夫に「離婚だ!」と宣言されて
緊急事態宣言が解かれても、まだまだ先行きが不安で、多くの人は浮かれて外に出て行きたくはないだろう。6月からは仕事上、平常に戻るところも多いようだが。
学校も会社も始まるとホッとしたとき
「6月から子どもたちは学校へ、夫は会社へと一応、ようやく平常の生活に戻るとホッとしていました。あとは私のパート先がどうなるか、家計は厳しいなどと考えていたとき、夫が突然、『話があるんだけど』と言い出したんです。どうしたのと聞いたら、『離婚したい』って。はあ?という感じでした」
リサさん(40歳)は、驚きのあまり二の句が継げなかったという。結婚して10年、8歳と6歳の子がいるのに、まして今まで離婚のりの字も会話に出たことがなかったのに、なぜなのか、そしてどうして今なのか。
「すると夫は、自粛生活の間に私とのあまりに大きな価値観や道徳観の違いを覚えて、この先、一緒にやっていける自信がなくなったと言うんです」
具体的には、夫が在宅で仕事をしているのに気遣いがなさすぎること、子どもたちに言うことに一貫性がなさすぎること、すぐ感情的になること、テレビを観ながらタレントへの悪口雑言が聞くに堪えないことなどを挙げた。
「今まで夫は夜遅くならないと帰宅しなかったし、週末だって自分だけゴルフも仕事のうちと言いながら出かけていて、家のことも子どものことも私に任せきりにしてきたのに、今になってそういうことを言うなんてすごいなと思いました」
リサさんにも夫への不満はあったものの、それを言ったら家庭が壊れるかもしれないと思うからこそ黙ってがんばってきた。
「そういう私の気持ちや努力はいっさい、認めないわけねと言ってやりました」
夫婦の間に不穏な空気が流れた。
一緒にいる時間が長すぎたのか
それ以来、ほぼ1週間ほどリサさんは夫とほとんど口をきいていない。用があるときはLINEなどのメッセージ機能を使っている。夫は「ですます調」で返事をする。すでに「他人」だと言われているようで腹が立つ。「離婚が本気なのか、いつする気なのか、話し合う余地があるのかなど、聞きたいことはたくさんあるんです。だけど私は取り合わないつもり。だって子どもたちの学費のことを考えたら、離婚という選択肢はない。学費は絶対に出す、今まで通りこのマンションに住める、そして生活費もくれるというなら離婚してもいいですけどね」
リサさんにとって、夫の存在はどういうものなのだろうか。
「結婚当初はラブラブでしたよ。でも子どもができてから、夫は家庭的ではなく仕事人間なんだとわかった。とはいえ、私が専業主婦でいられるほどの給料は稼げない。完璧なATMにはなってもらえなかった。だからパートに出ました。子どものことは大事なときだけ出てきて点数稼ぎをするような、“昭和のパパ”という感じですね。でもそれも役割だからしかたないかなと思ってた。私は夫をずっと許容してきたわけですよ。この2カ月近く、すごく長い時間、一緒にいて、夫が私を許容できないというなら、生活は今まで通り補償してくれないと離婚はできません」
今まで見たことのない、「自分のいない時間帯の母と子だけの家庭」を、夫は客観的に見てショックを受けたのかもしれない。それは今まで家庭を顧みてこなかった証拠でもある。
「いきなり“離婚”という強烈な言葉を突きつけたことにも違和感があるんです。そうすれば妻はひれ伏して謝るだろうと思っているのではないか、と。夫はあまり強権的な人ではないと思っていたけど、本当のところはわかりませんから。そういえば、私自身も、夫ってこういう人だっけと感じたことが何度もありますよ、この期間」
夫婦は互いに知らなかった面を、長い時間一緒にいることで発見してしまったのかもしれない。それなら、そこから再スタートはできないのだろうか。
「子どもたちの学校や保育園が再開するときに夫婦で争っている場合じゃないので、しばらく時間がたって、夫がまた何か言ってきたらそのときに対処しようと思っています。こうなったら根比べになるでしょうね」
リサさんは冷静だった。その冷静さを、もしかしたら夫は畏れているのかもしれない。