ヴィーガン給食とは……成長期の子供への栄養を心配する声も

給食当番

給食を楽しみにしている子どもは少なくないと思います。この給食が特定の考え方に偏ったものである場合、子どもの健康への影響は大丈夫でしょうか?

都内の公立小学校で「ヴィーガン給食」が取り入れられていることが話題になっています。「ヴィーガン」とは、『実用日本語表現辞典』によると、「菜食主義の様式のうち、動物由来の食品を一切食べず、革製品などの動物に由来する物・道具も一切使用しない主義の人。「完全菜食主義者」などとも言う」と定義されています。ヴィーガン給食とは、動物性食品を使わず、植物性食品だけを使った給食のことのようです。

ところが、ヴィーガン給食を提供しているのは成長期の子どもたちがいる小学校。しかも「公立」の小学校であることから、「成長期の子供の栄養が偏るのではないか?」と心配する声が上がっています。実際、栄養面ではどうなのでしょうか?
 

ヴィーガン給食のメリット・健康効果は? ヴィーガンを支持する人の考え方

ヴィーガン給食を支持する人たちは、まず前提として、上述のとおり「動物性」の食品を食べないことを「良いことである」としています。

ヴィーガンの考え方は以前から存在していました。しかしこの考え方は、宗教上の理由や動物愛護の精神から始める人がほとんどでした。また、ダイエットや美容の観点からヴィーガンを始める人もいます。最近ではSDGsが叫ばれていることもあり、環境負荷の観点から動物性食品を避けてヴィーガンを選ぶ人も増えているようです。

今回のヴィーガン給食は、動物性食品を提供しないことで「アレルギー対応」ができることと、「環境問題」を子どもたちに伝えるために大切であるという考えの下で実施されたようです。しかしこれについては、アレルギーに関する誤解と食と栄養について考えるべき点があるように思います。
 

ヴィーガン給食は子供の健康に悪影響? 懸念される問題点とデメリット

一般的にヴィーガン食は栄養面では課題があります。通常の食事と比較しても、エネルギー、タンパク質、ビタミンB12、ビタミンD、鉄、亜鉛、カルシウム、ヨウ素が欠乏しやすいと言われています。逆に、炭水化物、食物繊維、フィトケミカル、ポリフェノールなどは摂取しやすい栄養素であると言われています。

子どもの給食にヴィーガン食が提供される際に問題となるのは、「たんぱく質」の不足でしょう。たんぱく質が不足することによって、成長期の子どもに欠かせないエネルギーが不足してしまうのではないかという点です。

この点については、「大豆ミート」などのプラントベースドフードや調理法を配慮することで「ごくたまに行う」程度の頻度であれば、問題は回避できると思います。この記事を書きながら、私の頭の中にも「これとこれを組み合わせれば過不足なく栄養素が提供できそうだ」という案は浮かびます。こう考えると、過不足のない栄養素の提供については、仲間として学校栄養士の力量を信じたいところです。ただし、私の考える「ごくたまに」の頻度は1年に1回だけ。「環境問題について考える日」として実施するのであれば、学校給食にヴィーガン食を提供するのはありだと思います。

しかし、話題になっている小学校では、月に1回の頻度でヴィーガン給食を提供しているようです。栄養面から考えると、これはさすがに頻度が高すぎるのではないでしょうか。

また、私は別の点に問題を感じます。

もともとは「アレルギーを持つ子どもも含めて、みんなに同じ給食を食べさせたい」という発想が始まりだったとのことですが、アレルギーを起こしやすい食品は乳製品、卵製品などの動物性食品だけではありません。当然、ヴィーガン食にすれば大丈夫だという発想は誤解ですし、危険以外のものを感じません。
 

子どもたちはどう思っているのか、それが問題

環境問題は未来を生きる子どもたちにとって非常に重要な問題です。プラントベースドフードの開発が進めば、環境には良い影響を与えるであろうことも予想できます。しかし、消費者庁によるプラントベースドフードの定義は「主に植物由来の原材料(畜産物や水産物を含まない)で、肉などの畜産物や魚などの水産物に似せて作った商品をいいます。動物由来の添加物が含まれている場合でも、主な原材料が植物由来である場合は、「プラントベース(植物由来)食品」に含めることとします。」としています。ヴィーガンほど動物由来の食品をシャットアウトしなくても、環境には優しい食生活ができるはずです。

また、レストランであえてヴィーガン食を選ぶこととは違い、給食は提供されたものを食べるしかありません。ヴィーガンは「完全菜食主義者」と訳されるように「主義・思想」のひとつです。教職員の個人思想はどうであっても構いませんが、その給食を食べている子どもたちはどう思っているのでしょうか。

幼稚園・小中学校などでは「皆が同じ」であることを目指していますが、一部の幼稚園・小中学校では「同じ」の意味を間違えているように思います。幼稚園・小中学校などでの「同じ」は「平等」を意味しているはずです。本音を言えば「アレルギーを持つ子どもも含めて同じものを食べる」という当初のコンセプトから違和感を覚えます。なぜなら、アレルギーを持つ子どもが「これは食べられない」と言えることが「平等」だと思うからです。(ただし、努力をすればできることを「できない」と胸を張って言うのはもちろん平等ではありませんよ。)

ヴィーガン給食は、学校教育で提供すべき「平等」とは何か、子どもたちの栄養の過不足だけでなく、教育の在り方も考えさせる大事件だと、栄養士養成に携わる管理栄養士として、感じています。
 
■参考文献
1) D. Rogerson ,Vegan diets: practical advice for athletes and exercisers,J Int Soc Sports Nutr. 14,2017 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5598028/
 
2) Josefine Nebl ,Micronutrient Status of Recreational Runners with Vegetarian or Non-Vegetarian Dietary Patterns ,Nutrients. 11(5),2019 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6566694/
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