タカラトミーアーツ「遊べる貯金箱 スペースインベーダー テーブル筐体型」1万2500円(税込)。サイズ:W153×D103×H96mm。電源:単3形アルカリ乾電池3本(別売)。発売は、2024年1月中旬を予定。現在、e組で予約受付中
その次に登場したのが、タイトーの「スペースインベーダー」でした。攻めてくるインベーダーを迎撃するという設定で、時々飛んできて撃ち落とすとボーナスポイントがもらえるUFO、単純ながらよく考えられたキャラクターデザインなど、SF的な世界観と、未来的なデザインは、よく分からないけど遊んでみたいという当時の人たちの欲求を刺激しました。 1ゲーム100円という、当時としてはかなり高い値段設定。しかも、最初の内はあっという間に100円分が終わってしまう難易度の高さにもかかわらず、多くの人が、テーブルの上に100円玉を積み上げて、何千円も使っていました。
45周年を迎えるスペースインベーダーを貯金箱に
タカラトミーアーツの「遊べる貯金箱 スペースインベーダー テーブル筐体型」は、その「スペースインベーダー」45周年を記念して、当時のゲーム筐体を約6分の1サイズに縮小。100円玉を入れるとゲームが遊べるところも当時のままに再現しつつ、その100円玉を貯めておける貯金箱に仕立てた製品です。しかも、当時のユーザーたちが発見し発明した裏ワザなども実装するという凝りよう。発売は2024年1月中旬を予定し、現在、タカラトミーアーツのECサイト「e組」及び「トキワダイレクト楽天市場店」で予約受付中の製品は、今なお発売に向けて開発が進められています。ゲームそのものは、スマホでも遊べる今、なぜ、当時を丸ごと再現しようとしたのか、タカラトミーアーツで開発を担当している、キャラクター事業部の村田素子さんにお話を伺いました。 「実は2009年にタカラトミー(今は別会社になっていますが)で『スペースインベーダーゲーム筐体型バンク』という製品を出しているんです。ただ、そのときは、まだ液晶などのパーツも高価でしたし、貯金箱にあまり高い値段は付けられないという事情などもあって、ゲームとしての再現がきちんとはできませんでした」と村田さん。
「スペースインベーダー」45周年ということもあり、今なら、当時のゲーム全体を表現できる貯金箱が作れるのではないかというのが、開発の始まりだったそう。
「今だからこそ作れるものを作りたいと思いました。なので、タイトーさんの多大なサポートはもちろん、私も、いろいろ調べたり、当時の筐体の中を見る機会を得たりして、できるだけ細部まで再現するようにしています」と村田さん。
ゲーム画面は、当時の記憶そのまま。画面横に貼られたインストカードなども再現。当時のテーブルは向かい側にもコントローラーがついていて、2人用だったので、この商品は1人用なのですが、このように両方に貼られているのです
「おもちゃショーでは、結構みなさん、懐かしいと言っていて、ずっと遊んでくださいました」と村田さん。
画面サイズはスマホより小さいし、もちろん、操作するスティックなども小さくて操作しにくい部分もあるのですが、それでも、ボタンの感触なども含め、「ああ、こんな感じ」という気分になれるのです。
貯金箱だから、プレイには100円玉が必要
「100円玉を入れてスタートするというのも当時のままです。ただ、貯金箱なので、入れた100円硬貨は取り出すことができ、実際は100円玉が1枚あれば、何回でも遊べます。100円玉は80枚まで入るので、貯めたり、使ったりして遊んでもらえたらと思っています。2回満杯にすれば、購入代金の元が取れちゃいますよ」と村田さん。この、100円玉を入れたら遊べるという部分と、貯金箱の「お金を貯める」という目的が、うまく合致しているのがこの製品の楽しいところ。しかし、今考えると、1978年発売当時のスペースインベーダーが1回100円だったというのは、ものすごく高く感じます。それでも遊びたいくらい魅力的だったということでしょう。
「e組」での先行予約購入特典のラバ-コースターのデザインには、インベーダーのドット絵が使われています。シンプルなデザインだが、今見ても絶妙にかわいい。「トキワダイレクト楽天市場店」での先行予約特典の透明ステッカーも良くできているので要チェック
音も、オリジナルの音をサンプリングしたデータをタイトーに提供してもらって使用しているので、雰囲気も当時のままです。この音とボタンを押したときの感触の連携が再現されていることで、ゲームの臨場感がよみがえるのでしょう。
ゲームのプログラムを一から作り直しながら裏ワザも再現
「筐体の再現度などは、かなり満足できる仕上がりになったと思います。ただ、やっぱりゲームのプログラムには苦労しています」と村田さん。元のプログラムをそのまま移植するツールを使うには、今回の商品に搭載しているCPUのパワーでは足りず、プログラムを一から書いているのだそうです。
「仕様を合わせながら作っては、タイトーさんに見ていただいたりしながら、今も製作中です。しかも、毎回、検証のために遊ばないといけないんです。裏ワザとかも、実際に出るのか確認するためには、それを出せるように練習するんです。これがなかなか難しくて」と村田さん。
確かに、問題なくゲームが動けばOKというだけでは済まないのは大変そうです。完全再現とはうたえないかもしれないと村田さんもおっしゃっていました。実際、まだ未成熟だったコンピューターゲームのプログラムを、そのまま再現するというのは、新しいゲームを作る以上に難しそうです。 それにしても、実際に手に取ってみると、本当に良くできています。当時、膝がぶつかって痛かった、テーブル下の大きな張り出し部分(ブラウン管が入っていたので、厚みがあったのです)や、脚の形状、テーブルの上のガラスの質感、ゲーム画面の色合いなどなど、あの頃の記憶そのままの仕上がりです。
当時は、このテーブルでゲームができるというスタイルが本当に斬新で、だから、この形状のテーブルがあるというだけで店がオシャレに見えたのです。それが、いつの間にか古くさい感じになり、昭和っぽいカッコ悪さになり、しかし、2023年の今、この小型のサイズだと、ちょっとかわいいインテリア的な趣があるのが、何とも不思議な感じです。
「私は、自宅のテレビ台に置きたいです。部屋に飾るのもかわいいと思いますよ」と、タカラトミーアーツ 広報の有賀さん。実際、本棚などに置いて、お釣りでもらった100円玉を入れるついでにちょっと遊ぶ、といった使い方が楽しめる、単なる懐かしグッズにとどまらない製品なのです。
※記事中の画像は、開発中のものなので、実際の商品とは多少異なる場合があります