たらこと明太子の違いは唐辛子の有無…味が辛い方が明太子
食欲をそそるたらこや明太子。白いご飯の和食にもパスタなどの洋食にもよく合います
この2つの違いは、非常に簡単です。
- たらこ……タラの卵(卵巣)を塩漬(塩蔵)したもの
- 明太子……タラの卵(卵巣)を塩漬(塩蔵)した後、唐辛子を含む調味料で味付けしたもの
明太子の原材料はすけとうだらに限定
すけとうだらの卵巣を明太子(辛子明太子)は唐辛子の液で漬け込んだもの。ご飯に乗せるだけで食がすすみます。
実は、明太子の食品表示に関しては公正競争規約があり、全国辛子めんたいこ食品公正取引協議会によって定められています。この規約には
という文言があります。「辛子めんたいこ」とは、すけとうだらの卵巣(卵を含む。以下同じ。)に唐辛子を原料とする調味液等で味付けしたものをいう。
すなわち、明太子はタラの中でも「すけとうだら」の卵巣(卵)を原材料としていることと定められています。たらこはすけとうだらの卵巣(卵)を原材料とすることが一般的ですが、まれにまだらの卵巣(卵)を原材料とすることもあります。
こう書くと、まだらはすけとうだらの代用品のように感じてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。まだらの身は脂身の少ない淡泊な白身魚として好まれる食材です。卵巣はそのままでは「真子」、オスの精巣は「白子」として好まれています。
明太子の歴史は韓国から? 日本人の味覚に合うようアレンジされ普及か
すけとうだらは、回遊魚であり、韓国周辺で「大衆魚」として食べる習慣がありました。17世紀ごろには、すけとうだらの卵巣を加工して食べる文化は広まっていたようです。すけとうだらの卵巣を唐辛子入りの調味料で漬け込んで加工した食品もこの時期の韓国で食されていました。現在の明太子は、第二次世界大戦後、韓国から福岡に引き上げてきた日本人が、韓国で食べたすけとうだらの卵巣の唐辛子漬けの味を忘れることができず、日本人の味覚に合うようにアレンジして販売を始めたのが、全国に広まったものとされています。
ちなみに、韓国語ですけとうだらは「ミョンテ」と言います。文字では「明太魚」とか「明太」と書きます。ミョンテ(明太)の子ですから、「明太子」。明太は日本語読みで「めんたい」なので、「めんたいこ」と呼ぶようになったという説が有力です。
この名称だけでは「唐辛子」で味付けしたことが分からないため、唐辛子入りの調味料で味付けしたものだと伝わるように「辛子明太子」という呼び方ができたのかもしれませんね。
たらこと明太子の栄養価の違い……唐辛子への漬け込みで変わるものも
たらこと明太子は主原料が同じなので、基本的にエネルギー(カロリー)やたんぱく質、脂質は大きな違いはありません。ほかの栄養価も同じようなものと思いきや、微量栄養素は後から漬け込む調味料の唐辛子のβカロテンの多さ(βカロテン当量:17000μg/唐辛子可食部100gあたり)のため、ビタミンA(レチノール活性当量)は明太子(41μg)がたらこ(24μg)の約2倍含まれています。
1日あたりのビタミンA推奨量は14歳以上では650~900μgレチノール当量(RAE)とされています。100g食べても20μg程度の差ですから、ビタミンAを摂取するために、辛いものが苦手なのに頑張って明太子を食べるほどの必要はないように思います。
どちらも代用可! たらこと明太子の調理法・おすすめの食べ方
たらこも明太子も程よい塩味がついていますので、たらこのレシピを明太子で作ったり、明太子のレシピをたらこで作ったりしても、意外と美味しくいただけることが多いです。一手間かかりますが、子どもさん用にはたらこで、大人用には明太子で同じ料理を作って一緒に食べれば、子どもも大人も満足する一品になるでしょう。
具体的な調理例としては、たらこも明太子も、生のままホカホカの白米に乗せて食べても美味しいですし、おにぎりの具にしても美味しくいただけます。また、たらこや明太子のいずれかを、醤油とバターと一緒にパスタに絡めて大葉を添えれば、さっぱりした味付けの和風パスタの出来上がりです。
たらこも明太子も、それぞれに美味しい食材です。あっさりした味が食べたいときはたらこをチョイス、辛い味が食べたいときは明太子をチョイスするなど、違いを楽しんで食べたい食材のひとつですね。
■参考
- 全国辛子めんたいこ食品公正取引協議会
- 辛子めんたいこ食品の表示に関する公正競争規約(PDF) (全国辛子めんたいこ食品公正取引協議会)
- 全国水産加工品総覧「たらこ」(中央水産研究所)
- 日本食品標準成分表2020年版(八訂)たらこ(食品標準成分表)
- 日本食品標準成分表2020年版(八訂)明太子(食品標準成分表)