揺れる自分の心が怖い

コロナ禍恋愛

いまだ在宅勤務の人は少なくない。近所を散歩する機会が増え、近所の人の生態や町の風情に初めて気づかされたという声もある。そんな中、近所の男性に心揺れる女性もいる。

 

これは恋?

結婚して18年、高校生と中学生の子がいるノリコさん(44歳)は、ずっと共働きで仕事に家庭にと「突っ走ってきた」人生だった。夫は高校の同級生で、別の大学に通っている間もつかず離れず、友だち以上恋人未満のような関係だった。

「就職してからなぜかそれまでより親しくなって頻繁に会うようになったんです。社会人一年生でお互いに心のよりどころがほしかったのかもしれませんね。私たち、意外と気が合うじゃんって感じでした」

仕事を始めて4年目に結婚。当時でも早い結婚ではあったが、好きな人と早く結婚して落ち着きたいとふたりとも思ったそうだ。

「たぶんお互いに初めての大人の恋だったと思います」

これはこれで幸せなことだ。

全速力で突っ走ってきたノリコさんにとって、このコロナ禍で仕事の形態が変わったのは大きなできごとだった。

「春からほぼ在宅勤務で、私は今も週2日出社です。夫はライフラインに関わる仕事なので、コロナ禍でも働き方は変わらなかった。通勤や残業などの時間が減ったために、今まで見過ごしてきたものが見えてきたような気はしましたね」

近所をぶらぶらすることも増えた。犬を飼っているので、朝夕の散歩はノリコさんが行くことも多くなった。

「前はみんなで手分けしていたのですが、今、いちばん時間があるのが私なので。以前は散歩させるのが目的だから周りなど見ている余裕もなかったんですが、今は犬とゆっくり歩きながら、ここにこんな店があったのかとか、公園ができたんだとか、いろいろ発見があります。突っ走ってきて突然、立ち止まらざるを得なくなったためにモヤモヤしたものを抱えていたんですが、もうこうなったら今を楽しむしかない。そんなふうに考え直しました」

その散歩で出会ったのが、近所に住むタカオさんだ。前から顔見知りではあったが、お互いに犬を散歩させながら、たびたび会うようになった。

「何度か会って挨拶を交わして、犬の話をするようになって。そのうち公園のベンチで話すように。彼も在宅勤務の日が多くなったそうです。お互いの仕事や家庭の話などもしますね」

忙しいときとは違う別のストレスを抱えているこのコロナ禍で、ふたりはマスク越しに話すのが日課のようになっていった。

「あるとき、ふっと思ったんです。これは恋?って」

 

意識するとよけい変な行動をとってしまう

自分の気持ちに気づくと妙な自意識が出てきて、ノリコさんは自分の言動をコントロールできなくなっていった。

「夫としかつきあったことがないので、恋愛パターンがわかってないんですよ。しかも彼の気持ちなんてわからないわけだし、自分だけで好きな気持ちがどんどん盛り上がってしまう。かといって突然、散歩ルートを変えるのもおかしいし」

それまでと同じように公園で彼と話していても、突然、胸が苦しくなる。彼と目を合わせると泣きたい気分になっていく。まるで高校生のような恋だった。

「急に『好き』と言いたくなって、あわててベンチから立ち上がって去ってしまったこともありました。翌日会ったとき、『具合が悪くなったのかと心配したんですよ』と言われて涙目になったり。自分の中で恋心が風船みたいにふくれあがっていく。どうしたらいいかわかりませんでした」

恋愛に慣れていれば、その恋心を棚上げして彼との会話を楽しむとか、あるいは相手に探りを入れるとか、いろいろ方法があるのだろうが、とにかくノリコさんは自分の恋心にビックリしてしまったのだ。

「10月のはじめでした。知らないうちに自分の口から『あなたが好き』という言葉が飛び出してしまったんです。本当に、言おうと思って言ったわけじゃなくて。それに自分がショックを受けて、そのまま走って帰ってきました」

それから数日は散歩の時間を変えたが、彼がどう思っているのかは気になってたまらない。そこで以前の時間とルートに戻すと、彼は公園でひとりぽつんと座っていた。

「私を見るとにっこり笑って立ち上がって。その笑顔がまた心にぐんぐん入り込んできました。私、本当にこの人が好きなんだと思った。家庭があるとかないとか子どもがいるとかいないとか関係ない。私個人としてこの人が好き。素直にそう思いました」

だから彼とつきあいたいと思ったわけではなかった。好きだという気持ちを自分で確認しただけ。それだけでよかった。

「彼の態度が変わらなかったんですよ。何も聞かず、何もなかったかのように前と変わらず話してくれた。それはうれしかったしありがたかった。でも数日たつと、その彼の反応が物足りなくて、ちょっとモヤモヤしてきたんですよね」

好意を伝えたら、それに対する見返りがほしい。そう感じるのは不思議ではない。ただ、そこでノリコさんがさらなるプッシュをしたら、今までのような穏やかな関係は保てなくなる。

「たぶん彼はそう思っているんでしょうね。わかっているんです、私も。何かコトを起こしてもいいような状況ではない。近所だからバレたら大変なことになる。このまま静かにしているしかないんですよね」

最近、連絡先を交換したが、どちらからもメッセージなどは送っていない。どう動くのか動かないのか、どちらがどういう行動に出るのか。ノリコさんは自分をとどめることができるのか。彼女自身、自分の中で大きくなっている恋心に揺れ惑っている。


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