学生に全てを任せる「アナザー・ジャパン」の狙いとその裏側とは……
アナザー・ジャパン。東京都千代田区大手町2-6-3 TOKYO TORCH 銭瓶町ビルディング1階ぜにがめプレイス。営業時間は、ショップ 11:00~20:00/カフェ 平日 8:30~21:30、土日祝 10:00~19:00。オンラインショップは※1(https://another-japan.shop)。
・九州各地から学生スタッフが仕入れてきた自慢の商品が並ぶ 「アナザー・キュウシュウ」のテーマは「宴」。
1:「宴の乾杯」各地のお酒や酒器、おつまみや調味料まで
2:「宴の宴席」大分、福岡、佐賀、沖縄4産地の特色あるうつわなど
3:「宴の彩り」お香や風鈴など、宴の時間・空間を五感で楽しむ品々
4:「宴の装い」宴に出かけるときの華やかなアクセサリーや洋服
5:「宴のお祭り」うちわや花火、郷土玩具など夏の宴を盛り上げる品々
6:「宴の贈り物」有田焼のカップ酒や点字レターセットを贈り物に
7:「宴の余韻」お茶やお菓子で宴を締める場面をイメージした品々
という具合に、何かと宴会を始めてしまう九州人(筆者も九州出身者なのです)らしい商品が、九州出身の学生さん3人のセレクトによって、テーマごとに陳列されています。通販では買いにくい製品、地元で人気の製品、学生さんが惚れ込んで仕入れた製品が揃う店頭はとても新鮮です。
今回は、このプロジェクトを始めた中川政七商店さんと、実際に動いている学生さんの中から、九州チームのメンバーである山口晴さんにお話を伺いました。
【中川政七商店に聞いた】学生だけで運営する「新スタイル店舗」の狙いとは?
――アナザー・ジャパンのプロジェクトの始まりの経緯を教えてください。中川政七商店(以下政七商店):中川政七商店は「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、工芸をベースにした生活雑貨の製造販売や産地支援を行っています。アナザー・ジャパンもこのビジョンのもとで、構想が生まれました。
昨年春、三菱地所様から中川政七商店宛に、2027年度開業予定のTorch Towerでのテナント企画のご相談をいただきました。「Torch Towerを東京と地方を繋ぐ場所にしていきたい」という三菱地所様の想いと、「日本の未来を担う学生に地域産品ショップの経営を担う機会を提供したい」という中川政七商店の構想が重なり、本プロジェクトへと発展してきました。
――学生さんの募集条件が「フロンティアスピリットと郷土愛」だったそうですが、このように決めた理由を教えてください。
政七商店:アナザー・ジャパンの2大特徴は「学生が自分たちだけで店舗を経営する」「出身地域の商品を自らセレクトし、自ら販売する」ことです。前者に必要なのが自ら道を切り開くという“フロンティアスピリット”であり、後者に必要なのが故郷を深く知り熱く紹介するという“郷土愛”です。プロジェクトのモチーフに「自分の故郷を異国につくる」という開拓者の活動があるため、それを想起できるようなワーディングにこだわりました。
・学生に全てを任せるのは不安もあるけど、それ以上に信頼・期待している ――どこまでを学生に任せ、どの部分はフォローするといった線引きは、どのように決められたのでしょう。
政七商店:原則は「全て任せる」です。社内システムとの接続などの業務を除けば、戦略立案から現場の実行までほぼ全てを学生に任せています。というのも本プロジェクトの肝は「学生がリアルな結果に向き合って成長すること」だからです。一般的なインターンシップで結果を問われることは稀ですが、アナザー・ジャパンでは「売上は自分たちの打ち手の結果である」ということをリアルに感じてもらうために、全ての仕事を学生に任せるよう心がけています。
――店舗もオープンした現時点で、期待していること、不安要素があれば教えてください。
政七商店:商業的に決して有利とはいえない立地であっても、お客様に足を運んでいただける価値のあるお店に成長できるかが重要となります。そのためには、集客戦略から現場オペレーションまで、学生がどれだけ自分たちでPDCAを回して改善していけるかが肝となります。至らない点は多々あり不安になることはありますが、彼・彼女らの成長を信じ、何度でも足を運びたくなるような魅力的なお店に育っていくことを期待しています。
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