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ハスクバーナSVARTPILEN401の試乗インプレ

オフロードの競技車両を販売しているイメージが強いハスクバーナ(Husqvarna)がリリースしたロードバイクSVARTPILEN401。超個性的な見た目ですが、どのような走りを楽しむことができるのでしょうか? 都内の通勤で1週間試乗したインプレッションをお届けします。

相京 雅行

執筆者:相京 雅行

バイクガイド

ハスクバーナは公道を走れるバイクを売っている?

スヴァルトピレン401 フロントビュー

ハスクバーナのスヴァルトピレン401のフロントビュー

試乗インプレッションを書いているライターとして不勉強だ、と怒られそうですが……ハスクバーナ(Husqvarna)と言えば、公道を走ることができるバイクよりも、競技用オフロードバイクを多く販売しているバイクメーカーという印象がありました。
 
実際現在ハスクバーナのホームページには、25台のバイクがラインナップされていますが、そのうち公道を走ることが出来るバイクは、なんと半分以下の11台。競技用バイクのイメージが強いのも頷けるラインナップと言えます。また公道走行可能な701SUPERMOTOと701ENDUROは、シート高が非常に高く乗り手を選ぶため、万人に注目されるモデルではありませんでした。
 
ハスクバーナはもともとスウェーデンの企業でした。しかし2007年にはBMWに買収され、2013年にはKTMグループ傘下の企業となったため、現在はKTMの本社があるオーストリアに拠点を置いています。
 

ハスクバーナグループとは?

ところでハスクバーナと言えば、日本ではバイクのメーカーというよりもエンジンチェンソーやブロワ、手斧などの農園、造園機器メーカーのイメージが強いようです。これらの製品はハスクバーナグループのハスクバーナ・ゼノアが日本国内での販売を担当しています。
 
農園、造園機器を扱うハスクバーナ・ゼノアと、バイクを扱うハスクバーナ・モーターサイクルズ・ジャパンは別法人。ホームページも分かれているのですが、検索エンジンで「ハスクバーナ」と検索すると、最初にヒットするのはハスクバーナ・ゼノアのホームページ。そのようなことからも、ハスクバーナがエンジンチェンソーの製造メーカー、というイメージを持たれるのかもしれません。
 
しかしここ数年、バイク部門でも徐々に売上げを伸ばしているシリーズが存在します。VITPILENとSVARTPILENのストリートスポーツモデルです。どちらのモデルにも373ccと692ccの2つの排気量がラインナップされていますが、実はいずれもKTMのデュークシリーズの兄弟車両。401は390DUKEのエンジンとシャーシをベースにしたバイクとなっており、KTMグループ傘下になったことでプラットフォームの共有化が図られているようです。
 
今回筆者が試乗させていただいたのは、SVARTPILEN401。スウェーデン語で「黒い矢」を意味します。見た目はとにかくインパクトのあるSVARTPILEN401。どのような走行性能を持っているのでしょうか? 今回も1週間通勤で試乗したインプレッションをお届けします。
 

SVARTPILEN401のデザインと装備をチェック

スヴァルトピレン401 サイドビュー

スヴァルトピレン401のサイドビュー

ハスクバーナのSVARTPILENのサイト確認すると、「過剰なデザインを排し、最小限の機能的な必須要素のみに絞っています。」と記載されています。ハスクバーナは北欧スウェーデンの生まれ。北欧と言えばインテリアブランド「IKEA」が日本でも人気ですが、シンプルで機能性に優れたものを長く使う、北欧ならではの文化は、SVARTPILENにも投影されているように思われます。
スヴァルトピレン401のスイングアームマウントリアフェンダー

スヴァルトピレン401のスイングアームマウントリアフェンダー

ところが実際にSVARTPILEN401を見てみると、シンプルと言うよりは、インパクトのあるデザインに仕上がっています。フロントのフェンダーはかなり短く、機能性よりもデザイン性を重視しているように感じました。リアのスイングアームマウントのナンバーステー兼リアフェンダーも、フェンダーレスキットを装着しているかのように、リア周りのシルエットをスッキリさせています。
スヴァルトピレン401はカウルの形状も個性的

スヴァルトピレン401はカウルの形状も個性的

外装のカウル部分は、タンク部分からテールカウル部分までほぼ一体化されています。色もブラックに統一。蛍光イエローのラインとハスクバーナのブランドロゴがワンポイントになっていました。
エンジンガードは樹脂製を採用している

エンジンガードは樹脂製を採用している

タイヤはブロックパターンを採用したことからも、ややオフロードを意識したモデルとなっていますが、エンジン下部に装着されたアンダーガードは小ぶりな樹脂製。機能性を重視するなら、大きなアルミ製の方が良いと思いますが、この辺りからもデザインへの拘りが感じられます。
タンクキャリアが標準装備のバイクは非常に珍しい

タンクキャリアが標準装備のバイクは非常に珍しい

タンクの上にはタンクキャリアが装着されています。タンクバックなどを確実に固定することができそうですが、給油毎にタンクバッドの脱着が必要になってしまいます。機能性を重視するなら、前側だけでも簡単に持ち上がる構造になっているとベターでした。
ヘッドライトはオーセンティックな丸型が上下にセパレートされてマウントされている。ロービーム時は上側だけ、ハイビーム時は上下が点灯する

ヘッドライトはオーセンティックな丸型が上下にセパレートされてマウントされている。ロービーム時は上側だけ、ハイビーム時は上下が点灯する

ヘッドライトにはオーセンティックな丸型を採用。上下が真ん中で仕切られていて、周りを囲むようにデイタイムライニングライトが配置されています。ロービーム時は上側半分、ハイビーム時は上下両方が点灯する仕組みのLEDで、明るさは充分。テールやウィンカーといった灯火類にもLEDが採用されています。
スヴァルトピレンのメーターの視認性は悪くない

スヴァルトピレンのメーターの視認性は悪くない

メーターもシンプルな丸型で、速度が大きく表示されて視認性は良好。SVARTPILEN401はABSが標準装備ですが、オフにすることも可能。メーターのMODEとSETボタンの下に何も表示されていないスペースがありますが、こちらを押しこむことでABSをオフにできます。
前後共にホワイトパワー製のサスペンションを採用

前後共にホワイトパワー製のサスペンションを採用

前後サスペンションはKTMの390DUKEと同じく、フロントに倒立フォーク、リアには初期の沈み込み量を調整するプリロード調性が可能なホワイトパワー製リアショックを装備しています。タイヤと乗車ポジションが異なるので、乗り心地は異なるように感じられます。
シートは薄めだが座り心地は悪くない

シートは薄めだが座り心地は悪くない

タンクからタンデムシートまでは、あまり凹凸のないフラットなシルエット。シート自体は薄めですが、反発力のある素材を使っているので座り心地は悪くありません。シートの開閉は鍵ででき、タンデムシートを外した後に前側も外れる仕組み。スペースは広くありませんが、車載工具がギッシリ詰まっています。これを抜いちゃえば、ETCの車載機ぐらいは納まるかもしれません。
 

SVARTPILEN401の燃費や足つき性は?

今回試乗したルートはKTMの390DUKEの試乗時と同じく、神奈川県川崎市の自宅から東京都江戸川区の事務所まで。高速道路での走行性能を見るために、葛西から首都高湾岸線も少しだけ走る片道25キロのルートですが、SVARTPILEN401の燃費は22.37km/Lでした。誤差があるとしても、KTMの390DUKEの燃費が25.7km/Lと比較的良好だったのに対し、SVARTPILEN401の燃費Lはやや悪い結果となりました。タンクの容量は390DUKEが13.4Lのところ、SVARTPILEN401は9.5L。計算上では、SVARTPILEN401の連続航行距離は212.5kmとやや短めです。
 
SVARTPILEN401のシート高は390DUKEより5mm高い835mmですが、足つき性はどちらもあまり変わらない印象です。身長165cmの筆者は両足は着かず、片足が半分接地するぐらいでしたが、SVARTPILEN401は軽量なので不安感はありません。車両重量は390DUKEよりも6kg軽い157kg。この排気量としては、かなり軽量です。
 

ワクワクするような車体の軽さが最高に楽しい!

スヴァルトピレン401 リアビュー

スヴァルトピレン401のリアビュー

SVARTPILEN401のエンジンセッティングの特徴と言えば、アクセルをひねった際に回転が鋭く上がること。パワーバンドはやや高回転気味の約7000rpmです。車体が非常に軽いので、回転を維持しながら走ると動きがとにかくシャープ。これらは390DUKEの特徴と変わりません。
 
SVARTPILEN401のスペックを見てみると、最大トルクが出力される回転数が390DUKEに比べて引き下げられています。多少低中速重視になっていますが、加速時には390DUKEとの大きな違いは感じませんでした。ただ回転が落ちてきた際には、エンジンがギクシャクし始めるタイミングがやや遅かった印象があり、これだけでも下道での使い勝手は390DUKEに比べてかなり良いと思いました。
パターンはブロックパターンだがゴツゴツ感は薄い

タイヤはブロックパターンだが、ゴツゴツ感は薄い

ブロックタイヤを採用しているSVARTPILEN401ですが、直進時はゴツゴツした感触もあまりなく違和感はありません。ただコーナーではロードタイヤに比べると接地面積が少なく、絶対的なグリップ力は不足していると感じるかもしれません。
 
高速道路では、フレームの剛性やタイヤのグリップに不安を感じることはありません。前後の足周りがやや硬めの印象ですが、走行中や段差を超えるときには減衰力がしっかりと効き、粘りのある動きをします。
 
車体が軽くエンジンもパワフルなので、とにかく動きが軽いのが魅力的。高速道路の走行も苦にはなりませんが、下道を走った方が楽しいのは間違いありません。これは390DUKEの試乗でも感じたことですが、SVARTPILEN401はさらにブロックタイヤなので、林道にもチャレンジしてみたいところ。前後のサスペンションストロークはオフロードバイクほど長くはありませんが、車体が軽量ですしタイヤのブロックパターンなので楽しく走れちゃいそうです。
 

個性的な見た目だけど走りは本格的!

加速、減速、旋回全てのモーションの動きが軽く、非常に扱いやすいSVARTPILEN401。長距離ツーリングがメインのメガツアラーなら、「重さ」がメリットになることもありますが、下道走行や総合的な扱いやすさでは「軽さは正義」と感じる試乗でした。ただ軽いだけでなく、SVARTPILEN401はしなやかな足周りやパンチの効いたエンジンが重量とのバランスを整えているので、気持ち良く走れるのでしょう。

一方でSVARTPILEN401はシート高が高いので、足つきを気にするライダーも多いと思います。実際に跨ってみても「足つきが悪いな」と感じるかもしれません。しかし信号待ちで数回足を着いてみれば、車体の軽さで足つきも気にならなくなるでしょう。個性的な見た目に反して、どんな操作も非常に軽く初心者ライダーやリターンライダーにもおすすめしたいSVARTPILEN401。下道走行の楽しさなら、クラストップレベルといえるかもしれません。
 

SVARTPILEN401をカスタムするなら

国内ではSVARTPILEN401用のカスタムパーツはほとんど流通しておらず、純正のオプション品を使うか汎用製品を使うしか方法はありません。カスタムの定番であるマフラーも、認証を取得している製品がありません。

ハスクバーナのSVARTPILEN401を紹介するサイトでは、ヘッドライトガードを装着している写真が多く掲載されていますが、国内モデルは標準装備ではないので注意が必要。オプション扱いとなっています。
  スマホの給電用にUSBチャージャーは装着しておきたいところ。質感の高いバイクなので、USBチャージャーもアルミ製を装着したいですね。
  オフロードバイクには定番装備のナックルガードですが、SVARTPILEN401はロードバイクの要素も強いので、ナックルガードも樹脂製ではなくアクリルスモークの製品が似合いそうです。

 

ハスクバーナSVARTPILEN401 スペック詳細

排気量:373cc
最高出力:31kw/9000rpm
最大トルク:37Nm/6750rpm
タイヤサイズフロント・リア:110/70R17・150/60R17
ガソリンタンク容量:9.5L
車両重量:157kg
生産国:オーストリア
販売価格:77万7000円
 

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