ローミングエリアもデータ通信し放題に
では一体、Rakuten最強プランがRakuten UN-LIMIT VIIと比べ何が変わっているのかといいますと、実はほとんどの内容が共通しています。月額料金も月当たりの通信量によって決まる仕組みであり、3GBまでで月額1078円、20GBまでで月額2178円、それ以上使用しても月額3278円以上増えない点は変わっていません。 専用アプリの「Rakuten Link」を使えば国内の音声通話が無料でかけ放題になりますし、「楽天市場」のSPU(スーパーポイントアッププログラム)が最大3倍となる点も同じです。では一体何が大きく変わったのかといいますと、楽天モバイルのエリア外で通信した時の扱いです。
楽天モバイルは現状、自社でネットワーク整備できていないエリアをKDDIのネットワークとのローミングによる「パートナー回線エリア」で賄っているのですが、Rakuten UN-LIMIT VIIではパートナー回線エリアでデータ通信をした場合使い放題にならず、高速通信ができるのは月当たり最大5GBまで。それ以降は通信速度が最大1Mbpsと、大幅に落ちる仕様となっていました。
ですがRakuten最強プランではその仕組みが大きく変わり、パートナー回線エリアでのデータ通信も使い放題の対象となります。それゆえ楽天モバイルのネットワーク整備が進んでいないエリアで通信をした場合も、通信量を気にすることなくデータ通信が可能となるわけです。
新たなローミング協定で都市部もカバー
楽天モバイルはRakuten最強プランの発表に先駆けて、前日の5月11日にKDDIと新たなローミング協定を締結したことを発表しています。その内容によりますと、両社はローミングを2026年9月まで継続するとともに、ローミングの対象エリアも地方や屋内だけでなく、東京23区と名古屋市、大阪市など都市部の繁華街の一部にも広げることを明らかにしています。都市部の繁華街は入り組んでいる所が多く、基地局を密に設置しないと電波が届きにくいことから、そうしたエリアも対象に加えたものと考えられます。この動きからは楽天モバイルが少なくとも、協定が続く約3年間はKDDIのローミングをフル活用し、地方だけでなく都市部でのつながりやすさを高めようとしていることが分かります。
なぜ自社ではなく、他社のネットワークをフル活用するに至ったのかといえば、そこには楽天モバイルを取り巻く状況が大きく影響しています。楽天モバイルはつながりやすさに大きく寄与する、1GHz以下のいわゆる「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯の免許割り当てを受けておらず、自社のネットワークで他社と同水準のネットワークを構築するのには時間とお金がかかります。
しかも現在、楽天モバイルはネットワーク整備を前倒しした影響で大きな赤字を抱えており、予算にも余裕がありません。そこでRakuten最強プランの提供には、赤字解消のため自社でのネットワーク整備を一度スローダウンし、その間はKDDIの回線を用いて通信品質を向上させたい狙いがあるわけです。
KDDI回線と全く同じではない点に注意
理由はともあれ、ユーザーからしてみれば新プランの提供によってKDDI回線と同等のエリアでデータ通信が使い放題になるのは確かです。楽天モバイルの不満要素の1つとなっていたパートナー回線エリアでの制限と、それに伴うネットワークの狭さが解消されることから、大幅に利用しやすくなることは確かでしょう。とはいえ注意が必要な所もあります。そもそも楽天モバイルがローミングで使用しているのは、KDDIのプラチナバンドの1つでもある800MHz帯のみで、それ以外の周波数帯は用いられていないことから、KDDIと完全に同じエリアで通信ができる訳ではないのです。
このことがより大きな問題となりそうなのが、複数の周波数帯を束ねて通信の高速・安定化を図る「キャリアアグリゲーション」という技術が使えないこと。キャリアアグリゲーションをフル活用しているKDDI回線を直接利用したユーザーと比べ、800MHz帯しか使えない楽天モバイルユーザーは、混雑している時間帯やエリアによって通信速度が遅くなりやすくなる可能性が考えられます。
そうしたことから、とりわけ大容量通信を使いたくて楽天モバイルを契約した人などは、パートナー回線エリアでの通信速度に注意する必要があるでしょう。Rakuten最強プランで確かにデータ通信が使い放題になるエリアは広がりますが、“快適に使い放題”になるとは限らないことを覚えておくべきです。