テザーと米ドルの価格乖離が発生
10月の上旬、米ドルペッグ通貨であるテザーの価格が一時急落し、米ドルとの価格の乖離が起きました。米ドルペッグ通貨とは、米ドルと価値が連動するよう設定されている仮想通貨のことです。テザーの場合は、1テザー(USDT)=1米ドルとして価値(価格)が固定されるとうたわれていました。
こうしたコインは一般的に仮想通貨よりも価格変動が少ない場合が多いため、「価格安定型仮想通貨(ステーブルコイン)」とも呼ばれます。
テザーは今年の2月に、米ドルペッグの裏付けとなる米ドルの保有量が十分ではないにも関わらず大量に発行するなどして市場操作に利用されているのではないかという疑いでアメリカ商品先物取引委員会から召喚されており、その疑念はいまだ晴れていません。しかし、その信頼性は揺らぎながらも取引は行われてきました。
新たな米ドルペッグ通貨が承認される
今回のテザーの信頼問題を受け、マルタを拠点とする大手仮想通貨取引所OKExでは、より高い信頼性が期待される米ドルペッグ型の仮想通貨が4種類ほど取引可能となりました。取引可能となったのは、ウィンクルボス兄弟の仮想通貨取引所ジェミニ発行の「ジェミニドル」、パクソス・トラスト・カンパニーの「パクソススタンダードトークン」、「ユーエスディーコイン」、「トゥルーユーエスディー」の4種類。「ジェミニドル」と「パクソススタンダードトークン」はニューヨーク州金融サービス局の承認も得ています。
大手取引所が続々と米ドルペッグ通貨の上場へ
他の仮想通貨取引所でも同様の動きが起きており、ビットコイン決済代行会社大手のビットペイは、加盟店に対して「ジェミニドル」と「ユーエスディーコイン」での決済を導入したと発表しました。これに続くように世界最大級の仮想通貨取引所「フォビ」や「バイナンス」も新たな米ドルペッグ通貨の上場(取引開始)に乗り出しており、さらに多くの仮想通貨ウォレットサービスも米ドルペッグ通貨決済のサポート提供へと動いています。
また、ベンチャーキャピタルや大手IT企業もステーブルコイン開発に巨額投資を行っていると言われています。
「安定型仮想通貨(ステーブルコイン)」は、文字通り、仮想通貨リスクのひとつボラティリティ(価格変動性)での損失回避機能も持っています。テザーの信頼問題は解決していませんが、新たに登場しているより高い信頼性が期待されるステーブルコインの利便性を高める動きは今後も継続するものと思われます。
現金やクレジットカードに代わる決済手段として仮想通貨は生まれましたが、投機的な側面がいまだ強く不安定・不確定要素が残る現状であり、ボラティリティの影響の少ないステーブルコインの持つ新たな金融サービスへの可能性が、今熱い期待と注目を集めているのです。