亀山早苗の恋愛コラム

新型コロナに罹患した夫が療養施設を経て入院…家庭内感染への不安よりキツかった実母と義母の電話攻撃

ある日突然、夫が新型コロナウイルスに罹患していることが発覚。数日の自宅療養を経て療養施設へ、さらに悪化して病院へ。家族に感染させていないかと心配する夫、必死で子どもを守る妻。そこへ心配した実母と義母が毎日電話をかけてくるのだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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止まらない、実母と義母の電話攻撃

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ある日突然、夫が新型コロナウイルスに罹患していることが発覚。数日の自宅療養を経て療養施設へ、さらに悪化して病院へ。家族に感染させていないかと心配する夫、必死で子どもを守る妻。そこへ実母と義母が毎日電話をかけてくる。

夫がコロナにかかってしまったある一家、妻はどうやって心の平静を保ったのだろうか。

 

感染経路もわからない

「ある日、夫が妙な咳をしているなと思っていたんです。本人も気になったのか翌日、PCR検査を受けたら、翌日には感染が発覚。あの日から数週間、我が家は大変でした」

カズエさん(44歳)は苦笑しながらそう言った。13歳と10歳の子がいるため、週に3日ほど出社する夫は人一倍、感染対策をしていたという。リモートで働くカズエさんも、手洗いやうがい、換気などについて家族にしつこいくらい注意を促していた。

夫の感染がわかったときは、とにかく夫を部屋に隔離。夫がトイレに行くときは家族が別の部屋へ。夫が歩いたところ、触ったところは即消毒した。

「数日後、療養施設に入れたときはホッとしました。ところがこの療養施設が夫にはつらかったみたい。夫と私の親には黙っていようかとも思ったんですが、あとでわかったときに恨まれるのも嫌だし、もし悪化したらと思うと、やはり言っておいたほうがいいかなと思いました」

ところがこれが大変なことになる。義母も実母もひとり暮らし。特に義母はひとり息子の感染におろおろしているのが電話越しにもわかった。

「翌日には夫の好きだった地元のお菓子などと一緒に、お札やお守りが送られてきました。近所の神社を回って集めたみたい(笑)。心配なのはわかるけど、夫に届けたほうがいいかとLINEで尋ねたら『家に置いておいて』と。そりゃそうですよね。義母には届けましたと伝えておきましたが」

コロナ禍で、義母は長年続けていた地域のボランティアもできず、地元の友人との集まりもなくなった。ひとりでテレビを見続けるような日々の中、異様なまでに心配性になっていたようだ。

「突然悪化して亡くなる人もいるというのを聞いて、いても立ってもいられなくなるみたいで、そのつど、電話をかけてくるんです。私は子どもたちの世話や自分の仕事、夫へのケアなどもあって朝からとにかく忙しいのに、義母は朝6時ころになると電話をかけてくる。夫は感染がわかった3日後に、ワクチンの予約が入っていたんですよ。それもあって、義母はよほど悔しかったんでしょうね。『どうしてもっと早く予約を入れなかったの』と私を責めてくる。予約がとれなかったのでしかたがないんですが。でもここで私まで熱くなるとけんかになるので、『運悪く、予約がとれなかったみたいですよ』と穏やかに言うしかありませんでした」

あとからカズエさんは気づいた。夫の父は今の夫と同じ年齢で急逝しているのだ。義母にとっては本当に「いても立ってもいられない状態」だったのだろう。

 

実母はもっと強烈だった

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実母も毎日、電話をかけてきた。相手が娘だからか、ずけずけと「自宅療養なんかしていたら、家族は絶対感染するからね」と決めつけてくる。

「でもそれは私たちにはどうにもならない。ただでさえ忙しい私に、どうにもならないことで責めてこないでと言いたかった。ただ、母も心配しているんだろうと思うと、あまりきつい言葉もかけられず、最初ははいはいと聞いていたんです。そのうち、『会社のコネを使ってでも早く入院させるべきよ』と言い出して。私が仕事を終える時間を見計らって電話してきて毎晩、小一時間しゃべり続ける。子どもたちの夕飯を作っている時間をどれだけ阻害されたか……」

入院を経て、夫の退院が決まったときも、「退院はまだ早い。もっと入院させておかないと家族にうつる」と実母は言った。しまいには「あなたは家族を守る気がないの?」と言われて、カズエさんはついにキレた。

「おかあさんの言っていることは、すべてテレビの受け売りでしょ。不安な気持ちはわかるけど、私のほうがもっと不安なのがわからない? そんな私を責めるのはやめてくれないかなと、かなり強く言ってしまいました。それ以来、母は私には電話をかけてこなくなりましたが、中1の娘にかかってくるようになった。娘は3回に1回しか出ませんし、電話のやりとりもかなり適当(笑)。私よりスルー力があるなあと感心しました」

あれから数カ月。日常を取り戻したカズエさん一家だが、義母と実母へのモヤモヤした気持ちは払拭できていない。

「義母も実母も70代で、まだ元気ではあるけど、精神的な不安を抱えるととにかくそれを解消したくなるんでしょうね。とにかく自分の不安を誰かに言いたい、いちばん情報をもっている私に電話をかけるしかないと思うんでしょう。それが私にとって、どれほど苦痛かは察してくれない。大騒ぎすればするほど、当事者は傷つく。今回は当事者の夫が対応できないからすべて私が引き受けるしかなかったんですけどね」

冷静にそこまで分析しているカズエさんでさえ、親たちの「やり場のない不安」に巻き込まれた。もし家族がコロナに罹患したら、冷静に対処してくれる身内以外には言わないほうがいいのかもしれない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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