世間で「1円スマホ」などと呼ばれるこの新しい値引き手法、具体的な手法については以前の記事(「なぜiPhoneが「1円」で買える? スマホの値引き規制がなされたのに、格安になるカラクリ」)で取り上げているのでそちらを参照頂きたいのですが、スマートフォン自体の値段を大幅に下げて誰でも安く買えるようにし、それに加えて電気通信事業法で定められた範囲内の値引きをプラスすることなどで、スマートフォンを一括1円、あるいは分割払いで実質数十円程度の非常に安い値段で販売するというのが1円スマホの大まかなカラクリです。
“転売ヤー”による「1円スマホ」買い占め問題
1円スマホの登場によって再びスマートフォンが安く買えるようになったことから、法規制で閑古鳥が鳴いた携帯電話の販売の現場は再び活況を取り戻したようです。一方で1円スマホの手法は、改正法で禁止された通信回線とのセット契約を前提としていた以前のスマートフォン大幅値引きとは違って、通信契約をしなくても端末だけ安い値段で購入できることから、海外でも人気のiPhoneなどを安く買えることに目を付けた組織的な転売ヤーが、1円スマホを狙って買い占めてしまうという問題も起きています。
総務省「競争ルールの検証に関するWG」第27回会合資料より。画像はKDDIの事例だが他の携帯3社も1円スマホの販売を実施しており、停滞していた市場の活性化を促した一方、深刻な転売問題などの弊害も生み出している
ですが先の法改正で、携帯電話会社は顧客を長期間“縛る”契約が困難となってしまったことから乗り換え競争が激化しているのも事実。それゆえ携帯電話会社が1円スマホをやめたくても、値引きをしている他社に顧客を奪われてしまうので止めるに止められない、というのが現状のようです。
しかも1円スマホの手法は現在の電気通信事業法に触れない形で実施されているので、スマートフォンの大幅値引きを根絶したい総務省も手を出すに出せない状況にありました。そこで大きく動いたのが公正取引委員会です。
「不当廉売」に当たる恐れ
公正取引委員会は、1円スマホの手法が、商品の価格を度外視して著しく安く販売することにより、競合の事業を困難にする「不当廉売」に当たる恐れがあると判断。2022年8月9日に携帯電話端末の廉価販売に関する緊急実態調査を実施することを発表しており、執筆時点では調査が進められている最中のようです。1円スマホの販売手法に関しては、携帯電話会社の側からも不平等が起きることなく一斉に止められるよう、規制を望む声が出てきていました。そうしたことから総務省の有識者会議「競争ルールの検証に関するWG」で、1円スマホの規制に関する議論が2022年11月の第37回会合から進められています。
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