男のこだわりグッズ

「社員はいません」中川政七商店が仕入れから店舗運営までの全てを“学生18人”だけに任せた理由(2ページ目)

TOKYO TORCH敷地内のビルにオープンした「アナザー・ジャパン」は、18人の学生が仕入れから店舗運営、プロモーション、接客販売まで全てを行う「出身地域の商品を自らセレクトし、自ら販売する」ショップです。そのプロジェクトの全貌を、発起人である中川政七商店さんと、アナザー・ジャパンで九州チームを担当している大学生の山口晴さんに伺いました。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

男のこだわりグッズガイド

【九州チームの一人、山口晴さんに聞いた】アナザー・ジャパンに参加しようと思ったきっかけは?

anotherjapan05

今回、インタビューに応えてくださった、早稲田大学文学部の山口晴(ヤマグチセイ)さん。長崎出身で九州チームの一人。

――山口さんはなぜこのプロジェクトに参加しようと思われたのでしょう。

山口晴(以下、山口)さん:大学に入って上京してからも、ゆくゆくは長崎に帰りたいという気持ちはずっとあったんです。でも、東京にいるとなかなか長崎と関わる機会もないし、長崎に戻りたいと言いつつ、今、長崎で何が起こってるかを知らないということをすごく感じていました。なので、このアナザー・ジャパンの、「実際に地域に行って地域の方とコミュニケーションを取りながら活動できるところ」にとても惹かれたんです。

買い付けの交渉みたいなところは、経験もないので、あまり自信はなかったんですけど、自分が素敵だと思った商品や、その作り手さんのストーリーをお客様にお届けできることは、すごく素敵な仕事だな、という風に思いました。

その辺の動機は、みんなさまざまで、自分で経営してみるというところに惹かれた子、「フロンティアスピリットと郷土愛」という言葉に「自分だ!」と思ったという子、地方創生に関わりたいという子、美大に行っていて自分が学んできたデザインの力を発揮できるんじゃないかと考えた子、ブランディングに興味がある子、みんな違うし、得意なところとか興味関心の強さはそれぞれにあったりするんですけど、「フロンティアスピリットと郷土愛」というのが核にあるからか、チーム18人としてはすごく一体感もありますし、団結してるなと思います。

・「コロナ禍でずっとオンライン授業……このまま卒業するのは悔しい」
anotherjapan06

フロンティアスピリットと郷土愛を認められて選ばれた、第一期生の学生スタッフ(セトラー)18名。

――全てを18人で行うのは大変そうです。

山口:ギリギリではあるんですけど、ちゃんとお互いにコミュニケーションが取れていて、こう動くとか、誰が何をやっている、という役割分担がしっかりしているので、見通しがいいです。その意味では多すぎず、少なすぎずなのかなと思っています。

もちろん、本部の皆さんにお力添えいただいている部分はあるのですが、動きやすい規模なのかなと感じています。それに、18人全員で動くというより、3人ずつ、私は九州チームですが、そういうエリアのチームに分かれていたり、「プロダクト」「オペレーション」「コミュニケーション」というファンクションに分かれて6人ずつで動いたりするので、そういう小規模の部隊が作りやすいという意味でも動きやすいのかなと思います。

――山口さんは、今、何年生ですか? 

山口:早稲田大学文学部の3年生を休学中です。休学してると言うと、結構驚かれたりするし、別に、このプロジェクト自体は休学してくださいとか無いんですけど、私の場合は入学した時から、新型コロナウイルスの影響でオンライン授業だったんです。初めて緊急事態宣言が出た頃がちょうど入学ぐらいで、だから1カ月入学が遅れて5月の中旬ぐらいに授業が始まったんですけど、キャンパスに行くこともないので友達もできないし、これで卒業まで行くのって悔しいなと思って、学生のうちに経験できることとか挑戦できることに集中する時間を取ってもいいんじゃないかなって考えたんです。それで、休学することはこのプロジェクト以前から考えてたんです。

それに就活のこともあって、東京で残って働くとか、地元に帰るとか、いろいろな選択肢が自分にはあるぞと思った時に、このプロジェクトなら地方に行く仕事ができるし、進路を選ぶためには、知ったり、見たりしないといけないじゃないですか。その準備ができるといいなと思って、まぁ、1年休学してみようと決めました。メンバーの中にも、似たような感じで休学してる子が結構いますよ。
 

「宴」というコンセプトに合う商品を自分たちで直接仕入れる

anotherjapan07

九州チームの仕入れの様子

――商品の仕入れに関しては、何か基準を設けて行ったんですか?

山口:直接仕入れに行くというのが、このプロジェクトの面白いところなので、そこで事業者さんに聞いたストーリーとか、作り手さんの思いみたいなものをしっかりお伝えできる商品かどうか、その作られた裏側のストーリーみたいなものが語れる商品であるかというところがまずありました。それから、今回、私たちは「宴」というコンセプトを決めていたので、それに合うかどうかを考えました。

・3人とも出身地は違うけど、“親戚で集い楽しむ文化”は共通していたanotherjapan08

「宴」をテーマに仕入れられた九州の品々。花火から食品、器まで幅広く扱う。

――「宴」に決めたのはなぜですか?

山口:九州の人って、宴会が好きな気がするんです。私たちのチームは、長崎、福岡、沖縄県の出身3人なんですが、それぞれが九州で過ごした18~20年間の思い出の中には、親戚が集まって歌ったりする風景があったんです。私だと、精霊流しで、みんなで舟を作ったり、お墓で花火をやったりとか、ちょっと悲しいはずの時間も、何となく明るく賑やかな思い出になっています。沖縄にも、シーミーとかありますよね。そういう文化がすごくいいよね、と3人で話したんです。

それと、これは鹿児島に仕入れに行った時なんですけど、駅を降りたら雨が降っていたんです。「車もないし移動、大変だね」とか話してたら、音楽が聞こえてきて、見に行ったら雨の中でよさこい祭りをやってたんです。大ハンヤ祭でした。雨が降っているのにもかかわらず、傘もささずに踊り子さんたちが踊ってたんですよ。そういう風景を見て、雨も吹き飛ばす明るさというか、九州の活気みたいなのものを、仕入れの最中にも感じたんです。自分たちの思い出だけではなくて、3人とも鹿児島には縁があまりなかったんですけど、同じような空気感というか、そういうのを感じました。

――売れ行きとか人気みたいな、マーケティング的な視点での仕入れだと、似たような感じの商品が並びがちですが、そのあたりはどのように考えましたか?

山口:これは売れるか分からないけど、すごい好きだとか、自分がめっちゃ感動したから売りたいみたいなものは、ぜひ仕入れてこいって、中川政七商店さんに言われていました。「それが売れるか売れないか、売れなかったとしたら、どうやったら売れるんだろうっていうのを考えていく……そこが面白いところ、店舗経営の楽しいところだから、自分の直感でいいと思ったら仕入れておいで」って。そういう、私たちの本当の気持ちを、実際に店頭でお客様にお伝えして販売していくというのが、ここの店舗の面白いところでもあるんです。

>次ページ:「アナザー・キュウシュウ」の見どころをご紹介​​​​​​​
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます