亀山早苗の恋愛コラム

「一家の主が副業なんてできるか!」という夫に「妻を働かせずに食わせてみろ」と言いたい

今や「ただの同居人」。昔はあんなに好きだったのに……、夫と私、どちらが変わったのだろう。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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結婚して何年か経ち、ふと気づくと夫との関係が変わっている。「大好きでたまらない恋人」が「信頼できる家族」に変化したまではよかったが、今では「ただの同居人」と冷めた目で見ているケースもあるよう。いったいその間、何があったのか。そして変わってしまったのは夫なのか自分なのか。
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子どもが産まれてから夫への気持ちが一気に冷めて

「5年もつきあって結婚したので、彼のことはよくわかっているつもりでした。でも結局はわかってなかった。結婚後も恋人みたいにラブラブでしたが、子どもができてから夫は変わった。いや、もしかしたら夫は変わってないのかもしれません。私が夫にサポートを期待しすぎただけなのかも」

苦笑しながらそう言うのは、マリさん(40歳)だ。同い年の彼とは5年つきあい、32歳のとき妊娠したのを機に結婚した。今は7歳と4歳、ふたりの娘がいる。

「結局、私の不満は家事育児への負担が私にかかってきてつらいこと、それを夫が理解してくれないこと。それに尽きると思います」

夫婦ともに正社員として仕事をしているから、子どもが生まれてからマリさんはずっと仕事に家庭にとフル稼働だ。夫は「残業」「つきあい」で帰宅が遅くなる。遅く帰っても洗濯機くらい回せるでしょと言ったこともあるが、「だったらきみが回したって一緒でしょ。全自動だし乾燥機だってついてるんだから」と言われた。そこで妻は「思いやりのかけらもない」と夫への気持ちを減点せざるをえなくなる。

「そんなに大変なら仕事を変わればいいとかパートになればいいとか、平気な顔で言うんですよ。私の収入が減ったら、あなたがその分稼いでくれるのかと聞いたら、急に給料が増えるわけないでしょって。子どもふたりを大学まで出すとしたらいくらかかると思ってるのと言ってやりました。夫は現実を見ていない。それが不満ですね」

週末は「風呂掃除したよ」「トイレも掃除したよ」とドヤ顔になる夫だが、1週間を通して夫がするのはその程度。

「出費は痛かったけど、食洗機も買いました。うちはふたりとも地方出身で頼れる親戚もいないので家電に助けてもらうしかないんです」

子どもたちが小さいときは地域の制度を利用して、保育ママなどを頼んだこともある。そういったすべての手続きや家電購入も、マリさんがすべて選択して決めてきた。

「今や夫は、一緒に暮らしているだけの人という感じですね。『たまにはふたりでゆっくりしようよ』と夫はワイン片手に映画でもと言いますが、私は娘の小学校入学の準備をしたり、保育園からの連絡帳を記載したりしながら、映画をチラ見するしかない。こういうことも手伝ってくれないかなと言ったら、『娘たちはママがやってくれるのを期待してるでしょ』と。パパにはパパの出番があると思うなあとしれっと言うわけ。だからよけい腹が立ってくる」

日常生活は細かなことの積み重ねだ。夫はそれをわかっていないとマリさんは語気を強めた。
 

収入が上がらないのに威張られて腹が立つ

「うちの夫の勤務先、業績が上がらなくて危ない時期があったんです。なんとか脱して今はそこそこみたいですが、給料はまったく上がらない。ボーナスが出ないこともあったから、そのころは苦労しました」

ユミさん(44歳)もまた、正社員として働くママだ。ひとり息子は13歳になった。5歳年上の夫の収入が上がらないのは夫個人のせいではないが、「収入が低いのに威張るのはやめてほしい」とユミさんはつぶやいた。

「学生時代の友人の夫が大企業の部長になったなんて話を聞くと、心中、穏やかではありません。ただ、私も働いているし、たまたま子どもがひとりだからなんとかやっていけているだけ。夫は収入が上がらないことをぼやきはしますが、事態を変えようと努力はしない。副業も認められているので、残業禁止になったときなどは少し何か考えてほしいと思ったんですが、『一家の主が副業なんてできるか』と。まったく理屈が通っていない。一家の主だなんて古い価値観があるなら、妻を働かせずに食わせてみろと言いたかったですね」

つまらない「男の見栄」に縛られているのだとユミさんは冷たく笑う。最近では息子が料理に興味を持って作ってくれることが増えたが、「男が料理をして何になる。そんな時間があったら勉強していい大学に入ったほうがいい」と言った。ユミさんは思わず、「いい大学に入ったって、安定した仕事につかないと収入は上がらないからね」と言ってしまった。

「夫は無駄に有名大学を出ているので(笑)。収入で人の価値を決めるのかと夫が言うので、『そうじゃない。あなたが男が料理しても意味がないというから、いい大学を出たって意味がないと言い返しただけ』と言って大げんかになりました。かつてはそんなことを言わない人だったのに、自分の収入が多くないことに本当はコンプレックスを感じているんでしょうね。だから大学の名前にすがるようになった気がします」

ユミさんの場合も、怒りの根源は夫の思いやりのなさなのだろう。家事に仕事に子どものことにとフル稼働する妻に、もっと心を寄せていれば、ユミさんだってキツいことは言わないはずだ。

「あるとき息子がぽろっと、『お父さんとお母さんは傷つけ合っているようにしか見えない。それで楽しいの?』と言ったことがあるんです。ハッとしましたね。私自身も、夫によけいな期待を抱きすぎているのかもしれない。自分だけが大変な思いをしているという気持ちがどうしても強いので。実際、そうですしね。結婚生活が長くなればなるほど、夫から優しさが抜け落ちていくと思っていたけど、夫も同じように思っているのかもしれません」

とはいえ、だからといってここからどうすればいいのかユミさんにはわからないという。夫と心を通わせたい気持ちはあるが、常に上から目線で話す夫に敬意を抱くことができなくなっているのだ。

「めんどうだから話さないでおこうという選択が増えてきています。息子が巣立っていってふたりきりになったら、どうなってしまうのか……」

ただの同居人、という言葉にはまだ優しさがある。うちは「同居したくないけど家に帰ってきてしまう人が夫」なのだとユミさんは少し寂しそうに言った。
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