生理痛を我慢していたけれど
「恋人にわかってもらうのはむずかしいですね」毎回、かなりひどい生理痛に悩んでいるマユミさん(33歳)はそう言って顔をしかめた。自身は10代のころからつきあっているから、ひどいときは鎮痛剤を服用し、数日我慢すればまた元気になるとわかっている。だが、恋人には今までほとんど苦痛を訴えてきたことはない。
「私の問題ですからね、言っても理解は得られない。今の彼とは3年ほどつきあっていて結婚の話も出るようになりました。この人なら実感としてわからなくても理解はしてくれるかなと思ったので言ってみたんです。そうしたら『えーっと、それで僕はどうしたらいいの? きみがつらいときは放っておけばいいの、それとも慰めればいいの?』と言われて……。なんだか笑ってしまいました。そうだよね、言われたところでどう対処すればいいかわからないよね、と。私だって別に慰めてほしいわけではないし」
それまで、生理痛がつらい数日間は彼からのデートの誘いも「忙しい」と断っていたが、結婚も視野に入ってきたことで、言っておこうと思ったのだそう。だが言ってみてから、「私は何を望んでいたのか」と考えてしまった。
「結局、彼にわかってというのは無理。だけど、結婚後、つらいときは家事をやってくれるとか、そういう気持ちがあるかどうかを聞きたかったんだと思う。正直に彼にそう言ってみたら、『生理痛がと言われてもわからないけど、具合が悪いときは助け合うのが当然。言ってくれればいいだけだよ』って。ああ、こういう理解の仕方、補い合い方もあるなと腑に落ちました。何でも『わかってよ』と押しつければいいものではないな、と。そして彼にはアバウトに受け止めてもらえば私は満足なんだな、とも思いました。生理について詳しく知ってほしいわけじゃない、私がどうであるかを把握してほしいんだと」
確かに、いろいろな「理解の仕方」があるのかもしれない。彼が詳細に勉強したところで生理痛を実感することはできない。それなら、「つらい」ことさえわかってもらえればそれでいいという考え方もあるだろう。そのほうがふたりがうまくいくなら、それでいいと納得しあえばいいのだ。
責められても困る
一方、女性にそういうことを告白される男性側も戸惑いを隠せない。「結婚したばかりの妻から、あなたに生理痛のつらさはわからないって、キレられたことがあるんですが、わかれというのもむずかしいですよね」
苦笑するのはタカトシさん(32歳)だ。
同じ「つらい」でも、人によってつらさは違う。まして男性が体験できないことを「完全に理解する」のは不可能だ。
「想像力で補って、痛いんだろうな、つらいんだろうなと思うから、何もしないでいいよと言っているのに、妻は一生懸命、料理などをしてくれるわけです。それでいて、『つらいアピール』をする。だからしなくていいって言ってるじゃんと言ったら、あなたにはわかろうとする気持ちが欠けていると文句を言われて……。どうすればいいんだっていう話ですよね」
そこでタカトシさんは女性の体について熱心に勉強したという。自分の知らない生理のこと、女性の体がどれほど生理に支配されているのかも理解した。頭でわかったところで、どうにかなるものでもないが、妻のつらさを分かち合おうと寄り添ったのだ。
「妻の場合、生理の前に精神的に落ち込むというのも聞いていたので、その時期は無理をしないこと、嫌なことがあったら正直に言うことを徹底してもらいました。彼女もいろいろ考えて、相性のいい婦人科の先生を見つけ出したようで、今は生理前も落ち着いていますね。結婚して一年、そろそろ子どもをと考えています」
何もできなくても寄り添う姿勢を見せてくれることが大事だと考える女性もいれば、放っておいてもらうのがいちばんいいと感じる女性もいるだろう。それは女性の性格と、恋人や夫との相性の問題もあるのかもしれない。
いずれにしても、大事なパートナーの体調の問題。生理に限らず、お互いの体調についてもオープンに話し合えるようになったほうがいいのではないだろうか。