹脂とバックルを組み合わせたポーチです。異素材の組み合わせのおかげで、懐かしいバックルが新しく見える面白さが魅力的。がま口用の金具などもそうですが、こういう昔からある便利なパーツに新しい用途を見出すアイデアは、今後重要になると思います。
・office otaka「Paperbag Style/PBS」 革素材のハリのある性質を上手く使ったのが、office otakaの「Paperbag Style/PBS」。豚革のスプリットレザー(床革)にPBS加工を施して、まるでショッパーのようなルックスに仕上げたバッグです。ネタもののようにも見えますが、厚みがしっかりあって、可動式のポケットも用意された、本気で実用に使えるバッグでもあるというところが面白い製品です。
随分前から販売している製品だそうですが、デザインの普遍性の高さと、適度な遊び心を、誠実な製品作りが支えていて、ロングセラーもうなずけます。
・ハイタイド「PENCO ブラウンバッグスタンド」 紙袋に見える革のバッグがあるかと思うと、“紙袋に見える磁器のペンスタンド”もありました。ハイタイドの「PENCO ブラウンバッグスタンド」です。アメリカ雑貨風なデザインのリアルな紙袋が、実は焼き物であるという面白さと、ペンスタンドとしては少し高さがある分、ハサミなども入れやすいサイズの実用性がうまく融合した製品です。どんな机やテーブルの上に置いても似合いそうな感じもいいですね。
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