長引くコロナ禍で孤独感、だけど誰にも頼れない私
長く続くコロナ禍で、鬱状態になったり気分が不安定になったりする人が増えているという。誰も経験したことのないパンデミック下、どう対処すればいいかわからなくて当然だ。
在宅勤務が続いて
「昨年春から、ほとんど在宅勤務です。月に1回か2回ですね、出勤するのは」
そう言うのはアイリさん(34歳)だ。大学入学のために18歳で上京してから、ずっとひとりで暮らしてきた。ひとりには慣れているはずなのに、今回は気持ちが不安定で自分を制御できなくなりそうになることがあるという。
「仕事で1日1回は上司や同僚の顔を画面上で見ますし、電話で話もします。仕事のときは出社しているときと同じように淡々と対処するように心がけていますが、電話を切ったあととか、仕事が終わってPCでも誰とも接することのない時間になると、急に全身から力が抜けていきます」
本来なら昨年6月に、5年つきあった彼と結婚するはずだった。ところがコロナ禍となった春、彼と意見が合わず大げんか、あげく結婚はとりやめると宣言してしまったのだ。
「手洗いや消毒などが盛んに言われ始めたころで、私は神経質なほど気をつけていたのに彼はまったく気にしなかった。うちに来ても手も洗わずに私に触れようとするので、勘弁してよということになって。彼は何かにつけて杜撰なところがあるんです。彼は彼で、『こんな神経質な女と結婚してうまくいかないのではないか』と思ったみたい。言いたいことを言い合ったあげく、結婚はやめようということになりました」
それでも彼は、夏ころまでは連絡してきていた。だがその後、ぷっつりと連絡が途切れ、クリスマス時期に彼が結婚したと共通の友人から聞かされた。
「5年つきあっても結婚に至らなかったのに、そして私はずっとどうしてダメになったんだろうと考えていたのに、彼のほうは半年足らずで結婚しちゃうんだとショックを受けましたね。結婚できなかったのは、私に非があったからだとしか思えなくて」
心配した友人が「家に行こうか」と言ってくれたが、アイリさんは大丈夫だからと断った。コロナ禍ということもあるし、何より「自分に非があったとくよくよしている様子」を友人に見られたくなかったのだという。
弱みを見せられない
考えてみれば、人に弱みを見せるのは昔から苦手だったと彼女は言う。「彼にも友だちにも、ついつい強がって、私は大丈夫と言ってしまうタイプでした。でも本当はけっこううじうじ悩んでいるんです。今まではそういうことがあっても外に出て、友だちとカラオケに行ったり、スポーツジムで汗を流したりすれば、なんとか自分を保つことはできていました。でも今回は、そういうことができない。ひとりで部屋にいると、仕事も手につかず、集中できなくなる時間が多くなっています」
ネットでの会議のとき、発言すべきなのに黙り込んでしまい、上司や同僚から心配されることもあるという。会社の医務室で相談したほうがいいと言われているが、まだ足を向けられずにいる。
「人に相談しても解決するわけじゃないと思うんです。いえ、本当はわかっているんですよ。話してラクになることもあるし、誰かに聞いてもらうだけで救われることもあるだろうと。だけど私は自分の口から弱い言葉を吐いたら、それがまた自分にフィードバックされて弱い自分を認めざるを得なくなるのが怖い。そんなことをしたら、もう強い自分でいられなくなってしまう」
それでも今、彼女がいちばんつらいのは、孤独感にさいなまれることではないのだろうか。悩んだり弱くなったりしている自分を認める怖さと、このまま孤独感に押しつぶされそうになる不安と、どちらがより強いのだろう。
「どちらもつらい……。ただ、こんな状況でも、スキルを磨いている人はたくさんいるし、オンライン講座で勉強している友人もいる。すごいなと思います。同時に焦りがありますね。私は最低限の仕事だってろくにできずにいるのに」
こんな状況だからこそ、誰かとつながったほうがいい。たとえ対面できなくても、ネットで誰かとつながり、心の中を吐き出すだけで何かが変わるはずだ。弱い自分でもいいじゃないかと彼女に訴えかけてみる。弱さを認めることで、以前より強くなれるかもしれないのだから。
「仕事でスキルアップもできず、恋人もいなくなった。何もない自分を人にさらすのが怖い。人はみんな自分より幸せなんだろうなと思うんです」
アイリさんと同じように感じている人はたくさんいる。誰もが孤独と闘っているはずだ。