食生活・栄養知識

プロテインの健康効果…美容・ダイエット・疲労回復効果の真偽

【管理栄養士が解説】栄養補助食品のプロテイン。プロテインとは要するに「たんぱく質」ですが、美容効果やダイエット効果を求める人や、コーヒーに入れるなどして疲労回復効果を期待する人も。プロテインのメリット、飲みすぎの危険性・注意点、栄養学的に見た実際の効果について解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

プロテインとは? 血・肉・エネルギー源になる「たんぱく質」

たんぱく質を多く含む食品

日本では「プロテイン」はサプリメントを指すことが多いですが、栄養学では「たんぱく質」のことです。さしずめ、プロテインとは「たんぱく質のサプリメント」といったところでしょうか。プロテインは体にどんな影響を与えているのでしょうか。

「プロテイン(protein)」は「たんぱく質」の英語表記で、栄養学でも「たんぱく質」のことを指します。一般的には「プロテイン」というと、プロテインパウダーなどの栄養補助食品を指す言葉として知られていると思いますが、これらの製品で摂っているのは、要は「たんぱく質」です。プロテイン=たんぱく質ですので、製品としてのプロテインにも、摂ることで血や肉になり、さらにはエネルギー源にもなるという栄養学的効果があります。

ちなみに、プロテインは「アミノ酸」がたくさんつながった構造をしています。そのため、「プロテイン」と「アミノ酸」は体内での役割はほぼ同じと考えて差し支えありません(ただし、たんぱく質を消化する酵素を生産する力が弱っている高齢者などは別です)。
 

たんぱく質の役割・プロテインを飲んではいけない人・注意点

たんぱく質は、人体に欠かせないものです。さまざまな栄養欠乏の中でも、たんぱく質の欠乏は、もっともよくない状態とされていますし、成長期の子どもは成長する(体の成分を増やす)ために、たんぱく質を利用します。しかし、たくさん摂ればよいかと言うと、必ずしもそうではありません。

なぜならば、たんぱく質はたくさんの栄養素のうちで唯一「窒素」を含んでいるからです。体内から出ていくとき、たんぱく質は「尿素」になります。体内の窒素量を一定に保つためにも、排出される尿素の量も一定になっていることが大切です。

たんぱく質を体内で利用する際、老廃物としてアンモニアが発生します。アンモニアは体にとって毒性があるため、尿素に分解して無毒化する必要があります。無毒化された尿素は腎臓で尿として排泄されます。腎臓が弱っている人はこの仕事を減らし、腎臓に負担をかけないようにすることが大切です。そのため、腎臓病の患者様は「低たんぱく質食」を指示されています。腎臓に負担がかかっていると医師から指摘を受けたことのある人は、たんぱく質(プロテイン)を摂りすぎないよう注意してください。

また、健康食品としてのプロテイン製品は、たんぱく質の多い食品からたんぱく質を抽出して作られることが多いです。特に大豆、牛乳が使われることが多いので、これらにアレルギーを持つ人は、購入する際に原材料をしっかり確認するようにしましょう。 
 

プロテインに美容効果やダイエット効果は期待できるのか 

粉のサプリメントを飲む女性

女性にもプロテインを飲む人は増えているようです。美容効果や老化予防効果、ダイエット効果などは、実際にあるのでしょうか?

たんぱく質が高齢者の褥瘡(じょくそう)治療にたいへん効果的であることは、栄養学の教科書レベルで知られている有名な話です。とくに、分岐鎖アミノ酸のBCAAは効果が高いと言われています。

また、スポーツの世界では、乳たんぱく質を摂取した陸上選手の成績が上がったというような報告もあります(『大学陸上長距離選手のコンディションや競技パフォーマンスに及ぼす 牛乳たんぱく質強化乳飲料摂取の影響』(PDF))。スポーツ選手の場合、総エネルギー摂取量も合わせて検討する必要がありますが、この報告では残念ながら乳たんぱく質を摂取していた間の選手の食事がわかりません。そのため、この報告だけで「乳たんぱく質はすごい!」とは言い切ることができません。

それでも実臨床で高齢者の褥瘡への効果を体験していると、多めに摂取することで皮膚や筋肉を作れる可能性があるのではないかと感じます。

ただし、これが美容目的や老化予防として利用できるかどうかと言われると、残念ながらまだ論文等での「エビデンス」は見あたりません。また、疲労回復のために、プロテインパウダーなどをコーヒーに入れて飲む方もいらっしゃるようです。疲労の内容が「体の疲れ」であれば、先述のスポーツ選手の例と同じで効果が期待できます。しかし「精神的な疲れ」の場合は、残念ですが実際には効力がなくても信じていることで効果を感じる「プラセボ効果」ではないかと思います(ただし、疲れは100%体の疲れ、100%精神的な疲れということはありませんので、なんとなくでも本人が「効いている」と感じられるのであればいいのかなと個人的には思ったりします)。しかし肉体疲労の場合でも、1日1~2杯程度で効果がなければ、追加することはせず、別の疲労回復方法を試してみてください。健康な人でもそれ以上の量を摂ると太ってしまうと思います。

ちなみに、体重減少効果としてのいわゆるダイエット効果があるかについてですが、そもそもプロテイン=エネルギー源ですので、太ることはあっても痩せることはありません。はっきり断言してしまって申し訳ないのですが、「太りました」という残念な思いをする人を減らすために、あえて断言しておきます。
 

手軽で便利な栄養補助食品・適正量を確認して上手に活用を

先述の通り、プロテインから出る老廃物は腎臓に負担をかけます。そのため、医師から腎臓が弱いと言われたことのある人はプロテインパウダーなどのサプリメントは飲んではいけません。アレルギーがある人は原材料も確認しましょう。
 
プロテインだけではありませんが、サプリメントなどの栄養補助食品は狙った栄養素を手軽に摂取できるため、人気があります。しかし「手軽さ」が裏目に出て、過剰摂取してしまうリスクがあることも事実です。サプリメントなどを利用する際には、必ず、「適正量」を確認し、それ以上を飲まないようにしましょう。またサプリメントなどは、特定の栄養素のみを抽出・濃縮した商品です。栄養素は体の中で単独で効果を発揮することはなく、さまざまな栄養素との組み合わせで作用します。

「プロテイン製品を飲んでいれば大丈夫」と過信せず、通常の食事の栄養バランスをきちんと考え、どうしても不足する分だけを基準を守って摂るようにしましょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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