亀山早苗の恋愛コラム

結婚18年、夫に「何の関心も持てない」自分に気づいてゾッとする

夫の死を願ったり祈ったり、恨みつらみをSNSに書き綴ってなんとかストレスを発散させようとしている女性たちが少なくない。だが、ふと気づいたら「夫に何の関心もないことに気づいた」という女性たちもいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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夫に何の関心ももてなくなった

夫がどうでもよくなった

世の中には夫の死を願ったり祈ったり、恨みつらみをSNSに書き綴ってなんとかストレスを発散させようとしている女性たちが少なくない。だが、結婚して時を経て、ふと気づいたら「夫に何の関心もないことに気づいた」という女性たちもいる。

 

外面のいい夫

結婚して18年、3歳年上の夫はいつでもどこでも、「やさしそうなダンナさんね」「いつも明るくて楽しい人よね」と言われると、イクミさん(45歳)は苦笑する。

「子どもたちには、夫の悪口を吹き込んだりはしていません。ただ、もう夫がどういう人間かは、子どもたちにもわかっていると思いますけどね。私の母は、いつでも父の悪口や愚痴を幼いころから私に吹き込んでいた。私はそれがすごくイヤだったので、私と夫、子どもたちと夫の関係は別物だと思っています」

イクミさんの夫は、誰もが知る有名大学を卒業後、有名企業に就職した。イクミさんは短大を出て同じ会社に入社。イクミさんが25歳のとき、夫となる彼と同じ部署になった。

「夫も私も、たぶん社内で結婚相手を見つけたほうが気が楽だと思っていたのかもしれない。あのころはまだ社内結婚が多かったんですよ。それなりにエリートが入ってくる会社だから、社内で相手を見つけて結婚していくというのが昔から自然だったんじゃないでしょうか。私もその自然さに乗っかったひとりですが」

2年ほどつきあって結婚し、彼女は退職。現在、17歳と14歳の子がいる。イクミさんは専業主婦として家庭を守り、下の子が小学校に上がってからはパートで働き始めた。“典型的な前時代的一家”だとイクミさんは笑った。

「48歳になる夫は、今も仕事三昧ですね。昨年春の緊急事態宣言のときは週3日出社くらいでしたが、あけてからは通常通りの勤務です。今回は週休3日ということにはなっていますが、土日以外は出社してますね。会社も業績悪化は免れないようで、社内のシステムを変えたり、いろいろ改革をはかっているようです。夫もすごく忙しいみたい」

夫は仕事の詳細を話さないし、イクミさんも聞かない。夫は外で働き、妻は家で子育てと家事。いつの間にかきっちりそんな分担ができていた。子どもたちが小さいころは、何とかもっと家庭に寄り添ってもらおうとしたこともある。だが、夫は妻や子どもと真剣に向き合おうとはしなかった。

「子育てが大変なときも、夫は手伝ってはくれなかった。ショックだったのは、私が40度近い熱を出して、それでもなんとか子どもたちに食べさせて寝かせたことがあるんです。私自身は食べもせずに伏せっていました。

すると帰宅した夫が『メシは?』と。ごはんは炊飯ジャーにあるし、冷凍庫に魚もあるから焼いて食べてと言ったら、『仕事して疲れて帰ってきて自分でやるのか』と呟きながら寝室を出て行った。なんだか悔しくて、無理やり起きて食事の支度をしましたよ。その間、夫がカップラーメンを食べようとしていたので、キッチンのシンクにそれをばっと流して、焼き魚と野菜炒めをバンッと前に置いてやりました。これでいいんでしょって怒鳴った記憶があります」

さすがに翌日、夫は「昨日はごめん」と謝った。イクミさんは「うん」と頷いたものの、心の中では夫に対して「一発レッドカード」を突きつけていた。そしてそこから夫との心の距離を気にしなくなったという。

 

友人の夫の浮気が発覚して

つい先日、短大時代の友人から「夫が浮気をしているみたい」と相談を受けた。子どもがいないせいか、友人夫婦はいつも一緒に仲良く出かけていた。

「彼女のうろたえ方が半端じゃなくて……。そんなに不安なら探偵事務所に素行調査を頼んでみればと言ったんですが、それはそれで怖くてできない、と。夫がもし自分以外の人を好きになったら生きていけないって電話で泣くんですよ。『イクミだって、ダンナさんが浮気をしたらって想像してみてよ』と彼女に言われました」

実際、想像してみたら、イクミさんは背筋が寒くなる思いがした。なぜなら、彼女は「もし夫が浮気をしたら」と考えても、感情が動かなかったからだ。

「怒ったり悲しんだりするのは、夫を好きだからですよね。でも私、そういう想像をしたときに養育費と慰謝料、いくらもらおうか。今のマンションから出ていくのはイヤだな、子どもたちを転校させたくないしって、お金と子どもの学校のことしか考えられなかった。自分自身が夫に関心をもっていないのはしかたがないとしても、子どもたちにとって父親がいなくなるのはどういうことかと考えることさえできなかった、というか、しなかったんですよね。夫であり父である彼を、私の中では完全排除しているのかもしれない」

夫は子どもたちに自分から寄り添おうとはしなかったが、かといって冷たいわけでもなかった。子どもたちが何かを習いたいといえばダメだとは言わなかった。

「お金は使うけど、気持ちは使わない。私からはそう見えたんですが、あれはあれで夫の愛情表現なのかもしれません。でもどんなに理屈で考えても、私は自分にとっても、子どもたちにとっても夫が必要不可欠な人だと思えなかった。それがショックでしたね」

夫への関心が薄れているのは自分でもわかっていたが、ここまで無関心でいられるとは思っていなかったようだ。

「でもね、無理やりもう一度好きになろうとか愛さなければと思うのも無理がある。私は子どもたちを守りながら成人させる。それが使命だと思うことにしました。その後のことはその後に考えます。子どもが成人したあと、夫とふたりで生きていくことは考えられないけど、そのときどういう状況になっているかはわかりませんし。だからせめてせっせとお金を貯めておこうとは思っています」

それでもつい結婚生活を振り返り、夫への愛だけではなく、情さえもすり減ったことを噛みしめている。そう言ったとき、イクミさんの表情が少しだけ歪んだ。
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