際立つショート&ワイドなフォルム
F-PACEに続くジャガーSUVの第2弾、E-PACEが日本に上陸を果たした。プレミアムコンパクトSUVであることは間違いないものの、サイズ的には(全幅は)全くコンパクトではない。スリーサイズは、全長4410×全幅1900×全高1650mm、ホイールベースは2680mm。4410mmの全長は、トヨタC-HRの4360mmと比べると50mm長いだけで確かに短い。一方の全幅はランドクルーザー・プラドの1885mmよりも15mmワイド。つまり、C-HR級の長さに、プラド級の横幅を備えていることになる。
輸入車は、日本車に対して全幅に対して寛容とはいえ、かなり「ショート&ワイド」というスタイリングで、正面から眺めると短めの全長を感じさせない迫力に満ちている。
エンジン横置きのFFベースのSUV
ジャガーE-PACEの価格は、2.0Lディーゼルが451万0000円~738万0000円。2.0Lガソリンの「P250(249ps仕様)」は、475万0000円~764万0,000円。同じく2.0Lガソリンの「P300(300ps仕様)」は、605万0000円~759万0000円
試乗したのは、「P250」と呼ばれる2.0Lの直列4気筒ガソリンターボを積む「R-Dynamic SE」で、トランスミッションは9AT。駆動方式は4WDとなっている。
なお、兄貴分のF-PACEは、エンジン縦置きでFRベースの4WDだが、E-PACEはエンジン横置きでFFベースの4WD。つまり、イヴォークやディスカバリー スポーツと同じプラットフォームを使用している。
先述したワイドな全幅だが、ジャガーランドローバーの手持ちのプラットフォームからすると、1.9m級のワイドボディになるのは必然なのだ。
街中から走り出すと、FFベースでもかなりスポーティに振った走りが身上なのが伝わってくる。249ps/5500rpm、365Nm/1300-4500rpmというパワフルなアウトプットの割に、ZF製9ATの変速マナーが良いこともあって、普通に流す分にはじゃじゃ馬ぶりは感じられない。
エコモードに入れておけばエキゾーストが吠えるわけではなく、高級住宅街でも「下品なクルマねぇ」と馬脚を現すことはなく、紳士淑女の街乗りSUVとして十分に役割を果たしてくれそうだ。
ドラポジからしてスポーツカー的
ただし、ドライビングポジション(前席)は、スポーツカーのような姿勢になる。足を伸ばして座り、必要に応じてステアリングのチルト&テレスコピックで微調整するという座らせ方は、スポーツカーそのものだ。
前方、左右の見切りがしやすい「コマンドポジション」を特徴とする、レンジローバー、ランドローバー各モデルとは、ドラポジからして設計思想が異なるのがうかがえる。
高速道路でアクセルを踏み込むと、迫力ある加速が味わえる。この領域でこそE-PACEの真価が味わえるのだと実感させられる。ビシッとした直進安定性の高さ、高速域から低速まで多様なワインディングを難なくクリアする安定感、そして意のままになるようなハンドリングは、イヴォークやレンジローバー スポーツよりも明らかに辛口に仕上げられている。
乗り心地も甘くない
こうした美点を味わえる一方で、235/55R19サイズを履くグッドイヤーの「イーグルF1アシメトリック3」による乗り心地はかなりハード。路面が良ければ上下方向の突き上げは少なめだが、それでもボディが常に左右に揺すぶられている感じがする。
少しでもざらついたり、凹凸があったりすると、ボディの剛性感やシートの減衰感を超えた領域で、かなり硬いと意識させられる。
つまり、SUVブームのいま、ほかのSUVと同じ感覚で乗ると、ジャガーはスポーツ性能こそが身上だと再確認させられるのだ。少なくても19インチタイヤを履くE-PACEの「R-Dynamic SE」をファッション感覚で選ぶと、少し痛い目に遭うかもしれない。逆に、SUVのカタチをした5人乗りのスポーツカーがお望みであれば、期待に存分に応えてくれるはずだ。