1. ヨコハマネイビーブルーの車両、首都圏を席捲
デザインブランドアッププロジェクトにより、相鉄(相模鉄道)は車体色をYOKOHAMA NAVYBLUE(YNB=ヨコハマネイビーブルー)に統一した。既存車は2016年から順次リニューアル。新造車は、2018年からYNBを採用している。かつて相鉄線は神奈川県内で完結し、他社との乗り入れもなかったので、沿線以外での知名度は低かった。ところが近年、相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線と矢継ぎ早に他社との直通運転を開始したことから、YNBの車両が、東京都内はもとより、埼玉県内でも頻繁に見かけるようになった。
とくに、2023年3月の東急線との直通運転は、東横線および目黒線の2路線と直通するのみならず、東横線は東京メトロ副都心線を介して和光市駅(埼玉県)まで、目黒線は目黒駅で都営地下鉄三田線および東京メトロ南北線に直通する。 南北線は赤羽岩淵駅で埼玉高速鉄道とつながっていて、その先、浦和美園駅まで14.6キロ(7駅)は埼玉県内を堂々と走行することとなった。折り返し、相鉄方面への行き先は、海老名、湘南台、新横浜、西谷、大和が設定されていて、YNBの車体とともに埼玉や都内の利用者の注目を集めている。
2. 相模鉄道キャラクター「そうにゃん」
相鉄・東急直通線しゅん功開業式典に列席した「そうにゃん」(左端) 写真提供=相模鉄道
3. ふだんは乗車できない相鉄厚木線
相鉄には本線(横浜~海老名)、いずみ野線(二俣川~湘南台)それに相鉄新横浜線(西谷~新横浜)という3つの路線があるが、もう1つ厚木線を忘れてはならない。この路線は、本線のかしわ台~海老名の間にある相模国分信号所(かつては駅だった)から分岐してJR相模線の厚木駅に至る2.2キロの路線で、元々は本線の一部だった。 しかし小田急線との接続を考慮して、相模国分から海老名に至る路線が新設され、こちらが本線となるのと引き換えに、相模国分~厚木は旅客営業が廃止され、貨物線として現在に至っている。といっても貨物列車が定期的に走っているわけではない。JRの沿線にある車両工場(日立製作所笠戸事業所など)から新造車両が搬入されるときに使用されたり、厚木駅付近にある留置線(厚木操車場)に車両を回送するときに使われる。ごくまれにイベントで旅客輸送を行うこともある(2016年の乗車体験会など)。なお、厚木線とは名乗っているが、厚木市内を走らず、線路は全線海老名市内にある。
4. かしわ台車両基地内の保存車両
小田急、京急、東急は路線創業時から電化鉄道として電車が走っていた。しかし、相鉄は、現在の本線開業時は、神中鉄道の路線で蒸気機関車による運転だった。全線の電化が完了したのは1949年と第二次大戦後のことである。現在、創業時に使われていた蒸気機関車と客車は、かしわ台の車両基地内に保存されている(広報によれば、蒸気機関車の神中三号のみ、車両センター受付に申し出れば自由に見学できる。客車内も入れるとのこと。6000系などの電車は見学不可)。5. かしわ台駅東口はホームから改札口まで300メートル以上! なぜ?
車両基地が併設されているかしわ台駅は、西口がメインである。そして東口はホームの端から階段を上下して線路の脇に降り、そこから延々と通路を300メートル以上も歩いて改札口にたどり着く。実は、かつて大塚本町駅という駅があり、その東西にさがみ野駅とかしわ台駅が新設されるのと引き換えに大塚本町駅は廃止された。しかし、以前の大塚本町駅の駅舎をかしわ台駅の東口とし、長い通路によってかしわ台駅ホームとつないでいるのだ。 一見不便そうに見えるが、昼間でも利用者はかなりいる。線路の南側には切り立った崖があり、住宅地なのでもっと駅寄りには東口を設置する場所がなさそうなのと、東口付近から西口へ向かうには近道がなく、結局長い通路を歩いたほうが早いということのようだ。
それにしても300メートル以上も歩くのは長い。疲れたら、途中に小さな公園風の休憩所があるので、そこにあるベンチに座り、乗りそこなった電車を見送ることになるであろう。
6. 相鉄の秘境駅(?)だった「ゆめが丘駅」は大変身確定!!
ゆめが丘駅は、いずみ野線が1999年に湘南台駅まで延伸した時に、唯一の中間駅として開業した。高架駅で、弧を描いた鉄骨の屋根で覆われた特徴ある構造である。また、いずみ野寄りには、優美なアーチを描くニールセン・ローゼ橋が道路を跨いでいて特色ある情景を形成している。周囲は長らく目立った建物がなく、駅の利用者は相鉄線でも最下位を争うほど少なかった。しかし、2024年夏開業予定の大型商業施設の工事が進んでいる。駅の姿は大きく変わることとなろう。
7. 受験生に人気の「ゆめきぼ切符」
いずみ野線のゆめが丘駅と相鉄本線の希望ケ丘駅は、相互の駅を行きかうきっぷが、夢と希望を与える縁起の良い乗車券として人気を集めてきた。とくに受験生には合格祈願のお守りとして評判を呼び、毎年年末から翌年春の受験シーズンに「ゆめきぼ切符」として絵馬などの付属品とともに販売されている。キャンペーン期間中は2つの駅に絵馬掛けを設置し、それに結んだ絵馬は、キャンペーン終了後に祈願成就のため、寒川神社に奉納するとのことだ。
8. 大和駅付近の廃線跡
相鉄本線の大和駅付近は地下を走っている。そしてその真上は駅ビルから遊歩道が延びている。ふつうは両側のビルの出入口が道路に向いているものだが、ここでは、ほとんどの建物がそっぽを向けるように裏口ばかりだ。かつて線路が地上を走っていた時の名残なのだ。新しくできた文化創造拠点シリウスだけが、遊歩道に向けて出入口がある。また、線路跡を利用した遊歩道と交差する道路は踏切の名残をとどめているのも興味深い。
9. 相鉄の車内には、なぜ鏡があるのか?
相鉄の車内には細長い鏡が付いた電車がある。他社の車内ではまず見かけない。昭和30年代には「お買い物電車」と呼ばれ、沿線から横浜駅周辺に着飾って買い物や会合に出かけるために相鉄を利用する人が少なくなかったようだ。そうした人々に、ちょっと身だしなみを整えるためにというささやかな気遣いから設置されたとのこと。さすがお洒落な港町ヨコハマならではのサービスと思われる。週末などデートに向かう男女が電車を降りる前に利用しているようだ。
10. 羽沢横浜国大駅と新横浜駅
新たに開業した相鉄新横浜線の新駅。どちらも地下駅だが、羽沢横浜国大駅の新横浜寄りは少しだけ地上に顔を出し、新横浜方面およびJR線へと線路が分岐する様子がよく分かる。新横浜駅は2本のホームに3本の線路を持つ2面3線構造で、真ん中の線路は新横浜駅で折り返す電車が使用する。相鉄・東急直通線は多種多様な車両が乗り入れてくるが、相鉄に直通するのは、今のところ相鉄と東急の車両のみだ。東京メトロや都営三田線の車両は、新横浜駅で折り返していく。 また直通する電車の列車種別は新横浜駅を境に変わることが多い。例えば、東京メトロ副都心線・東急東横線からやってきた急行・湘南台行きは普通・湘南台行きに、都営三田線・東急目黒線から直通してきた急行・海老名行きは特急・海老名行きに変身するのだ。興味深いことだが、ややこしいと戸惑う人もいるであろう。
これまで沿線には知られた観光スポットがなく、住人以外にはあまり注目されなかった相鉄線だが、都心とつながり直通電車が運転されるようになったことから俄然脚光を浴びるようになったようだ。個性的で興味深い点が多々ある相鉄線について、トリビア的な事柄を簡単ではあるがまとめてみた次第である。
取材協力、画像提供=相模鉄道
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