亀山早苗の恋愛コラム

夫が失業、腹をくくって「義父母」と二世帯同居してみたら。ぶしつけな義母の言葉にモヤモヤ…

コロナ禍の影響があちこちで聞かれるようになった。どんなにがんばっても家計は楽にならない。新たな生活を踏み出した人たちもいるが、それはそれで大変なようだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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コロナ禍の影響があちこちで聞かれるようになった。どんなにがんばっても家計は楽にならない。新たな生活を踏み出した人たちもいるが、それはそれで大変なようだ。
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夫が失業、崩壊寸前に……

「コロナ禍で、小さな会社で職人をしていた夫が昨年暮れ、失業しました」

そう言うのは、トモエさん(39歳)だ。3歳年上の夫との間に9歳と6歳の子がいる。その後は彼女が仕事を掛け持ちしてがんばってきたが、それでも家計は厳しい状況だった。

「家賃と食費でいっぱいいっぱい。このままだとうちは崩壊する。私も倒れてしまうかもしれない。そこへ手を差し伸べてくれたのが夫の両親でした」

夫の実家は、トモエさんたちの住居から1時間半ほどのところにある。それまでもときおり義両親には会っていたし、関係も良好だった。夫は密かに実家で一緒に暮らせないか親に相談していたらしい。

「夫はすぐにでも引っ越そうと言いましたが、私としては義両親との同居になかなか踏み切れなくて。ふたりともいい人なのはわかっているけど、義母がちょっと“上から目線”のところがあって苦手だったんです。ただ、夫の自宅は二世帯住居用に作ってある。以前、夫の姉一家が一緒に住んでいました。だけど義姉と義母の折り合いが悪くて出て行ってしまったそうです。本当の母娘でもうまくいかないのに、私がやっていけるのか。本当に悩みました」

悩んでいるうちに時間がたち、この春、トモエさんは過労で本当に倒れてしまった。げっそり痩せた自分の顔を鏡で見て、「こんなところで意地を張っていてもしかたがない」と腹をくくった。

「まずは子どもたちに不自由をさせないため、そして自分たちの健康のためにも、ここは同居して甘えるしかない。まあ、それと介護はセットみたいなものですが、義姉と義母の折り合いが悪いなら、長男である夫がすべて引き受けるしかないのかもしれない。70代の義父母はふたりとも元気だし、健康にも気を遣っているから、すぐに介護という状態でもないし……」

いろいろ考えながらの同居が始まった。
 

我慢するしかないけれど

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同居はしたものの、夫はなかなか仕事が見つからない。トモエさんはすぐに近所にパート仕事を見つけて働き出した。

「子どもたちを置いていっても心配ないのはありがたいんですが、義両親は働かない息子に何も言わない。結局、私だけが早朝から夕方まで仕事を掛け持ちして働いている。家賃がかからないから楽にはなったものの、実際には二世帯住宅といっても狭いし、とても暮らしにくいんです……」

義母は疲れているトモエさんに、悪気はないのだろうがぶしつけな言葉を投げかけてくる。

「娘のことを『女の子なのにかわいげないわね』とか、息子には『どうも気が弱くていけない』とか。男だから女だからという言い方はしないでほしいと言ってあるのに、つい出てしまうんでしょうね。そのたびに『性別より個性ですから』と言い返してしまう私も大人げないんですけど」

小さなトゲでお互いをつつき合っているような状態を見ても、夫は我関せずを貫いている。母親にはまったく言い返せないのだ。「言い返すとめんどうだから」が夫の言い分。それは義父も同じで、妻(義母)と一緒に過ごす時間を減らそうと、今も勤務していた会社の嘱託として働いている。

「でも義母は、自分の息子には働けと言わないんですよ。こっそりお小遣いを渡している。このままだと夫がどんどんダメになるのでお金は渡さないでと言ったこともあるんですが、『大の男が小遣いもろくにないなんてかわいそうだから。あなたはいいのよ、気にしなくて。私がしたくてしてるんだから』って。いや、そういうのがダメなんですってばと言ったんですが、義母には私の言葉が届かない。そして夫は私の意見は聞かない」

本当なら子どもを連れて家を出ていきたいところだが、トモエさんにはもう両親もおらず、帰る場所はない。

「この先の見通しが立たないのがいちばんつらい。夫は腕のある職人だし、声をかけてくれる人がいなかったわけではないんです。それなのに実家に戻ってからは、給料が安いと文句をつけては仕事の口を断ってしまう。そりゃそうですよね、楽してお小遣いがもらえる今の状況なら抜け出したくないですから」

そんな夫にやきもきしながら、そして義母にイライラしながら、トモエさんは粛々と仕事から仕事へと駆け回っている。誰にどう相談したらいいのかもわからない。

「いつか義両親のどちらかが亡くなったりしたとき、夫は初めてわかるのかもしれません。一生遊んで暮らせるほどの遺産はなさそうだし。ただ、そのときにはもう遅いような気もします」

家族だけで地道に、でも楽しく暮らしたい。そんなささやかな夢を抱えて、トモエさんは今日もがんばっている。
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