しかし、それとは反対に、6月中旬から7月にかけて、箱根登山鉄道の車内から観賞できるあじさいは、しっとりと雨に濡れていた方が、情緒があって引き立つ。車内であれば傘をさす必要もなく、エアコンの効いた心地良い空間からあじさいを眺められるのだ。
今回は雨の日にこそ、楽しみを増す鉄道旅、箱根登山鉄道を紹介しよう。
窓の大きいアレグラ号がお気に入り
箱根登山鉄道は、小田原と強羅を結ぶ路線である。ただし、小田原~箱根湯本間は、小田急線の延長みたいなもので、登山電車が走るのは、箱根湯本~強羅間だ。電車は、昼間なら15~20分待てば、次の電車がやってくる。
もっとも、旧型から最新型までさまざまな車両が走っていて、どれに当たるかは分からない。車内もすべてロングシートからボックス席までさまざまだ。あじさいをじっくり眺めるなら、ボックス席の窓側が最適なのは言うまでもない。私としては、鉄道ファンに人気の旧型車両よりも、窓の大きく車窓が見やすいアレグラ号がお気に入りだ。
3度のスイッチバックで半分は進行方向が逆?
人気の登山電車なので、発車間際の乗車では座れないこともある。ぜひ座りたい、それもボックス席に、という人に便利なのが、全車指定の「夜のあじさい号」だ。車両は最新型の「アレグラ号」。大きなガラス窓から眺めるライトアップされた線路際のあじさいは幻想的ですらある。ボックス席は、向かい合わせの席なので、進行方向の反対側にあたってしまうこともあろう。普通の列車であれば、はずれ席かもしれないが、箱根登山電車では途中にスイッチバックが3ヶ所あるのを知っていれば、はずれ席ではないことが分かる。
つまり、箱根湯本で乗ったときは、反対向きでも、出山信号場で進行方向がかわり、さらに大平台駅で元の向きに戻る。しかし、次の上大平台信号場で、またまた向きが変わり、正方向のまま終点の強羅まで行く。結局、どこに座ろうと、半分は進行方向と逆の向きになるのだ。
箱根登山鉄道の”その先”を楽しむ
「夜のあじさい号」は、強羅行きの場合、途中の宮ノ下駅でしばらく停車するので、下車して線路際に咲いていてライトアップされたあじさいを間近で眺めることができる。小雨なら傘をささなくても大丈夫、夜景の撮影に夢中になっていると多少の雨は気にならないであろう。特に鉄道ファンというわけではない妻も、毎年のようにあじさいの時期に登山電車に乗りに行きたいという。乗車ついでに宮ノ下駅に隣接した足湯のあるカフェでビールを飲みながら待ち時間を過ごすのも我が家の定番コースとなっている。
ロマンスカーで日帰り往復もよし、箱根の温泉宿で1泊するもよし。箱根のあじさい電車は気軽に楽しめる人気の乗り物なのだ。ついでに芦ノ湖まで足を延ばすのなら、ケーブルカーや海賊船乗車など意外に値段がかさむので箱根フリーパスがおトクである。
DATA
箱根登山鉄道
区間:小田原~強羅
乗車時間:約60分(小田原~強羅)