亀山早苗の恋愛コラム

7年間の職場不倫を経験して…本当に大切な存在を失った40歳の後悔

恋愛とは楽しいけれど、一方で苦しくてつらいもの……。若いときに「つらくて苦しい恋愛」をした人は、そのときのある種の充実感や満足感が心に残っていて、それこそが恋と思いがちなのかもしれない。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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「気楽」な相手は恋愛対象じゃないと思い込んでいた……

恋はジェットコースター

恋愛とは楽しいけれど、一方で苦しくてつらいもの。そうでなければ大恋愛とはいえず、ただの友情ではないか。そう思っている人も少なからずいるようだ。若いときに「つらくて苦しい恋愛」をした人は、そのときのある種の充実感や満足感が心に残っていて、それこそが恋と思いがちなのかもしれない。

 

誰にも言えないつらい恋

20代前半で職場の上司と7年間の不倫恋愛をしていたと話してくれたのは、ワカナさん(40歳)だ。

「17歳離れていましたから、知り合ったのは新入社員だった私が23歳、彼が40歳。今の私と同じですね。あのころの私から見たら、上司である彼は本当に大人でした」

既婚であることはわかっていた。11歳と8歳の子どもがいることも知っていた。彼は妻とうまくいっていないなどという既婚男性特有の口説き方はしなかった。

「第1希望の大学に合格したのがわかったその日に父が亡くなったんです。体調が悪いと病院に行ったら手遅れでした。余命1年だったそうですが、当時は母がその話を私にしてくれなかったので、私は元気になると思い込んでいました。父はいつも私の味方だった。高校でトランペットをやりたいと言ったときも、続くかどうかわからないのに買ってくれました。父を喜ばせたくて一生懸命練習しましたね。大学受験も応援してくれていたのに……。耳元で合格したよって叫んだら父の目からつーっと涙がひとつぶこぼれて」

ワカナさんはそう言って涙ぐむ。父への思いは強い。端的につなげていいかどうかわからないが、彼女が上司に惹かれたのは、彼に父の面影を見たせいもあるそうだ。

「顔かたちが似ているわけじゃないんですが、一緒に食事をしているときの仕草とかしてくれることが似ているんです。料理を取り分けてくれたり、魚の骨をとってくれたり。この人、家でもいい父親なんだろうなと思っていました」

その気持ちが高じて、彼女は女としての自分を彼にぶつけた。彼はとまどっていたが、彼女の気持ちを無碍にするわけにもいかなかったようだ。ただし、自分は離婚しない、きみのことは大好きだけど1回だけにしたほうがいいと言われた。

「私は納得できなかった。家族に迷惑をかけるようなことはしないから、私の恋する情熱が冷めるまで一緒にいてほしいと懇願したんです。彼は『オレだってきみのことが好きなんだよ、だけどどうにもならない』とつらそうな顔をしていました」

そこからふたりの関係が始まった。会社では完璧な上司と部下として、そしてふたりきりのときは甘え合った。彼は決してワカナさんの部屋には泊まらなかったが、彼女はそれでも幸せだった。

「誰にも知られない関係でもいい、私は彼が大好き。天に誓ってそう言えました。だけど7年つきあったあげく、とうとう奥さんにバレかかったみたいです」

彼から打ち明けられ、「それでもつきあっていきたい」と言う彼を制したのはワカナさんだった。いつかこんな日が来る。そのときには潔く別れる。そう決めていたのだという。

 

友だちのような彼ができたけど

上司を思って夜、眠れなかったことが多々あった。彼が他の女子社員と話していると嫉妬の念がわきおこった。仕事の延長で彼が他の会社の女性とふたりきりで食事をしたと聞いたときは体が震えた。彼にかかわることすべてが、彼女の感情をジェットコースターのように揺さぶった。

「それが恋だと思っていました」

彼と別れて2年ほどたったころ、スポーツジムで顔なじみになった同い年の男性と帰りに食事をするようになった。

「びっくりするくらい何でも話せる男性なんです。感覚が女性的というか共感能力が高いんですよね。私からすると女友だちみたいな人」

彼はつきあってほしいとも言わなかったし、色気のある話もしなかった。過去の恋人関係などは話してくれたが、ほとんどが笑ってオチをつけていた。

「恋愛したくないのと聞いたことはあるんです。すると、『オレにふさわしい女性が見つからないんだよ。なんちゃって、オレ、高嶺の花にばかり恋しちゃうからなあ』って。男くさくないから、女性からみると話し相手にはすごくいいんだけど、恋はしづらいのかもしれません」

ふたりはどんどん仲良くなり、週末はスポーツジムや映画、イベントなどに一緒に行った。夜遅くまで居酒屋で語り合い、そのまま朝を迎えたこともある。

「でもつきあっている感じはなかったんです。3年くらいそのままの関係が続いたところで、彼が突然、『オレ、ワカナのこと本気で好きだってわかってた?』と言い出して。彼は結婚はおろか恋愛にも欲求がないと思っていたんです。あるいは私の知らないところでつきあっている人がいるのかなとも思ってたので、彼の言葉にはびっくりしました」

完全に気を許した親戚のような気分でいたそう。改めて彼を見つめ直してみても、どうしても恋愛感情はわいてこなかった。

「ごめんねって謝って。でも友だちでいたいと言いました。彼も納得してくれたんですが、その後、転勤になって今は遠方にいます。そして1年前にその地で結婚しました。私、そこで初めて気づいたんですよ。私にとって彼がどれほど大事な人だったか。恋愛も結婚も、もしかしたら燃えるような情熱が重要なのではなく、いちばんしゃべりたい人なのではないかと気づきました」

感情の振れ幅が大きくなる恋愛もあれば、静かに相手を受け入れる恋愛もある。燃えるような恋ではなくても、「とにかく彼と話したい」と毎日思えるような関係もあるということなのだろう。

「彼を失ったのは痛恨ですね。私が人として未熟だった。後悔しても始まらないけど……」

今度こそ……とワカナさんは次回の出会いに全力を傾けたいと言ったが、口調には力がない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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