冷却期間をおいていた夫と少し距離が縮まって

夫婦の冷却期間

結婚するときは、一生一緒にいたいと思ったものの、そこからの長い生活の間にはさまざまなことがある。お互いに幻滅したら距離を置いてみることも必要かもしれない。そうすることで新たに見えてくるものがあるようだ。

 

いつしか夫と不仲に

結婚して17年、15歳と12歳の子がいるアオイさん(45歳)。3歳年上の夫とは友だちの紹介で知り合い、本人いわく「大恋愛」で結婚、共働きでがんばってきた。

「それなのに下の子が小学校に上がってホッとしたころから、なんとなく夫とすれ違うようになってしまったんです。ちょうど夫が非常に多忙な部署に異動したこともあって、あまり家庭に時間を割けなくなった時期でもありますね。最初は私も文句を言っていたのですが、夫が本当に疲れているのを見て何も言えなくなっていきました」

家事も子育ても仕事も、アオイさんの肩にのしかかる。夫とは会話が減り、休日でも夫は家族に溶け込もうとしなかった。

「子どもたちが話しかければ答えてはいたようです。ただ、年に一度、夏休みには家族旅行をしていましたが、旅先で夫はほとんど寝てばかりでしたね。いつの間にか溝ができてしまって、夫としてもどうやって家族に接したらいいのかわからなくなっていたのかもしれません」

アオイさんも積極的には、夫の居場所を作ろうとしなかったという。彼女自身も疲れていたし、夫は大人なのだから親として夫としての責任を自ら果たそうとすべく変わってくれるのを待っていた面もある。

「そうこうしているうちに、ますます心の距離が離れていきました。2年ほど前、夫の母親が亡くなったんです。義母はうちからバスで20分くらいのところでひとり暮らしをしていました。10年ほど前に義父が亡くなったとき、夫は引き取って同居したかったようですが、私は気乗りがしなかった。義母も私と暮らすことに躊躇したんだと思います。そこで自宅を売って小さなマンションを購入、ひとり暮らしを始めたんです」

そして夫は母亡きあと、そのマンションに泊まることが多くなった。週に一度が二度になり、少しずつ、夫の身の回りのものも運んでいったようだ。

 

在宅勤務が続いて

アオイさんは何度か、「この先、夫婦関係をどうするつもりなのか」と夫に尋ねた。だが夫は、「今は忙しいから」と逃げ回る。少なくとも、離婚の意志はないのだと彼女は受け止めていた。

「あんなに大恋愛で結婚したのに、自分も夫も情熱が冷めている。それが悲しかったんですが、この時期を乗りこえたらまたいいことがあるのか、あるいは完全に別れる方向にいくのか、もうなるようにしかならないと少しずつ覚悟を決めていきました」

昨年の暮れころには、自宅には週に一度ほどしか戻ってこなくなった。家庭は子どもたちとアオイさん、3人の世界ができあがっていた。

「お正月も元旦だけですよ、夫が家にいたのは。『仕事があるから』ってマンションに戻っていきました。女性がいるのかなという気もして、2日には私、初めて夫のマンションに行ってみたんです。すると誰もいなかった。けっこうきちんと暮らしていましたね。夫が作ってくれたパスタを食べて帰ってきました。子どものことは話したけど、お互いの心の内を吐露するようなことはなくて」

そんなところへ新型コロナウイルスの感染拡大である。3月半ばになると、夫から在宅勤務になったと連絡があった。アオイさんもまた同時期に在宅ワークとなっている。

「お互いになんとなく気になったんでしょうね、それからは安否確認を毎日するようになりました。あるとき、メッセージを送っても返信がなく、電話にもでないことがあったんです。ひとりで倒れているんじゃないかと心配になって、すぐマンションに行ってみました。会社の同僚とリモート飲み会をしていて飲み過ぎ、眠り続けていただけだったようです。『そんなに心配しなくて大丈夫だよ』という夫の声がとても温かくて、思わず顔を凝視しちゃいました」

帰りの道で、あんなふうに温かい声をかけあうことを忘れていたなあとアオイさんは感じ、そのことを夫にメッセージしてみた。夫からは「オレもそう思った。もっとアオイと話したい」と返信があった。アオイさんはそれを見て、夫のマンションへとって返したという。

「そこから少し夫との距離感が変わりました。今月から夫は週4日、私は週3日で出勤となったんですが、毎日連絡を取り合って、私の帰宅が遅い場合は夫が自宅で夕食を作ってくれることも。子どもたちとの会話も増えていますね」

だがアオイさんは、あえて「何を考えているの、どうしたの」とは言わないでいる。夫の心境に変化があったのは確かだが、必要があれば夫が自らいつか話すだろうと思うからだ。

「お互いの本心をつつきあうようなことはしなくてもいいかな、と。離れている間に、私はそんなふうに考えるようになったんです」

“家族の形はこうあるべき”とあえて決めなくてもいい。自然に、なるようにしかならない。お互いに日々変化していくのだから、とアオイさんはドンと構えることにしたようだ。
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