食生活・栄養知識

ビタミンKの役割と働き…血液凝固と骨形成に欠かせない栄養素

【薬学博士・大学教授が解説】ビタミンKは、血液凝固と骨形成に欠かせない栄養素です。食べ物からだけでなく腸内細菌によっても産生されますが、ビタミンK不足が心配される場合は緑黄色野菜や海藻類、納豆などをバランスよく食べることが大切です。ビタミンKの役割とその働きについて、わかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

ビタミンKの役割は? なぜ血液凝固と骨形成に欠かせないのか

骨とビタミンKの関係

骨とビタミンKの関係


ビタミンKは脂溶性ビタミンの一種で、出血したときに血液を固めて止血するしくみ、つまり「血液凝固」に必須の役割を担うことが知られています(詳しくは「ビタミンKとは…多く含む食品・止血に欠かせない大切な役割」をお読みください)。ビタミンKは腸内細菌によっても産生されるので、腸内細菌叢が発達した大人では、欠乏状態に陥ることはほとんどありません。しかし、感染症治療のために抗生物質をのんだときなどは腸内細菌が減ってしまい、ビタミンK不足になりがちなので、ビタミンKを豊富に含む緑黄色野菜や海藻類、納豆などを日頃からバランスよく食べることも大切です。

また、ビタミンKは、血液凝固だけではなく、骨の形成にも大切な役割を果しています。丈夫な骨づくりのためにも、しっかりとビタミンKを摂取する必要があります。

血液凝固と骨形成は、まったく違う体のしくみであり、どうしてビタミンKが両方に必要なのかと不思議に思う方も多いことでしょう。しかし、実は血液凝固と骨形成には共通した部分があり、まさにそこにビタミンKが働いているのです。今回は、ビタミンKが私たちの体の中で何をしているのか、その核心に迫るメカニズムをわかりやすく解説しましょう。
 

ビタミンKの標的分子は何か

腸内細菌が産生するビタミンKや食事由来のビタミンKが体内に吸収されると、肝臓における血液凝固因子の活性化を通じて、出血してもしっかりと止まるように「血液凝固」のしくみを働かせます。

血液凝固因子は10種類以上知られていますが、そのうちの4つ、第II因子、第VII因子、第IX因子および第 X 因子だけが、ビタミンKを必要とします。そう聞くと、もしビタミンKが不足したとして血液凝固因子のうちの4つだけが働かなくなっても、たくさんある他の因子がカバーしてくれれば血液凝固は起こるように思うかもしれませんね。しかし、血液凝固は、すべての凝固因子が連鎖的に反応して成立するものなので、途中に含まれる4つの因子が働かなくなるとその流れが止まってしまうので、出血が止まらないという事態に陥ってしまうのです。

4つのビタミンK依存性凝固因子は、すべてタンパク質です。たくさんのアミノ酸がつながってできていますが、その中に含まれる特定のグルタミン酸残基に二酸化炭素がくっついて「γ-カルボキシグルタミン酸」になることで、カルシウムイオン(Ca2+)と結合できるようになり、機能を発揮します。このように、タンパク質中のグルタミン酸がγ-カルボキシグルタミン酸に変換されることを「グルタミルカルボキシル化(glutamylcarboxylation)」、略して「Gla 化」と言います。そして、このGla化を担う酵素が、γ-グルタミルカルボキシラーゼであり、ビタミンKはこの酵素を助ける役割を担っているのです。

つまり、血液凝固反応にどのようにビタミンKが関わっているかを詳しく研究した結果、ビタミンKの本質的な役割は「γ-グルタミルカルボキシラーゼに結合してこの酵素を助ける」であることが明らかになったのです。
 

血液凝固以外にビタミンKが関わる機能

ビタミンKが作用する標的分子がγ-グルタミルカルボキシラーゼであることが分かれば、血液凝固以外にビタミンKが関わっている他の生理機能を解明するには、γ-グルタミルカルボキシラーゼによるGla化を受けて活性化されるタンパク質を探せばよいということになります。

近年実際にそうした研究が行われ、ビタミンK依存性にGla化されるタンパク質として、骨にある「オステオカルシン」、軟骨にある「マトリックスGlaタンパク質(MGP)」、骨膜・歯根膜にある 「ペリオスチン」などが発見されました。骨とビタミンKの関係については、1960年にベルギーの BouckaertらがビタミンK摂取によって骨折の治りが早くなることを報告した (Nature 185: 849, 1960)ものの、その詳しいメカニズムは分かっていませんでしたが、ビタミンKが作用する具体的な分子が見つかったことで、ビタミンKによる骨形成のしくみの解明が進みました。

今後さらなる研究によって、まったく違う組織にある「ビタミンK依存性にGla化されるタンパク質(Glaタンパク質)」が見つかれば、ビタミンKの未知の機能を解き明かすことができるかもしれません。事実、機能不明のGlaタンパク質として「proline-rich γ-carboxy glutamyl proteins (PRGPs) 1 と 2」や「transmembrane γ-carboxy glutamyl proteins (TMGs) 3 と 4」などが報告されている(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 104 (21): 8767–72, 2007)ので、ビタミンKが血液凝固や骨形成以外にも関与している可能性はありそうです。

骨形成におけるビタミンKの役割

骨は、硬くて見かけが変わらないので、一度形成されたらそのまま維持されているものと思っている方が多いかもしれませんが、実は骨組織は、2種類の細胞が関わる「骨代謝回転」という仕組みによって、常に更新されています。破骨細胞は、古くなった骨を溶解して血液中にカルシウムを放出します(この過程を「骨吸収」と言います)。一方で、骨芽細胞は、溶解面に新たな骨塩を沈着させます(この過程を「骨形成」と言います)。この「骨吸収」と「骨形成」が常に起きていて、そのバランスが取れていれば、骨は常に新しく更新されながらも全体の骨量は変わらないように保たれているのです。

また、骨の大部分はカルシウムやリンから成る骨塩ですが、それを支えているのが、基質タンパク質であるコラーゲンやオステオカルシンです(コラーゲンについては、「コラーゲンに美肌効果はない?私がサプリをおすすめしない理由」で詳しく解説していますのでお読みください)。そして、ビタミンKは、このオステオカルシンの活性化に関わっています。

オステオカルシンは、分子中に2~3個のγ-カルボキシグルタミン酸を含み、総アミノ酸数が49~50個のタンパク質で、産生するのは骨芽細胞です。骨芽細胞で作られたオステオカルシンは、細胞内でビタミンK依存性のγ-グルタミルカルボキシラーゼによってGla化されてから分泌され、カルシウムを結合して骨に蓄えられます。つまり、ビタミンKは、オステオカルシンをGla化することによって、骨形成を促進しているのです。

したがって、ビタミンKが不足してしまうと、骨形成が低下して骨量が減るため、骨折しやすくなります。そうならないためには、日頃からしっかりとビタミンKを摂取することが大事ですね。ちなみに、ビタミンKは脂溶性で熱に強いため、油を使った野菜炒めなどもお勧めです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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