食生活・栄養知識

「牛乳を飲むと身長が伸びる」は本当か…伸びない原因の考察

【管理栄養士が解説】身長を伸ばすために、牛乳を飲むのは効果的な方法でしょうか? 牛乳は骨の主成分であるカルシウムと、筋肉を作るたんぱく質を豊富に含みますが、残念ながら牛乳だけで背は伸びません。その原因と身長を伸ばすために必要なことを解説します。

平井 千里

平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養 ガイド

小田原短期大学食物栄養学科 教授。女子栄養大学栄養科学研究所客員研究員。女子栄養大学大学院 博士課程修了。名古屋女子大学 助手、一宮女子短期大学 専任講師を経て大学院へ進学。肥満と栄養摂取の関連について研究。前職は病院栄養科責任者(栄養相談も実施)。現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養情報を発信。

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牛乳を飲むと身長が伸びる? カルシウム・たんぱく質などの栄養素との関係は

牛乳を持つ少年

牛乳を飲むと背が伸びると昔からよく言われています。これは本当でしょうか?

「牛乳を飲むと背が伸びる」とよく言われますが、これは本当でしょうか? このように言われる理由は、成長のために特に必要と考えられているカルシウムやたんぱく質などが牛乳に豊富に含まれているからでしょう。

カルシウムは骨を強くする成分です。これは一般的にもよく知られている事実ですし、栄養学的にも正解です。また、体が大きく成長するために必要な栄養素としてたんぱく質が知られていますが、これも牛乳に多く含まれています。これも栄養学的に正しい知識です。

それでも、残念ながら「牛乳を飲むと身長が伸びる」とは簡単には言い切れません。
 

牛乳だけでは身長が伸びない理由……背が伸びるために重要な運動・睡眠

身長だけでなく、成長を促す要因は栄養だけではありません。運動や睡眠も大きく影響するのです。例えば、小中学生を対象として調べた論文(古泉 (jst.go.jp)古泉ら、小・中学生における成熟度、身体活動および牛乳・乳製品の摂取頻度と踵骨骨量との関連,発育発達研究(49),2010年,1~11)では、通学の歩行時間が多いことと、運動部への参加をしていることが骨量を増やすことに寄与しているが、牛乳・乳製品の摂取量とは関連がなかったと報告されています。

1日の総合的な食事による栄養バランスがよいと牛乳や乳製品の影響が少ないのか、牛乳や乳製品は学校給食で飲む量で充分なのかはこの結果だけでは分かりませんが、少なくとも、「成長を促す食品は牛乳」とは言い切れないことが分かります。

また子どもの睡眠時無呼吸症候群は、注意欠陥多動性障害(ADHD)類似の症状を呈する成長ホルモンの分泌不全・低身長を招く(福山 哲広,こどもの睡眠障害,信州医学雑誌(54)、 2006年,p10)ことも知られています。

成長するということは、日々の生活の積み重ねです。栄養だけに注意を払っても、健全な成長は望めないのです。すなわち、身長を伸ばすことも含めて成長を促すためには、栄養・睡眠・運動の三本柱が必要なのです。
 
よく食べて、よく眠り、よく運動する。
 
牛乳を始め、特定の食品の効果だけに頼らず、この三本柱が何よりも大切であることを忘れないようにしたいものです。
 

身長を伸ばす効果的な方法は? 第二次性徴の「成長スパート」とは

残念ながら、牛乳を飲むだけで身長を伸ばす効果は期待できませんが、「成長スパート」の時期を上手に使うことで身長を伸ばせるのではないかとする説はあります。

「成長スパート」とは、いわゆる「第二次性徴」と言われる思春期を指します。一般的に第二次性徴は性的に成熟する過程とされていますが、同時に急激に体格が大きくなります。このタイミングを上手に使って身長を伸ばせるのではないか?という考え方です。

第二次性徴は女子の方が早く8~12歳ごろ、男子は10~13歳ごろと言われていますが、個人差が大きいです。第二次性徴中であれば、いつでも身長が伸びるというわけではないので、女子は6歳ごろから、男子は8歳ごろから身長をこまめに測り、身長の伸びが大きくなり始めたら成長スパートに入ったと考えて、さらに意識的に成長に適した生活を送れるよう心がけるのがよいかもしれません。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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