「おかあさん」と呼べないまま離婚した理由

離婚

結婚してみたら、「この制度が自分には合わない」と思ったと語る人は少なからずいる。かつての家父長制度のなごりを抱えたままの現行の婚姻制度。選択制夫婦別姓もいまだ実現しないことから考えても、この制度そのものが女性にとっては大きな負担になっているのかもしれない。

 

どこかおかしい…夫に感じた違和感

結婚してすぐ、夫が自分の両親を「おとうさん、おかあさん」とすんなり呼んでいることに驚いたと言うのは、アヤカさん(33歳)。30歳のときに3歳年下の彼と結婚したが、お互いの両親に会ったのは結婚後のことだった。

「ふたりとも大人だから、ふたりだけの判断で婚姻届を出しました。両方の両親には事後報告だったんです。私はもともとあまり実家とは行き来していなかった。彼は『オレも』と言っていました。結婚後、一応、お互いの両親に顔を見せに行こうかと、まずは遠方の私の実家に。すると彼は会うなり、『おとうさん、おかあさん、こんにちは』と元気に挨拶。これにはびっくりしました。赤の他人なのに……と」

もともと夫は人懐こくて、誰からもかわいがられるタイプ。嫌味なく、気づいたら懐に飛び込んでいるような性格なのだという。

「それにしても……。彼は『アヤカの両親なんだから、オレにとっても両親だよ』と。ありがたいような気もしましたが、やはりどこか気持ち悪いというか違和感が残りましたね」

彼はそのキャラクターで両親を楽しませた。母はアヤカさんに「いい人と結婚したね」と満面の笑みだった。

「調子がいいだけよと言いましたが、確かに彼の調子のよさは貴重でもあるので。ところがその後、彼の実家に行ったときの彼の態度がまったく違っていたんです」

いつもの調子のよさは影をひそめ、母親が何かいうと、少しだけ笑って「そうだね」と言うだけ。自分からは発言せず、母親が一方的にしゃべり続けていた。

「うるさそうにもせず、とにかく母親を全部まるごと受け入れている。そんな感じでした。その場で私は、彼の母を『おかあさん』とは呼べなかった。母親は彼にべったりで、居心地悪い状態でしたね」

帰り際、彼は「オレたち、みんな家族になったね」と言った。それにもアヤカさんは「何かが違う」という思いが体の内からわいてくるのを感じた。

 

結婚はふたりの関係か、家と家の関係か

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おそるおそる、「結婚ってふたりの関係だよね」と言ってみた。すると夫は「え、家と家でしょ」と聞きたくなかった言葉を吐いたのだ。

「いや、今の民法ではふたりの合意に基づくんだよと言いましたが、夫はしれっと、アヤカがボクの家に嫁いできたということだよって。もちろん、ボクもアヤカの家の一員となったとは思ってるけどと言われて愕然としました。私はふたりだけで家庭を築くことであって、実家とも彼の実家ともやむをえず親戚づきあいはせざるを得ないかもしれないけど、家族になったとは思っていなかった」

夫の実家は自宅から近かったので、義母が突然、週末に来ることもあった。何度かそういうことがあったので、アヤカさんは「共働きなので、週末はふたりの大事な時間。私自身もやることがたくさんあるので、少し控えてもらえないでしょうか」と丁寧に言ったという。

「そうしたらすぐに夫の耳にも入っていて、『きみにとっても親なのに、失礼すぎる』と怒られちゃった。なんだかヘンだなあと思いながら半年くらい過ぎていきました」

一時期、アヤカさんに残業が続いたことがある。夫の夕飯が気にはなったが、必ずしも妻が作らなければいけないわけでもない、大人なんだから自分の夕飯くらいなんとかするだろうと考えていた。もちろん、残業が続くことは夫にも話してあった。

「残業4日目くらいでしたか、家に帰ったら夫の母が来ていて、夫は母に給仕をしてもらいながら夕食の最中。知らない家庭に紛れ込んだのかと思っちゃいました」

夫の母は、「あなたには残業より大事なものがあるはずなのにね」と嫌味をかました。

あとから夫に食事くらいなんとかすればいいのにと言うと、「ボクは手作りで育っているから」と。日頃、冷凍食品や出来合いの惣菜が多いアヤカさんへの一撃とも受け取れた。

「それからすぐですね。私が家を出たのは。結局、結婚して1年も経たずに離婚という結末になりました。独身時代はいつも、男女は平等であるとか、女性だってバリバリ働くべきだよとか熱弁をふるっていた人なのに、実際に結婚したら、自分の母親像から抜けられなかった。こういう男性、意外と多いのかもしれませんが」

現在は「快適なひとり暮らし」を楽しんでいるアヤカさん。結婚には向いていないと感じたので、今後、結婚する予定はない。

「でも心のどこかで、従来の結婚制度とは全然違う、“オレたちだけの結婚”を作り出してみようという人が現れるのを期待しているところはありますね」

一部の女性たちも、そう感じているのではないだろうか。
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