日本は今なお「負け」続けているのか?
日本性科学会が「セックスレス」を定義したのが1994年。バイアグラが日本で発売されたのが1999年。この時期以降、日本のメディアで「セックスレス」という言葉を頻繁に見かけるようになりました。 その後、セックスレス予防改善の相談所を運営している筆者の“セックス負け国”についての記事が大ヒットしたのは2007年のこと。英国のコンドームメーカー・デュレックス社による世界規模の性意識・実態調査「デュレックス グローバル セックス サーベイ」(2006年実施)の結果発表に際して執筆したのですが、あの当時、有名なセックス大国ギリシャが「年間セックス回数」において1位(168回!)をキープする一方で、日本はといえば調査対象26カ国中で最下位(48回)。「回数も満足度もラテン諸国に負けている」とお伝えしました。時は流れ、コロナ禍による新しい生活様式のなかで日本のセックス事情はどう変化したのでしょうか。直近の「ジャパン・セックスサーベイ2020」(※)を元に、紐解いてみましょう。 調査によれば、夫婦間のセックスレスは51.9%です。日本家族計画協会の2016年調査では47.2%だったので増加の一途をたどっているということです。ざっくり半数の夫婦はセックスレスと考えて間違いなさそうです。通勤の電車内にいる既婚者風男性の半分がセックスレスとしたときに、安心するのか、「これはまずい」と思うのか、自身の結婚観をあらためて見つめ直してみましょう。
日本在住の外国人から見た「セックスレス日本」
今回、執筆にあたって「日本の夫婦はセックスレスが多い」件をテーマに、日本に暮らす外国籍の友人たちの率直な声を拾ってみました。アメリカ、イタリア、ドイツ、スウェーデン、そしてギリシャ国籍の方々です。すると……自由気ままに話してくれました。なかでも「セックスレスなのに離婚しないのが不思議」という意見は、外国籍の方々から本当によく聞きます。以前、筆者が対面でセックスレス相談を行う様子をフランス国営放送に取材された際、番組プロデューサーが通訳を介して「泣くほど辛いのに、なぜ離婚しないのか」と何度も質問してきたことを思い出します。「浮気、不倫だとマスコミが日々騒ぐのでセックスが嫌いなわけではないのでは?」
「風俗店舗が目立つから、男性は家の外ではしてるはず」
「派手なラブホテルは、日本でしか見たことない。目的がはっきりしてるし、満室が目立つし、性欲はあるんでしょう」
「セックスレスなのに個室ビデオ店で、ひとりで処理する人がいるって不思議。あそこは独身男性しか使わない場所なのか?」
「セクシーなアニメが多い。パートナーとはできないからアニメを見てひとりで満足するってことか」
「セックスレスなのに離婚しないのが不思議。それでも愛し合っているということ?」
「結婚とセックスはセットになっているはず」
これについては通称PACS(民事連帯契約)という非婚カップル保護制度によって社会保障・家族手当が保障されるフランスとはベースが違うため、ひと言で説明できる問題ではありませんが……。いずれにしても「日本人のセックス回数こそ海外勢に劣るが”性欲は大いにある”はず」というのが外国籍の方々の総論のようです。
【後編】では、日本人に「性欲」はあるのか否かをテーマに調査データを紐解きます。
※出典:【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ 2020
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