亀山早苗の恋愛コラム

モヤモヤする現代の姑たち。「嫁姑の確執なんてないわよ」と笑ってみせるアラ還女性の本音

「嫁姑の確執」というのは、今も語り継がれているが、実際にアラ還の女性たちに聞くと、「姑根性なんてないわよ、息子は息子の人生を選んだのだから」と明るく話すことが多い。とはいえ、何かモヤモヤしたものを抱えているようにも見える。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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「かつての“姑”のようにはなりたくないけれど……」

義母

「嫁姑の確執」というのは、今も語り継がれているが、実際にアラ還の女性たちに聞くと、「姑根性なんてないわよ、息子は息子の人生を選んだのだから」と明るく話すことが多い。とはいえ、何かモヤモヤしたものを抱えているようにも見える。

嫁世代からは、舅姑に代わって、「義父母」という言い方が増えており、それもまたむしろ古い価値観のような気がしてならない。舅姑という言い方のほうが距離感があり、むしろ突き放した潔さみたいなものが感じられるからだ。「義」がついていても、「父母」と言い切ってしまうのは、少子化世代の家族観なのだろうか、とあれこれ思いを巡らせてしまう。

 

アラ還女性の「あきらめの境地」

大学卒業後に入社した会社で、3年先輩の男性と結婚したナオさん(58歳)。29歳で長男を、31歳で次男を出産、以来、パートなどで働きながら家事と育児に奔走してきた。

「長男はまだまだ独身でいたいみたいなんですが、次男が一昨年、25歳で結婚しました。デキ婚なんですよ。学生時代からつきあっていて子どもができたら結婚すると決めていたそうです」

次男が初めて彼女を家に連れてきたとき、ナオさんは一目見て「この子とはうまくいかない」と思ったそう。

「真夏だったせいもあるけどノースリーブの派手なひらひらしたワンピースでやってきたんです。せめて半袖くらい着るべきじゃないかしらと思って。つけまつげもバサバサしていたし(笑)。もちろん、その場では何も言いませんでしたけど、ちらっと夫を見たら、なんだかうれしそうに鼻の下を伸ばしていて。娘がいないから、夫はニコニコして、いつもより百倍愛想がよかったですね」

何やら嫉妬混じりの言葉が多い。彼女はいきなりファストフードのチキンを差し出したという。

「結婚する相手の家にそんなもの持ってきます? 次男が言うには、彼女がつわりであまり他のものが食べられないから、彼女の発案で、みんなで食べられる鶏の唐揚げにしたんですって。なにもかも常識を逸脱しているなあと思いました」

ふたりが去ったあと、ナオさんは夫にそうやってぶつぶつと愚痴をこぼした。すると夫は、「そんな堅苦しくなくていいんじゃないか、今どき」とつぶやいた。

「礼儀の問題ですよ、堅苦しいかどうかじゃない。彼女には夫となる人の親への敬意が感じられなかった」

今も彼女は手厳しくそう断言する。

 

子どもを預かるのが苦痛

その後、次男夫婦に子どもが生まれた。次男の妻も仕事をしているため、ときどき次男から保育園に迎えに行ってほしいなどと連絡が入るようになった。

「そのために次男夫婦は近くに越してきたんですよ。私は手伝わないと宣言したんですが、次男から『頼むよ、ふたりとも残業なんだ』と言われるとしかたがない。孫に食事をさせていると次男がやってきて、ついでに食事をしていったりする。でもね、次男の奥さんは直接、お礼を言ってこないんです。次男からだけですね、連絡は」

そういうときに「まったく、今時の嫁は」と言いたくなるのかもしれないが、ナオさんはそれだけは言わない。昔の姑とは違うという矜持を見せたいのかと問うと、「どうせならさりげなくスマートに手を差し伸べたほうがかっこいいから」と笑う。

ナオさん自身、夫の母親とは別居してきたが、「夫の母親」というだけでうっとうしい思いがあるのはわかっているからだ。

「次男の妻に、“嫁”という意識はもたないようにしています。あくまでも私たちとは無関係だと考えているんです、いい意味でね。それでもときどき、人としてどうよと思うことはありますよ。彼女はとにかく、うちには来ない。それはいいんですが、夫が骨折したときでさえ、何も言ってこない。コロナ禍で見舞いはできないのだから、せめて電話で『大丈夫ですか』の一言くらい言ってもいいんじゃないかと思いますけどね」

ふと、次男は大事にされているのだろうかと考えることもある。だが、そこに口を出してはいけないと自分を戒める。そんな日々を繰り返したあと、ナオさんはふと思ったそうだ。

「次男をあきらめればいいんだ、と。自分の息子だと思うから、あれこれ心配してしまう。あの人はうちから出ていった人、結婚して一家をなしている人。親戚程度に考えていればいいんだと。手塩にかけて育てた息子だと思うから、どこかに独占欲みたいなものがあるのかもしれません。

先日言ったんですよ。孫を迎えに行ったり預かったりするのはいいけど、せめて時給1000円くらいよこせって。次男は『負けてよ』といいながら2000円ほど置いていきました。それ以来、そうやって少しずつお金を置いていくようになったんです。そうしたら私も、なんとなくあきらめがつくというか、これはアルバイトだわと割り切れる。たまったお金でおいしい肉を買って夫とふたりで食べています。夫は呆れていますけど……」

お金で割り切れば感情がねっとりしない。何か割り切ったりあきらめたりできる要素がほしいのだ。それがお金なのだろう。そのあたりは「今時の」姑なのかもしれない。
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