話し合いにすらならなかった、夫のこと愛してなかった!
家にこもりがちな日々、家族で顔を合わせる時間が増えている。もう一度、夫婦関係を見直して円満になったという人たちがいる一方、話し合ったら「離婚が見えてきた」というカップルも。
口げんかが増えて
働き方が一気に変わった現在、「最初はとにかく夫との口げんかが増えました」というのは、サトミさん(44歳)。結婚15年、中学生と小学生の子がいる。
「夫は週に1度の出社、私はパートで働いていましたが自宅待機。私の収入がいっさいなくなってしまったので不安もあり、夫は夫で家での仕事が捗らないことでイライラが募っていたんだと思います」
些細なことでもイライラして、夫婦間はギスギスしていく。子どもたちは敏感にそれを感じ取り、部屋にひきこもる。会話がなくなり、不穏な空気だけが自宅内を支配していた。
「このままではいけない。そう思っても、夫に優しい言葉をかけられない。夫も体中から拒絶感を出している感じだったし(笑)」
そんなとき、中学生の娘に言われた。
「おかあさん、家族って何?」
そのひと言で、サトミさんはハッとしたという。これまで15年、夫婦で築き上げてきた家族を、今、大事にしなくてどうするのか、と。
「夫と私がきちんと意思疎通を図らないと子どもたちも不安になるだけ。お互いに時間があるのだから、きちんと話し合わなければいけないと思いました」
とはいえ、最初は今までの結婚生活を振り返ってみようという程度の軽い気持ちだった。
だんだん恨みが出てきて
ある晩、夫に「このままじゃマズイよね、うちの家族」と話しかけてみた。夫はうん、と言っただけだ。「こういう状態だからこそ円満に暮らしていかないといけないと思うの。そのためにどうしたらいいか、何が必要か考えてみようよと言ったら、夫は『オレは仕事が捗るようにしてもらえば、あとは文句ない』と。いや、そういうことじゃないんだよと私。家族としてどうやってまとまっていくべきかを話し合いたいのに、夫は自分のことしか考えてない。『オレの稼ぎでやっていくしかないんだから』とさらに夫。これに私がブチ切れました。私だって働きたいけど、それができないから困っている。申し訳ないとも思ってる。そこを責められると何も言えなくなるでしょって」
すると夫は、「だったら何も言わなければいい」とひと言。家族をまとめたい、そのために夫婦が率先してコミュニケーションを図りたいというサトミさんの思惑は、完全に無視された。
「あなたは私のこと、家族のことをどう思っているのか、と究極のことを言うしかなくなりました。そうしたら夫は、『どう思うも何もない』って。大事な存在だとひと言、ほしかったんですよね」
サトミさんの心の中で何かが切れた。苦難に際しても家族で乗り切っていきたいと思う気持ちが、夫にはまったくなかったのだと感じたからだ。
「この15年、何だったんだろうと、また究極のことを言ってしまいました。夫は何も言わなかった。夫にとってはいてもいなくてもいい存在だったのか、はたまた私と結婚したことを後悔しているのか……。聞いてみたいと思ったとき、『私はあなたと結婚したことを後悔してるわ』と言ってしまったんです。そんなこと言うつもりじゃなかったんだけど。夫はフッと鼻で笑って、そこだけは一致してるみたいだなって」
互いを言葉で斬り合うようなつらい事態になっていった。
サトミさんはそれ以来、夫と話すのを完全にやめた。子どもたちの前でも取り繕わなくなった。上の娘には、「おとうさんとは意見が合わないから、ケンカを避けるためにもあまり話さないけど気にしないように」と伝えたという。
「離婚が視野に入ってきました。そのためにはとにかく経済力をつけなければ。早速、独身時代に仕事でやっていたことを再勉強し始めました。事態が収束したら、動き始めるつもりです」
どうしてこういうことになってしまったのだろうという思いはある。だが、この期間で、以前からのわだかまりが表面化したともいえる。
「今さらですけど、私は結婚当初から夫のことをすごく好きだったわけでも愛していたわけでもなかったような気がします。夫のほうもそうなんでしょう。なんとなくつきあってなんとなく結婚してしまった。そのツケが今、回ってきたのかもしれません」
多くの夫婦が今、同じ危機感を抱いているのかもしれない。