マレーシアのプライベートスクールに通う子どもが体験した強烈なマネー教育
日本のお金の常識に捉われているうちはお金持ちになれない!?中国、シンガポール、マレーシア、香港などアジア各国・地域を拠点に
ビジネスを展開し、アジアの富裕層を知るジョン・シュウギョウさんが、
これからのグローバル時代にお金持ちになる方法を伝授します!
(第3回『200円でも価値がなければ払わない!アジアのお金持ちのお金の使い方』から続きます)
高校生の夏休みに100万円の大金を渡され……
私の知り合いの華僑のビジネスマンから聞いたのですが、子どもの頃からお金に対する考え方や向き合い方を教えられて育ったそうです。お金を稼ぎ、増やすにはどうすればいいか? そのための生き方や考え方、人間関係の作り方までの実践哲学を学ぶのです。その彼は高校生になったときの夏休みに、親から100万円ほどのまとまったお金を渡されたそうです。「このお金を自由に使って何をしてもいいし、どこに行っても構わない。ただし、夏休みが終わるまでに少しでもこの100万円を増やしてみろ」。
夏休みを使って100万円を増やすミッションを与えられたそうです。お金持ちならではの教育方法ですが、インパクトがあります。高校生が100万円の大金を与えられ、すべて自分の裁量で使い、増やす。私たちはびっくりしますが、華僑の人たちの間ではポピュラーな教育方法だそうです。
スモールビジネスで稼いだり、投資で増やすなど、やり方は千差万別。なかには100万円使い切ってすってんてんになって戻ってくる場合もあるとか。ただしだからと言って親は怒ったりしません。「なぜ増やせなかったのか? なぜ使ってしまったのか? 自分のなかでしっかりと結論を出しなさい」と言われるそうです。
増やすことに成功できれば御の字ですが、それができなくても、なぜできなかったかを反省する。それによって生きたお金の知恵が身につくのです。お金持ちの華僑ならではの教育方法ですが、まさに実地訓練を受けながら、お金の本質と価値、お金に対する向きあいかたを学んでいくわけです。
『200円でも価値がなければ払わない!アジアのお金持ちのお金の使い方』では、お金持ちは自分が価値があると判断したものに対しては相応のお金を払うが、価値が認められないものに対しては1円も払わないというお話をしました。その価値をどこに置くか? 自分なりの価値基準を、彼らは若いときからこのような実体験を通して身につけていくわけです。
ペナンの小学校に通う娘に出された驚きの宿題とは?
じつは私はいまマレーシアのペナンという場所に家族とともに住んでいます。私の娘が、そこのプライベートスクールに通っていてもうすぐ卒業ですが、学校でのマネー教育が驚きの連続なのです。娘が4年生だった時のことです。ある日、宿題を見たところ驚きました。キックボード自転車の絵が描いてあり、「これがあなたの会社が明日から売り出す商品です。ターゲットや年齢層を決め、どう売り出すか、どんなキャッチで売り出すかを書きなさい」という問題だったのです。
小学校4年生の宿題がマーケティング戦略ですよ! 本当にびっくりしてしまいました。また授業参観などでは、生徒たちがグループになって発表会を行うのですが、その内容にも驚きました。
生徒たちは5人でグループになり、1つの会社を運営します。社長や専務、マーケティング部長などと役割を決め、実際にいくらかの資本金を先生から渡され、どんな事業を興すか決めるのです。
あるチームはレモネードの販売を、あるチームは理髪店など、仮想ビジネスを立ち上げるのです。そして発表会の時にそのビジネスの商品やサービスを各ブースの出店舗仕立てにして公開します。親たちが実際にどのサービスを利用するか? その売り上げを競い合うのです。
イギリス系やアメリカ系のスクールは3カ月から4カ月が一つのタームとなっています。そのタームごとに学ぶべきテーマがある。たとえば歴史だったり数学だったり、その中にマーケティングがあり、その時期はさまざまな角度からマーケティングの勉強をするのです。
生き馬の目を抜くような「肉食人間」が増える時代
早い時期から世の中の仕組み、資本主義社会や経済の仕組みをこうして勉強するのですから、末恐ろしい感じさえします。実際、マレーシアの若者はある部分スレていて、憎たらしいときさえあります(笑)。先日も赤信号で停車していたら、後ろから追突されました。降りて出てきたのは明らかに高校生とおぼしき若者たち。かの地では高校生から自動車免許が取得できるのです。ただし、この若者たちがいっこうに自分たちの非を認めようとしない。それどころか急に停車した私が悪いと主張するのです。
赤信号で停車していたのに急に停まったなど言いがかり以外の何物でもありません。謝罪したら負けだという意識があるのでしょう。ただし、私もそういうことなら本気で臨みます。警察に来てもらって事実を明らかにしてもらうと言うと学生たちは急に慌てだし、結局彼らの親と電話で話して「どうか警察沙汰だけは勘弁してほしい」ということで一件落着しました。
いまや世界はこのような若者たちがたくさん生まれてきています。自己主張が強く、世知辛い彼らを肉食動物だとしたら、日本の人たちは本当に大人しく優しい草食動物です。新自由主義が広がって国際競争が激しくなれば、彼ら肉食獣にとって日本はカモになってしまうのではないか。そんな恐れさえあります。
私はなんだかんだ言ってもこの日本という国が大好きなので、冗談半分に再び鎖国してほしいと言うことさえあります。冗談半分ということは本気も半分。ただし、一番は日本の人たちもマネーリテラシーを高め、彼らに対する耐性を付けつつ、日本独自の良さを保ってほしい。最後の回で、そのことについて触れてみたいと思います。
★ジョンさんのインタビューは次回に続きます!
教えてくれたのは……
ジョン・シュウギョウさん
取材・文/本間大樹