結婚5年、今になって「家族観の違い」に戸惑う

家族観

独身、事実婚、届け出婚、同性婚など人の生き方はさまざま。何度離婚しようと何度再婚しようともちろん自由である。

そもそも「家族」とは何なのか、どうあるべきかも人によって違う。だからこそ結婚する前にすりあわせておいたほうがのちのち揉めずにすむことにもなるだろう。

 

「家族」への執着はなかった

「どうしても結婚したい、家族を作りたいという気持ちはなかったんです。ただ、彼とは4年つきあっていましたし、彼の海外転勤が近いということで、だったら結婚しちゃおう、それで私も海外に行こう。そんなノリでした」

笑いながらそう言うミユキさん(37歳)。結婚してすぐ、ヨーロッパのある国に転勤となり、3年半滞在した。偶然だがコロナ禍直前に帰国した。

「向こうでは語学学校に通いながらダンス教室にも行っていました。もともとダンスをやっていたので私にとってはきわめてありがたい夫の駐在だったんです」

夫の転勤をちゃっかり利用したと言えなくもないが、世界各地に友だちもできたし、本当に楽しかったと彼女は言う。よく言う「駐在妻の苦労」などなかったかのようだ。

「私は空気読めないタイプだし、はなからあえてはみ出していましたから苦労はなかったですね。夫も適当な性格なので、あの家は夫婦揃っていいかげんだと思われていたんじゃないでしょうか」

帰ってきてからのほうが大変だったと彼女は言う。やっと生活が落ち着いたと思ったらコロナ禍でダンススクールは軒並み閉まり、帰国後インストラクターとして働く話も宙に飛んだ。

「夫は在宅ワークになるし、私はやることがないし……。なんとなく家庭内が不穏になりました」

そんなとき、夫が「子どもがほしい」と言い出した。将来の青写真もなく結婚したのだが、夫がそれほど子どもをほしがっているようには見えなかった。ミユキさん自身も、「できればできたでいいか」という程度。だが夫は計画的に出産を目的にしたいと言うのだ。ミユキさんには少し抵抗があった。

 

コロナ禍で意見が対立

偶然にも、昨年夏にミユキさんの妊娠が判明。すると秋、夫は「将来を見越して、オレの実家に戻らないか」と提案した。このまま東京で子育てするのはむずかしい。子どもにとってもっと環境のいいところで暮らしたい、と。

「それに先祖代々の墓もあるし、まだおばあちゃんも元気だし、大家族で暮らしたほうがいいんじゃないかって夫は言うわけです。私としてはクエスチョンマークが5個くらい頭の中を駆け巡りました。夫がそういう家族観をもっているなんて、まったく知らなかったから。私はひとりで生きてもいいと思いながら結婚し、ふたりでいいと思いながら妊娠した。それが限度かな、と。義父母や義祖母まで広げての“家族”は受け止められない。そう言うと夫は『オレ、一応、長男なんだよね』と。え、そういう感覚なのとびっくりでした」

夫にとっては三世代、四世代で暮らすのが夢だったと初めて聞いた。だったら結婚するときに言ってくれればいいのにとミユキさんは文句を言ったが、当時はそれが現実化するとは思えなかったと夫。コロナ禍になって、いろいろ考えた結果なんだと夫は言った。

「私は東京で生まれ育ちました。夫が赴任していたのも大都会だった。都会で核家族。私にとってはそれが基本だったんですよ。夫の実家は本当に田舎なんです。どうやって食べていくのかと尋ねたら、勤め先はあるし兼業農家でやればいい。親父もそうだったと」

夫は生活が落ち着いたら、きみもダンスを教える場所くらいあると思うと“適当な”ことを言った。だがミユキさんがネットで調べたところ、夫の実家近くにダンススクールなどはないし、たとえ自分で開校しても誰も来そうにはなかった。大きな町まで教えに行くとしても、子どもがもっと大きくならなければ無理だ。

「それまでに私のスキルが落ちますよね。子どもを産んで、コロナがおさまったらすぐにでもダンス関係の仕事を見つけたいのに。最後は夫が『夫についてくるのが妻というものだろ。だからきみは駐在先にも来たんだよね』って。いや、遊び半分でしたとは言えなくなりました。私には“夫についていく”という発想がまったくないから」

迷ったり揉めたりしながら、この春、ミユキさんは出産した。丸々と太った元気な男の子を見て、夫は「跡継ぎだ。やっぱり故郷に帰ろう」と言った。その言葉に彼女は離婚を決めた。

今、乳飲み子を抱えて彼女は実家に戻っている。両親と、独身の弟は赤ちゃんに夢中だが、ミユキさんにとっては、それほど居心地がいい場所でもない。

「独立して出ていったのに、実家に戻るというのが私には屈辱で……。今はしかたがないけど早く仕事を見つけて実家を出たいと思っています。夫とは離婚調停中です。勝手に出ていったと言われているので、夫が強引に私の人生を変えようとしていることが耐えられないと調停で話しています。なかなかわかってもらえないところもありますが」

家族観は年齢とともに変わっていく可能性もある。結婚する前、結婚後にそれとなく話し合ったり確認しあったりする必要があるのかもしれない。
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