時間があるので勉強していると夫は……

モラ夫

在宅で仕事をすることが増えている今、中には派遣切りで仕事を失った人もいる。自宅に家族がずっと一緒にいると今まで見えなかったことが見えてくるようだ。

 

仕事を失って勉強を始めたら

「派遣で仕事をしていたんですが、ものの見事に切られました。今のところ他にも仕事がなくて家にいるしかない状態なんです」

そう言うのはレイコさん(43歳)。結婚して13年、ふたりの小学生の子がいる。夫は現在は週に2度の出社に変わり、家族で家にいることが多くなった。

「狭いマンションでずっと顔をつきあわせていると、やっぱりストレスがたまるんですよね。夫が静かな環境で仕事をしたいというから、最初のうちは子どもを連れて散歩に出たり図書館に行ったりしていたんですが、もう図書館も閉鎖されてしまって」

そんな中、レイコさんは「せっかく時間があるのだから、今までできなかったことをしよう」と気持ちを切り替えた。

「学生時代はけっこう英語が好きだったんです。もう一度、英語を勉強し直そう、余力があれば別の言語もやってみたい。そう思って、まずはラジオで英語の勉強を始めました。英語関係のテキストをネットで購入、さらにTOEICを目指すのもいいかもとそれ用の参考書と問題集を買いました。全部合わせても数千円、これで毎日せっせと勉強を始めたんです」

親が勉強している姿を見て、子どもたちは何かを感じたのだろうか。学校から出されたプリントなどを何も言わなくてもやるようになっていく。

「これは思わぬ副産物でした。だから朝食をとったあとは、さて、おかあさんは勉強しようかなと言うんです。洗濯機を回しながらですけどね。すると子どもたちも自室に入っていく。夫がリビングを占領しているので、私も子どもの部屋で勉強しています」

1日中、ほぼ家にいるのだから昼食は必然的に軽いものになる。だが夫がクレームをつけるようになった。

「お昼は麺類とかおにぎりとか、簡単なものにしていたんです。そうしたら夫が『もうちょっと栄養のあるものはないのか』と。朝晩、わりとしっかり食べているし、麺類だって卵や野菜を使ったりしているんですけどね。本来なら気分転換と称して、昼食くらい夫が作ってくれてもいいと私は思うんですが」

家にいれば3食出てくるのが当たり前だと夫は思っているのだろう。自分が職を失って経済的にも不安が募る今、それほど食費を増やせないとレイコさんは言った。すると夫は血相を変えたという。

「じゃあ言うけど、と夫が言い始めて。『何のために英語なんて勉強してるの? それで仕事が見つかるわけ?』と。もちろん仕事に直結するとは思わないけど、これから長い期間、勉強していけば何かいいことがあるかもしれない。始めてみて思ったんですよ、勉強するって楽しい、と。それを言ったら、『仕事もないくせに何が勉強だよ。ちゃんと飯作ってから言えよな』って。傷つきました」

働かざる者食うべからず。夫がそう言っているように聞こえたとレイコさんは言う。

 

夫も社会の犠牲者?

これぞモラハラという発言なのだが、レイコさんは傷ついたものの、「夫の発言に傷ついてはいけない」とすぐに気持ちを切り替えようとがんばった。

「夫も社会の犠牲者なのかもしれない、と。中間管理職になって下と上の板挟み。以前、夫の愚痴を聞いたときに、この人はどこを見て仕事をしてるんだろうと思ったことがあるんです。言えなかったけど。顧客のほうを向いていないやり方は、目先の出世はあるかもしれないけど結局、仕事人としていい将来はないんじゃないか、と。だから私が勉強していることを否定するのも当然かもしれません。目先の収入に結びつかないから、夫からすればムダなことなんでしょう」

レイコさんが派遣切りにあったのは不幸で不運だが、決して彼女が悪いわけではない。夫だって雇われている身なのに、どうしてそこに想像力が及ばないのだろう。

「まあ、しょうがないですよね、そういう人だから。それ以来、夫には昼食に一品、よけいにつけることにしました。あからさまにね。夫はさすがに居心地が悪そうで、先日などは息子にその一品を分けようとして断られていました。もちろん、息子にこっそり知恵をつけたのは私ですが(笑)」

今のうちにがんばって勉強し、将来の目標に向かってスキルを身につけていくとレイコさんは力強く話す。

「将来の目標? もちろん8年後の離婚です」

含み笑いをしつつ、彼女の声は真剣だった。


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