食生活・栄養知識

ひやむぎとそうめんの違いは? 味ではなく太さに差

【管理栄養士が解説】ひやむぎとそうめんの違いは味でしょうか? 太さでしょうか? どちらも小麦粉を原料とした麺であるひやむぎ・そうめんの定義、製法の違い、また、七夕の行事食としてのそうめんはひやむぎで代替できるのか、おいしい調理法も含めて解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

ひやむぎとそうめんの違い……太い方がひやむぎ・細い方がそうめん

ひやむぎとそうめんの違い

ひやむぎとそうめんの違いは何でしょうか? 違いは麺の太さです

ひやむぎやそうめんなどの乾麺は、乾めん類JAS規格(任意法)・乾めん類品質表示基準(強制法)にて、

小麦粉、そば粉又は、小麦粉若しくはそば粉に大麦粉、米粉、粉茶、卵等を加えたものに食塩、水等(かんすいを除く)を加えて練り合わせた後、製めんし、乾燥したもの。

と定義されています。
 
また、上述のJAS規格では、ひやむぎとそうめんはいずれも「小麦粉を原料として」作られると定義されています。

ひやむぎとそうめんを分けるのは、太さの違いです。
ひやむぎ……長径1.3mm以上・1.7mm未満
そうめん……長径1.3mm未満
と規定されています。つまり、細い方がそうめんです。そうめんもひやむぎも断面は真円ではなく楕円形をしています。ですのでこの場合の長径とは、断面の楕円形の一番長い部分を指します。

ちなみに、同じように乾麺でうどんは長径1.7mm以上、きしめんは幅4.5mm以上+厚さ2.0mm未満と規定されています。きしめんだけは、平べったい麺ですので、太さの基準が他の麺と違うのですね。
 

ひやむぎとそうめん、元は製法に違いも

ひやむぎ

ひやむぎとそうめんを区別するために、ひやむぎに色付きの麺を入れて分かりやすくしたという説があります。

現在では、製麺機の発達により機械で作ることが多くなった麺ですが、麺類が誕生した直後は、手で麺を打っていました。そしてひやむぎとそうめんは、もともとは製法が異なります。

製麺機を使わない場合、ひやむぎは「手打ち麺」と呼ばれる製法で作られます。生地を麺棒などで薄く延ばし、包丁で麺の形に切って作る製法で、うどんと同じです。ひやむぎは「細いうどん」と考えても差し支えありません。

一方、そうめんは、ひやむぎ同様、手打ちで作る製法もありましたが、小麦粉に食塩と水を混ぜてよく練り、食用植物油を塗って、ヨリ(縒)をかけながら引き伸ばしと熟成を何度も繰り返し、乾燥させて作られます。「ヨリ(縒)をかけて伸ばす」という言葉は、近年、あまり聞かれない言葉ですが、麺の生地にねじりを加えながら編み込むように伸ばしていく作業です。

この「ヨリ(縒)をかけながら引き延ばす」作業を手で行うため「手延べそうめん」なのですね。当然、機械で作ったそうめんは「手」で延べていませんので、その場合は「そうめん」と呼ばれることになります。
 

ひやむぎとそうめんの味の違いはほぼなし……繊細な人は感じられる程度

ひやむぎとそうめんには若干の太さの違いがあるので、味の違いも繊細な人ならばわかるかもしれません。また、同じ太さである(手打ち)そうめんと手延べそうめんで比較すると、手延べのほうが「グルテン」を引き延ばす分、弾力があって歯ごたえがある麺になりやすいはずです。また、手延べは「油」をつけながら伸ばしていくので、油の味も感じるかもしれません。いずれもごくわずかな差ですので、誰もはっきりとした味の違いを感じられるものではないでしょう。
 

七夕で行事食としてそうめんを食べる由来は? ひやむぎで代替できない理由

そうめん

日持ちがよく、独特の製法で作られることも多い「そうめん」は、七夕の行事食としても用いられます

また、「そうめん」は七夕の行事食としても知られています。料理の見た目がこれだけ似ているのだから「ひやむぎ」でもよいのでは?と思う人もいると思います。

実は七夕で「そうめん」を食べるようになったのは、そうめんが細長く、天の川に見立てやすかったためだけではありません。

起源となった中国では、七夕は旧暦のお盆でした。当時、中国でお盆に飾られていたのは「さくべい」と呼ばれる、麦をひねって揚げた菓子だったそうで、現在のお菓子の形では「かりんとう」が近いとされています。さくべいは「油をつけながらひねって」作ることから、製法が「そうめん」と同じ。

そのため、製法が同じ食べ物が伝わる中で、このお菓子とそうめんが混同されて、「そうめん」を使うことが一般的になったと考えられています。
 

ひやむぎ・そうめんのおいしい食べ方・調理法・温かいものはにゅうめん

にゅうめん

1年じゅう、ご当地名産の「そうめん」を楽しむために考え出された温かいそうめんであるにゅうめん。そうめんは日持ちする食品ですが、もし余ってしまったら試してみては?

ひやむぎもそうめんも、熱湯でゆでて、冷たく冷やしたつけ汁に浸していただくのが基本です。

どちらも細麺ですので、伸びないうちにいただくのがおいしく食べるコツ。ゆであがったら冷水でしめた後、氷水を入れた器に盛り付けていただくのが、盛夏の美味しいひやむぎやそうめんの食べ方と言えるでしょう。

つけ汁はカツオの香りを立たせた基本出汁に大葉や長ネギ、ゴマなどを薬味として入れても美味しいですし、トマトやカレー粉を使った変わりつけ汁でいただくのも楽しいですね。

また、「にゅうめん」は温かい汁でいただく「そうめん」のことです。漢字で「煮麺」と書きます。乾麺は製造後、熟成してから食べることも多いですが、にゅうめんには、製造後1年以上経過したそうめんが適しているそうです。「にゅうめん」は奈良県の郷土料理のひとつです。奈良県は、そうめん産地のため、夏は冷たく、冬は温かくして1年を通して、そうめんを美味しく食べるために作られた料理です。
 
 ■参考
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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