亀山早苗の恋愛コラム

37歳、克服できない「毒親」との日々…国立大に現役合格しても「あんたはダメだ」といった母

いくつになっても親とのつきあい方がわからない。そう感じている人は少なくない。自分が結婚してからも、そしてたとえ親がいなくなっても、どう気持ちを整理したらいいか悩んでいる人もいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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母からの虐待を克服したつもりだったけれど

虐待

いくつになっても親とのつきあい方がわからない。そう感じている人は少なくない。自分が結婚してからも、そしてたとえ親がいなくなっても、どう気持ちを整理したらいいか悩んでいる人もいる。

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母に悪口を言われ続けて

小さいころから「強烈な性格」の母親に逆らうことができなかったと言うのは、マリさん(37歳)だ。

「近所でも有名なズケズケものを言うおばちゃんだったんですよ、うちの母親。本人は『私は悪気がないのよー』って笑っているけど、言われたほうは傷つく。私も『あんたはグズだね』『どうしてこんなに頭が悪いんだろう、お父さんの血だね』と父の前で笑いながら言われていました。父も私も黙るしかない」

マリさんの母親のようなタイプは、口は悪いがあっけらかんとして世話好きというイメージがあるが、「うちの母はそうではなかった」と彼女は言う。

「悪く言いっぱなしでフォローなしなんですよ。私は褒められた記憶もまったくない。いつもグズだ、ダメな子だと言われ続けていたので、自分でも私はダメな女だと大人になっても思っていました」

彼女は国立大学に現役で合格している。ダメどころか勉強ができる子だったのだが、母親は「国立といってもねえ」と彼女が合格した大学を小バカにしていた。

「母の父、私からみれば祖父が名実ともにインテリだったんです。だから祖父とは違う大学はすべてダメ。もちろん父親が出た私立大学なんて『大学じゃない』とまで言っていました。母自身は大学を出てないんですけどね。そういう矛盾に彼女は気づいていない」

大学卒業後はすぐに家を出てアパートを借りた。母の悪口雑言から逃れてホッとしたが、社会に出てみると母がいかに「変な人」で「自分が虐待されてきたか」が客観的にわかるようになった。

「恨みましたね。ときどき母の声が脳裏によみがえるんです。『あんたはダメだから』って。でもそれに負けたら私は潰れてしまう。そう思って必死に仕事をしました」

同期の仲はよく、たびたび集まっていろいろなことを話した。彼女はあるとき思い切って、母のことを話してみた。

「みんなちゃんと聞いてくれて励ましてくれた。生まれて初めて味方を得たような気がしました」

なかでも特別に共感を示してくれた男性がいた。5年つきあって、彼女は彼と結婚した。

 

子どもができても母には会わせたくなくて

きちんとした結婚式は挙げず、パーティー形式にした。そしてマリさんは、両親に結婚することを報告しなかった。

「さすがに夫となった彼も、それはよくない、せめて事後報告でもいいから一緒に行こうと言ってくれたんですが、どうしてもその気になれなかった。私、就職してから一度も親に会ってなかったんです。私が家を出てからは母の標的は弟になったみたい。弟とはときどき連絡を取り合っていました。でもなぜか弟にも結婚するとは言えなかった」

自分の人生を親に邪魔されたくない。その思いがとにかく強かったとマリさんは振り返る。だが一方で、彼女の心には複雑な思いがある。

「母が私を本当に愛しているなら、私が家を出てから連絡くらい寄越すだろうと思っていたんです。初任給で私、父にはネクタイ、母にはスカーフ、そして花束を送ったんですよ。だけどふたりから何の連絡もなかった。悪口雑言をぶちまけられながら育って、でも一応感謝の気持ちを表したのに反応がなかった。あれがひどくショックでした。それで親とはいっさい連絡をとらないと決めたんです」

もしあのとき、親から「ありがとう」の連絡があれば、彼女の心もこれほどまでにこじれなかったに違いない。まさにそのとき、彼女の心の中で何かがキレてしまったのだろう。

せめて自分の家庭は温かいものにしたい。28歳で結婚した彼女は、そう願いながら家庭を築いてきた。

「今は7歳と5歳の子を、夫とふたり、忙しい思いをしながら育てています。でも私は子どもたちに言葉の暴力を浴びせたりはしない。言うこときかないからイラッとすることもありますけど、相手は子どもですから。この子たちのいいところをできる限り伸ばしてやりたい。そう思っています。気持ちはずっと安定していたんです。それなのに」

つい先日、会社にいきなり母親が訪ねてきたため、今、マリさんの気持ちは不安定になっている。

「ちょうど私が外回りから戻ったところで、ばったり会ってしまったんです。母は私にすがりつくように大声で『お父さんが病気で入院して、お金がないの、どうにかして』と。15年ぶりに会って、そういう態度をとるってどういうことなのか……。思わず周りを見渡してしまいました。だけど私、忙しいから帰ってと振り切ったんです」

母は彼女の家も電話番号も知らないから、会社に来るしかなかったのだろう。だが、会社の入り口での非常識な態度に、マリさんは腹立たしさを抑えきれなかった。

「どうしても母を助ける気にはなれない。母にひどいことを言われていた私を助けようともしなかった父にも私は愛情はありません。それが本音。でもそんな自分はひどいことをしているのではないかとも思ってしまう。子どものころに言われた悪口も最近、脳内でよみがえってきてつらい。いいかげん親の呪縛から逃れたいんです」

親子の縁は切れないと言われるが、自分の人生を犠牲にしてまで親に尽くす必要もないのではないか。今の自身の幸せな家庭にヒビが入らないようにしたい。マリさんの本音はそこにある。

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