「イチゴのヘタの近くは栄養豊富」は本当か……実際は間違った情報
イチゴは食べる直前にヘタをつけたまま水洗いするのがおすすめです
「イチゴはヘタの周りが一番栄養価が高いから、ヘタを切り落としてはいけない」という説が話題になっているようです。
イチゴに期待されている栄養素として、ビタミンCが挙げられると思います。確かに、ヘタの周りほど酸っぱさが強いと感じることが多いため、ビタミンCが多いと思っている人も多いのかもしれません。
しかし、それは完全な勘違い。
1973年の古い論文ではありますが、イチゴの栄養素の分析では「総C、 還元型Cは果頂部に近いほど多く含まれ基部に最も少なかった。また組織別では皮部にとくに著しく、ついで果肉部に多く含まれ芯部は最も少なかった」と報告されています。果頂部とは、葉がついている部分から最も遠い部分ですので、実際には逆なのです。
イチゴのヘタの周辺がおいしいと感じる人は食べればよいですし、硬さや酸味が気になるのであれば食べずに切り落としても栄養的な損もない、といったところでしょう。
イチゴは洗うべきか、洗わない方がおいしいのか
イチゴは食べる直前にヘタをつけたまま水洗いしてから食べるとビタミンCが壊れにくいためおすすめです。
また、ヘタを取るかどうかだけでなく、イチゴはしっかり洗うべきか、洗わずそのまま食べるべきかという議論もあるようです。
「イチゴを洗わない」派は、イチゴ狩りでは洗わずにそのまま食べるから問題ないと考え、「イチゴを洗う」派は、残留農薬が心配だからしっかり洗ったほうがよいという意見をよく見かけます。
結論から言うと、スーパーなどで購入したイチゴは「軽く水洗いする」のがよいと思います。理由は、畑の土がついたまま流通に乗っている可能性があるから。残留農薬については、心配する必要はありません。出荷されているのは、農薬の残留基準値以下であることが確認されたもののみです。人体に悪影響がない、食べても大丈夫な量以下であると確認されたもの以外は、出荷することができません。
イチゴは洗ってしまうといたみやすくなるため、農家からは洗わずに出荷されます。ヘタを取ってから洗うと、水分がイチゴの中に入って味が落ちてしまうため、なるべく食べる直前に、ヘタを取らずに、桶などにためた水などで軽く洗うのがよいでしょう。
イチゴを洗う時には、食塩や重曹を入れると聞いたことがある人もいると思います。食塩水で洗うと、塩味がうっすらつくので甘味が引き立ちます。また、重曹は色止めの効果がありますので、ジャムにする際や、お客様に提供するなど色を引き立てたい時は重曹で洗うなど、TPOで洗い方を変えるとよいのではないでしょうか。
栄養学的におすすめなイチゴの食べ方
イチゴに期待される栄養として、真っ先に上がるのは「ビタミンC」でしょう。ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、加熱に弱いことが知られています。そのため、栄養面を考えるのであれば、ビタミンCが壊れてしまわないように食べるのがおすすめです。具体的には、生のまま食べたり、いちごミルクにして飲んだりするのがよいと思います。
ただし、イチゴは生のままでは長期保存が難しいです。この季節にまとめて買っても、食べきれないこともあるかもしれません。その場合は、イチゴジャムなどにすれば、違った楽しみ方ができますし、生よりも保存しやすくなります。ビタミンCは壊れてしまいますが、食物繊維などを摂取することもできます。
そのまま食べるだけでなく、たまにはアレンジも試しながら、旬の味覚を楽しんでみてはいかがでしょうか。
■参考
- 北川 雪恵、果菜類の生育とビタミンCの分布 (II) トマト, ピーマン, イチゴ(PDF)(J-STAGE)
- いちごの洗い方(GrandBerry)