夫にウンザリする自分に嫌悪感が

夫を支えるのがつらい

1カ月半以上にわたる緊急事態がようやく解除された。だが、これからはコロナ以前とまったく同じ生活に戻れるわけではない。そして夫婦の関係も以前と同じようにはいかないと考えている女性がいる。

 

ふさぎこむ夫にイラッとして

「いつのころからか、夫がふさぎ込むようになったんですよね」

マサエさん(44歳)はそう言う。学生時代の2年先輩だった男性と20代後半で再会、結婚して15年たつ。中学生と小学生の娘がいる。

「夫も私も3月末から在宅で仕事をするようになりました。夫は週に2度は出社していましたが、私は2週間に1度ほど。最初のうちは私はキッチン、夫はリビングで仕事をし、10時と3時には家族でお茶して、それなりにステイホームを楽しんでいたんです。そのうち、上の娘がクッキーなども作ってくれるようになって」

夫はもともとまじめな人で口数も多くはない。決して「おもしろい人」ではないが、やさしい夫、やさしい父親ではあった。

「娘が作ったクッキーをおいしいよと食べていましたね」

ところがいつからか、夫は寝室で仕事をするようになった。聞かれたくない電話などがあるのだろうとマサエさんは思っていたが、どうやら夫は家族との接触を避けようとしていたのだ。

「娘が作ったお菓子も、黙って食べていました。食欲は落ちてないと思っていたけど、もしかしたら落ちていたのかもしれません。どうしても私は娘たちの精神状態が気になって、夫にまで目を配れなかった」

大人だから大丈夫だろう、自分だってがんばっているのだから夫にもがんばってほしいと内心、思っていたとマサエさんは言う。

「なんとなくふさぎ込んでいるのはわかりました。だけど、広くもないマンションで家族がひとり沈んでいるのって空気が悪くなるんですよね。それもあって、私は特に夫に声をかけることもしませんでした。悩みがあるなら私には話してくれるはずだとも思っていたし」

正直言うと、ふさぎ込む夫にイラッとしていたと彼女はつぶやいた。

 

「しっかりして」と言いたいけれど

5月に入ると、夫は起きるのが極端に遅くなった。起きてもリビングに出てこない。寝室を覗くとベッドにぼうっと座っていることもあった。

「近くに心療内科のクリニックがあるので、あわてて連れていきました。夫が薬に頼りたくないというので、今は睡眠導入剤だけもらって週に2度ほど先生に話を聞いてもらっているようです。特に病名がついたわけでもありませんが、状態としてはうつ状態だと医師から言われています」

昼間は一応、仕事をしているが、5月に入ってからは規定の日に出社できずにいる。マサエさんが上司に正直にうつ状態であることを報告したほうがいいと言ったが、夫は何も言っていないようだ。

「ちょっと体調が悪いとかなんとか言っているんだと思います。夫の会社は6月になってから在宅ワークを見直すということになっているので、この先、出社日は増えていくと思うんですよね」

マサエさんがイライラするのは、夫自身が今の状態をどう思っているのかがわからないこと。ひとりで寝室にこもる時間が増えると、どんどん声もかけにくくなっていく。

「娘たちもおとうさん、どうしたんだろうねと言うし。私も本人が何も言わないから、どう接したらいいのかわからないし。医師からは少し様子を見ながら、ごく普通に接してほしいと言われていますが、なかなかそうもいかない。ついに、夜中に『うつならうつでいいよ。病気なんだから治せばいい。それよりあなたがどうしたいのか、私にはまったくわからない。何かできることがあるなら言って』と言ってみたんです。すると夫は『ごめん』と」

夫の周りの空気が重い。きっと夫は苦しんでいるのだと思うと彼女は言う。だが、その苦しさを伝えてくれないことに歯がゆさがある。信用してくれていないのかとイラつくこともあるのだそうだ。

「イラッとしては、こんなことでイライラする自分は妻として失格だ、家族としてあまりに冷たいと自己嫌悪に陥るんです。そうなると家族中がおかしくなりますから、なるべく夫のことは気にせず、娘たちと少しでも楽しい時間を過ごすようにしています。やっぱり基本的に冷たいんですよね、私」

これから少し生活が変われば、夫の状態も変わるかもしれない。あるいは専門医にかかって治療方針をたてることができるかもしれない。今の時点では、マサエさんが共倒れにならないようにしていくしかないのではないだろうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。