不倫夫と離婚、再婚したけれど……
夫の不倫が発覚して離婚。その後、再婚したものの、またも夫に不倫をされている女性がいる。「典型的なサレ妻なんでしょうね」と自嘲するが、話を聞いてみると、少し古風ではあるが彼女のような「いい妻」を愛する男性もいるはずだ。
好きになると尽くす
「好きな男性ができると尽くしちゃうんですよね。でも私、自分が尽くしたからあなたも愛してとは思わない。尽くさせてくれてありがとう、あなたの存在があるだけで幸せ、なんて言っちゃう。だからバカにされるんだと友人からは言われます」
穏やかな笑みを浮かべながらそう言うのは、ナツミさん(41歳)だ。27歳のときに3年つきあってきた男性と結婚したが、2年後、夫の不倫が発覚して離婚した。
「不倫がわかっても、彼が謝ったからやり直そうと思ったんです。だけど別れたと言っていた不倫相手と別れていなかったことが1年後にわかって私から離婚を切り出したんです。離婚から1年たったころ、彼が共通の友人を介して『ナツミと別れなければよかった。重かったけど愛されていたのがわかった。もう一度やり直せないか』と言っていると聞きました。そのころには彼に関心がなくなっていたので『ありえない』と断りました」
離婚から4年たった31歳のとき、6歳年下の男性と仕事で知り合った。何でも話せるし、気を遣わなくていいので「友だち」として接していたら、ある日、彼がまじめな顔で「つきあってほしい」と言ってきた。
「驚きました。『あなたはまだ20代半ばなんだから、同世代とつきあったほうがいい』と諭したんです。30歳と36歳ならなんとなくやっていけるかなと思うけど、25歳と31歳は無理だと感じたから」
すると彼は、「あなたとなら対等につきあっていけると思う」と言い出した。対等という言葉を聞き、彼女はなんとなく違和感を覚えたという。
「離婚してからつきあった人もいたけどうまくいかなくて。年下彼の『対等』という言葉を聞いて、私は対等につきあいたいわけじゃなくて、力関係なんてどうでもいい、ただひたすら好きでいたい、惚れていたい。そうじゃないと恋愛できないんだとわかったんです」
もちろん、下に見られたり支配されたりはしたくない。だが関係性を考える前に、「ただ惚れさせて」というのが本音だったのだ。
7年の「あやふやな関係」を経て
その後、ふたりは友だちのような恋人のような、あやふやな関係を続けた。彼はときどき「オレたち、ほぼ恋人だよね」と笑ったという。ナツミさんは、どうしても年下彼に「惚れきる」ことができなかった。
そんな関係は7年続いた。その関係が崩れたのは、彼が突然、会社を辞めたからだ。
「会社が他の企業と合併して、人事や派閥もごたごたしていたようで、なぜか彼が元々の会社の幹部から嫌がらせされたみたい。もちろん組合も動いたんですが、最終的には彼が『もうイヤだ』と辞めてしまった。落ち込んでいましたよ。心配で数日間、彼の部屋に泊まったら、夜中に悲鳴を上げて飛び起きていました。本人は覚えていなかったみたいですけど」
そんな彼の様子を見て、ナツミさんは心に火がついた。今まで見たこともないほど弱った彼に惚れてしまったのだ。
「結婚しようと私から言いました。私があなたを守るから、と。すると彼は泣き笑いしながら『僕があなたを守るはずだったのに』って。私はあなたと一緒にいたいと素直に言いました」
それからの彼女は、夫となった彼のために尽くしまくった。彼の就職先を見つけ、愛妻弁当を作って送り出し、仕事から帰ると彼の好物を作った。いつでも「あなたは最高」「あなたほどいい男はいない」と言い続けた。
39歳で出産。育休もそこそこに職場に復帰、仕事に家事に育児にとひとりでがんばってきた。ワンオペでも不満もなかった。
「だけど子どもが2歳になった今年の春、夫が不倫していることがわかったんです。さすがに愕然としましたね。彼は最初、認めようとしませんでしたが、私が責め続けたら『ごめん』と。『あなたはいい妻過ぎるんだよ』とも言われました。『いい関係を築きたいと思ったけれど、あなたは結局、僕を囲い込んで子ども扱いしていたよね』って。私にそんなつもりはなかった」
惚れた男に尽くしたい。それだけだったのだ。だが彼はそれを、「年下だからひとりの男として認めてくれない」と思っていたようだ。
「誤解と齟齬があったんですね、ふたりの間に。子どももいることだし、もう一度やり直そうとは話しましたが、彼は相手の女性と別れていないみたいだし、私は急激に彼への関心がなくなってきてしまったし……。離婚まで時間の問題かなと思っているんですが、ふたりとも自分から離婚という言葉を出したくなくて膠着状態が続いています」
彼女が尽くすのは愛情からであって、“いい妻でありたい”という気持ちからではない。彼はそこを誤解しているのだ。そして尽くされることに、少し息が詰まったのだろう。互いにどういう愛情表現を望んでいるのかを話せればよかったのかもしれない。自分にとって「当たり前」のことが相手にはうっとうしかったり不足だったりするのだろうから。