亀山早苗の恋愛コラム

百年の恋も冷める?大人の恋の情熱が一気に冷めるとき

恋愛感情というのは、錯覚なのだろうか。「彼のことが好き」と自分でも信じていた気持ちががらがらと崩れることがある。オトナだからこそ、彼への恋愛感情が冷めてしまうこともあるのだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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若いときとは違った、恋の冷め方がある

急に冷める瞬間

急に冷める瞬間


「百年の恋も一時に冷める」という表現がある。長い間抱いてきた恋心もある欠点などを見つけたために一度に冷める、急に興味を失うといった意味の言い回しだが、実際に大人の恋愛では、若いときとは違う内容ではあるものの、一気に冷めることがあるという。アラフォーともなれば相手に対して寛容になるが、それでも「ここは無理」ということがあるのだ。

「そういえば私、20代のころは相手がコーヒー専門店で紅茶頼んだだけでブチ切れて別れてた。コーヒー専門店なんだからコーヒー頼めよって(笑)。でも今なら、コーヒーが好きでない彼なら、そもそも専門店で待ち合わせはしないわね」(40歳)

経験は他者への容認度を広げていくのである。


人間性一点にすべてがかかってくる

若いときほど無慈悲な冷め方はしないが、その分、冷めるときは深刻でもある。マチコさん(38歳)が相手に急に冷めたのは、根本的な“人間性”を見たときだという。

「実は私、1年つきあった同い年の彼と別れたばかりなんですよ。結婚しようと盛り上がっていたし、好きでたまらなかったんだけど、この人とはやっていけないかもというポイントがいくつか重なってしまったので」

彼と一緒に電車に乗ったときのこと。目の前の席があき、彼が「座れば」と言ったのでマチコさんは座った。すぐ次の駅で隣があき、彼も座った。おしゃべりに夢中になってはいたものの、ふと見ると近くにお年寄りが立っている。彼女はすぐ席を譲ったが、彼は立とうとはしなかった。

「あれ、と思いました。私を先に座らせる気持ちはあるのに、彼自身がお年寄りに席を譲る気はないのか、と」

何度か「あれ?」が続き、決定的だったのは一緒にタクシーに乗ったときの彼の態度だった。

「運転手さんが道を間違ったんですよね。彼はそれに気づいて指摘、運転手さんが謝ったにもかかわらず、『よくそれでプロって言えるよね』『ナビにばかり頼ってるならオレが運転しても変わらないよ』と嫌みたらたら。『私、まだタクシーに乗って1週間なんで、本当に申し訳ない』と謝っている運転手さんに『前の会社もクビになったんじゃないの?』とひどい言い方。私、思わず車を止めてもらい、お金を払って降りました。最後に『ごめんなさい』と謝って。そのまま私は別のタクシーを止めてひとりで乗り込みました」

タクシーの中で、彼に別れのメッセージを送ったという。相手のミスを許さず、さらに責め続ける態度に恐怖さえ感じたという。
男は女性の前で見栄を張りたいものかもしれない。とはいえ、こういう傲岸不遜な態度に、女性の気持ちは必ず冷める。


彼がいなくてもいいことに気づいてしまった

1人の時間の楽しさに気づいて

1人の時間の楽しさに気づいて


つきあっていると、彼の存在は「いて当たり前」になっている。

「私は彼のことがすごく好きだったし、一緒にいる時間が楽しかった。自分の恋愛感情を疑ったことなどなかったのに」

アキコさん(41歳)はそう言う。2年つきあい、週末はほとんど一緒に過ごしていた。共通の仲間もいる。それなのに、彼が1ヶ月の長期出張で海外に行ったとき、ほっとしている自分に気づいたのだという。

「寂しい気持ちはあったけど、それ以上に気持ちが軽くなった。考えてみたら、実家住まいの彼は週末はほぼ私のところに来ていたんですが、彼が来るとなると部屋もきれいにしておかなければいけない。私の料理が大好きだと言ってくれているから金曜の夜には深夜までやっているスーパーに行って下ごしらえもしておかなければいけない。そういう生活に疲れていたんだと思います。もともと私は整理整頓や掃除が大の苦手。無理していたんですね」

彼がいない初めての週末、彼女は思いきり眠った。夕方近くに起きてテレビを観ながらだらだら過ごす。日曜日は久しぶりに女友だちとランチをしてから、ひとりで繁華街をぶらぶらした。

「ついでに行きたかった美術館へ行って。考えてみたら彼は美術に興味がなくて一緒に美術館に行ったこともなかったなあ。この2年で行きたかった展覧会をかなり見逃しているなあ、なんて考えたりして。それでもこの時点では、彼がいない間、羽を伸ばすという気持ちしかなかったんですよ」

ところが次の週末、彼女は陶芸教室の体験教室へ。ずっとやってみたかった陶芸だったので、そのまま勢いで毎週日曜日のクラスを予約してしまう。

「私は彼のいなくなった生活を想定しているのかな、と自分でもちょっと不思議な感覚に陥りました。ひょっとしたら私は自分のやりたいことをやらずにきたのかもしれないと、自分の心の奥底の欲求に気づいてしまったんですよね」

次の週末は画廊巡り。ひとりで行動する心地よさが身にしみた。彼とは連絡をとりあってはいたが、時差があるためすぐに返信するのはむずかしい。寝ているところを起こされると仕事に支障があると感じ、夜中はスマホをオフにした。

「以前の私だったら睡眠時間を削っても彼の連絡を待っていたと思うんですが。いったい私、どうしちゃったんだろうと思っていました」

自由を味わったとき、それまでの2年間が窮屈に思えてきた。それでも彼が帰ってきて顔を見れば気持ちが変わるだろうと信じていた。

「ところが彼が帰ってくる日、残業になってしまって。彼は私の部屋に直行すると言うんだけど、平日に来られても困るという気持ちが強かった。これも以前の私なら考えられないことです」

彼優先の生活が一変してしまったのだ。

「その週末は以前のように彼が来たんですが、日曜日は陶芸に行くことにしたと言ったら、彼があからさまに不満を言い出して。結局、そのまま別れてしまったんです」

たかが1ヶ月、離れていただけでそこまで気持ちが変わるものなのだろうか。

「恋愛って魔法にかかっているようなものなんだなと痛感しました。私は魔法が解けてしまった。彼がいなくてもやっていける、いや、彼がいないほうが自由で楽しい。そんな気持ちになったら、もう窮屈な生活には戻れない」

いなくなって初めて、自分にとっての彼の存在価値に気づいたとマチコさんは言う。彼にとってはとんだ災難だったかもしれないが、会わない時間に人は自分の本当の気持ちに気づくことがある。自分の人生を大事にしたいオトナだからこそ、その「本当の気持ち」に気づいたら後戻りはできない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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