円満夫婦にも危機は訪れる
今のところは何も問題がなさそうに見える円満夫婦でも、年月を重ねるうちにお互いの価値観がズレはじめ、やがて熟年離婚の危機を迎えるケースもあります。最近では、4歳年下の男性と27年間に及ぶ結婚生活にピリオドをうった歌手の八代亜紀さんのように、何十年という長い時間にいろいろな波を乗り越えた後で別れを決断する夫婦も少なくありません。
ところで、多くの場合、熟年離婚をする夫婦は次の3つの問題を抱えています。
問題その1. お金に執着している
結婚生活が長くなると、「蓄え」が増えていくもの。貯金をはじめ、住宅や生命保険など、夫婦で積み重ねてきた努力が資産となっていくケースも多いでしょう。
お金の価値観が似ていて、同じ方向を見ている夫婦であれば、お金の使い道についてもトラブルになることはまずありません。ところが、夫婦どちらかがお金に執着している場合、将来のお金の使い道について意見が食い違うこともあります。「オレが働いて稼いだお金だから自由に使わせてもらう」という夫に対し、「働く夫を支えてきた私にもお金を使う権利があるはず」といった妻の思惑がぶつかることも。
その結果、お金をめぐって夫婦間で争うような熟年離婚にいたる場合もあります。将来、自分が希望する生き方を叶えるためには「どれだけお金があるか?」がカギになることも珍しくはないのです。
問題その2. 長年の不満がいよいよ爆発
今この記事を読んでくださっている人のなかにも、一緒に過ごす時間が長くなるにつれ、パートナーへの不満を募らせている人もいるのではないでしょうか。若い頃はガマンができたことも、「いい加減、もう無理!」と相手のことを許せなくなり、積りに積もったストレスが爆発し、熟年離婚という選択をせざるを得なくなる夫婦もいます。
家事や育児への協力不足、親や親戚への不義理、モラハラやパワハラというように、相手に不満を抱く原因は日常にたくさん散らばっているのも事実。仕事や育児に一段落つき、夫婦の時間を取り戻しつつある熟年期だからこそ、お互いに向き合った時にもらした本音が熟年離婚の引き金を引くことにもなりかねません。
問題その3. それぞれの人生のリスタート
離婚をポジティブにとらえて選択した結果、熟年離婚という決断を下す夫婦も存在します。これからの人生に残された時間のなかで、お互いそれぞれがやりたいことをやりたいペースで実現させていくために、別の道を歩むというスタイルです。相手の人生を尊重し合うことができるのは、人生経験を重ねた大人ならでは。「必要があれば協力したり、応援したりできる」という懐の深さを見せられるのも、このタイプの熟年離婚をした人たちに共通している点。ほかにも、「離婚の際に消耗するエネルギーが少なくて済む」「お互いの理解のもと、円満に堂々と自由を手にすることができる」という経験者からの声もあります。
このように、お金の使い道や長年の不満の蓄積が原因の熟年離婚もあれば、前向きに人生を考えてする熟年離婚もあるということです。
「熟年」というと、年齢を重ねたイメージを思い浮かべがちですが、人生100年時代を迎えた今、そこからリスタートしてもまだ十分にやりたいこともできます。離婚はしないに越したことはありません。とはいえ、実際には熟年離婚をきっかけに、美しい花を咲かせる人生のチャンスをつかんだ人たちも大勢いるのです。