妻を「趣味」と表現することに嫌悪感
「今は妻が趣味です」という発言が物議を醸しています。ことの発端は、俳優の藤竜也さん(80歳)が、テレビ番組に出演した際、54年という長い間結婚生活をともにしている芦川いづみさん(86歳)について「趣味」と答えたことです。芦川さんは、藤さんとの結婚をきっかけに女優業を引退。以降、藤さんはずっと家庭のことを専業主婦の妻に任せてきたものの、最近になって家庭人として目覚めたのだとか。今は「趣味です」という芦川さんとは手をつないで外出もするといいます。
このことに対し、藤さんに嫌悪感を抱く人たちがいます。 「これまで家のことをさんざん妻にまかせっきりにしておきながら、今さら家庭人っぽく振る舞われても……」「『妻に苦労をかけてすまなかった』という感じがしないのが残念」「自分の発言で、大切にしているはずの妻がどう感じるかまでは考えていない気がする」という声もあります。
そもそも、「趣味」という言葉の持つニュアンスは、楽しいモノやコトのイメージ。だからこそ、妻を従属物のように扱うような藤さんの感覚に、眉をひそめる人は少なくありません。
一方で、妻の芦川さんの賢さを感じるのも事実。自分のことを趣味と公言する夫について、本音では納得しかねる部分はあっても「気持ちよく“いい夫”になろうとしているなら、それでもいいじゃない」と夫を泳がせているのかもしれません。夫に、「“妻思い”の自分はすごい」と思い込ませつつ、自分のためにあれこれ気を遣って動いてくれるように仕向ける妻の手腕は見事だと思うのです。
夫が突然「妻思いのいい夫」にキャラ変したら?
一般的な場合でも、夫婦生活が長くなってから唐突に“妻思いで、いい夫”にキャラ変しようとする夫はいます。それまで仕事ひと筋で家事や子育てを妻にまかせっきりだった夫や、浮気やモラハラすれすれのワガママな言動で妻を困らせてきた夫でも、なにかの機会をきっかけに「これからの自分は“妻思いで、いい夫”」という立ち位置につこうとするパターンです。当然のことながら、これまでの夫を知っている妻としては「何を今さら……」と白けた気持ちになり、あきれるでしょう。ところが、賢い妻は、そんな夫に対し怒りを募らせるのではなく、夫のキャラ変を自分のためにうまく活用することを考えるのです。
たとえば、こんなケースがあります。
長年、浮気をしていたことがバレて夫婦関係に危機が訪れたものの、結局は夫が愛人とキッパリと別れることで決着。その後、反省した夫は「これからは妻だけを愛して生きていこうと思う」と誓い、家庭人としてキャラ変を果たしました。
もちろん、妻は内心では夫に対して怒っていたり、あきれる気持ちもあったりするものの、そこでネチネチと夫を責めたり、冷戦体勢をとったりはしませんでした。そのかわりに、「今まで愛人にしていた以上のことを、妻の私にもしてもらうわ」と決めたのです。愛人をつれて行ったお店よりおいしいレストランに行ったり、愛人より高価なプレゼントをしてもらったり、休日はお互いの友人を招いてホームパーティーをしたりと、愛人とではできなかったはずのことを次々としていきました。つまり、“妻思いで、いい夫”になろうとしている夫のモチベーションを逆手に取って、夫のエネルギーをすべて自分のために活用させたのです。
夫としても、妻のワガママやリクエストにこたえてあげられる“妻思いで、いい夫”の自分に納得。まわりの友人や知人たちからは冷やかされながらも「なんだかんだいっても、いい夫婦だよな」といわれ、そんな評価にも満足しているといいます。
こんな風に、これまでのことは棚に上げて、今さら夫から「妻が趣味」といわれたとしても、「だったらほかの楽しみより私のことを優先してもらおう」というように、視点を変えてみるのもアリかもしれません。
いつだって、大切なのは自分自身が幸せになる道を探すこと。夫婦に訪れる小さな違和感や危機も、「じゃあ、どうしたら幸せに向かって進めるのか?」ととらえ、行動することではないでしょうか。