品種によって旬が違う里芋…煮物も蒸し物も美味!
里芋の下ごしらえは手がかゆくなったり、ぬめりですべったりと作業がしづらいのが欠点。スムーズに作業するにはどうすればいいのでしょうか。
原産はインドやインドネシアと言われており、現地では「タロイモ」と呼ばれています。江戸時代までは、芋と言えば里芋を指していたとも言われていますので、じゃがいもやさつまいもよりも以前から日本人の食卓に登場していたことがうかがえます。
里芋は品種によって収穫時期がずれています。夏が旬のもの、冬が旬のもの、いろいろあります。また、保存性も高いので、里芋は1年を通しておいしくいただけます。
里芋の栄養素・カロリー…ねっとり感の正体は粒子の細かなでんぷん
里芋のカロリーは53kcal。たんぱく質は1.5g、脂質は0.1g、炭水化物は13.1gです。水分(84.1g)を除くと、ほぼ炭水化物の塊と考えても良さそうです。炭水化物はそのほとんどが「でんぷん」として含まれています。里芋のでんぷんの粒子は他のいものでんぷんよりも細かいため、加熱すると糊化しやすいため、人気のねっとりした味わいが出るのです。食物繊維は2.3gで、その他の栄養素ではカリウムが640mgと多く含まれています。血圧が高く、医師から「野菜を多く食べるように」と薦められた人にはもってこいな食材と言えます。逆に腎臓病などカリウムを控えるように言われた方は、里芋は控えめにする方がよさそうです。(すべて数値は可食部100gあたり)
里芋の保存方法…室温保存で土は落とさず保存が正解
里芋は炭水化物の多い食品ですので、室温で保存します。土がついたまま売られていることが多いですが、そのまま保存しましょう。ビニール袋に入って販売されていることが多いですが、カビが生えやすくなるので、紙袋に入れかえて保存します。土は調理の直前に洗い落としてください。
里芋の下処理・下ごしらえ・かゆくならない皮むきのコツ
里芋調理で最も大変なのは「皮むき」でしょう。ぬめりがあってむきづらい上、長時間、里芋を触っているとかゆみを感じることもあります。ぬめりの正体は「糖タンパク質」と呼ばれる物質のなかまで、うなぎやどじょうのヌルヌルも同じ「糖タンパク質」です。次の3つの特性を知っておけば、ぬめりによるむきづらさを減らすことができます。
- 濡れた状態よりも乾いた状態のほうがぬめりが少ない
- ぬるま湯で洗うとぬめりが減る
- 加熱してからむくと皮と実の間にぬめりが生じてつるりとむける
里芋を触っていて感じるかゆみは「シュウ酸」と呼ばれる成分です。シュウ酸の結晶はトゲのような構造をしていることから、このトゲが皮膚に刺さるためかゆみを感じると言われています。シュウ酸は「エグ味」と呼ばれ、好まれる味ではありません。また、尿路結石の原因物質ともいわれています。
かゆみ予防には、
- ゴム手袋を使ってむく(滑りやすいので注意!)
- 乾いた状態でむく
- 酢水で手を濡らしながら皮をむく
などの方法があります。
また、かゆみを感じた場合は、酢水か塩水に手を漬けるとかゆみが軽くなることがあるようです。試してみてください。
里芋のぬめりを取らないメリット・デメリット…調理法や地域による違いも
シュウ酸によるえぐ味は好まれる味ではないので、できるだけ取り除きたいところですが、「ぬめり」はおいしさにつながることもあります。新潟県内で里芋の調理方法を調査したところ、「ぬめりを残す」調理をすることが多い地域と「ぬめりをとる」調理をすることが多い地域に分かれたという結果があります。
ぬめりの有無は料理のテクスチャーに大きな影響を与えるため、地域による好みがあるのかもしれません。
ぬめりを残したまま加熱調理をすれば、煮汁が濁ったり煮汁がしみこみにくいというデメリットがあるものの、ぬめり成分である「糖タンパク質」は体に悪影響はありません。ぬめりをとるのが面倒であれば、加熱時間を増やせばよいだけなので、ぬめりを取らずに加熱調理しても大丈夫です。
ぬめりを取る方法としては、大きく2つ知られています。
- 皮をむいて、塩もみをした後、水洗いする
- 水(米のとぎ汁)で2~3分、下ゆでする。中まで柔らかくなるので、水からゆでる
ゆでてぬめりを取る場合、皮むきはゆでる前でもゆでてからでも大丈夫です。ゆでてから皮むきする方が、ぬめりが取れた状態になるので簡単にむくことができます。料理に慣れていないうちは、この方法がケガをしづらいように思います。
里芋はぬめりとかゆみで下ごしらえが敬遠されやすい食材ですが、日本人が昔から食べてきた大切な食材でもあります。ぜひ、上手に下ごしらえしておいしくいただきたいものですね。
■参考
- 日本食品成分表 2020版(8訂)
- 里芋(さといも)の栄養価と効能(旬の野菜百科)
- 佐藤恵美子,特別研究 「調理文化の地域性と調理科学: 行事食・儀礼食」―関東支部: 新潟県の地域性と食材を中心に―日本調理科学会誌, 2012,164-167