国外転出時課税制度」が平成27年7月1日より施行されています。その名称から、「相続には関係ない」「我が家には関係ない」と思っている人も多いようです。しかしながら「国外転出時課税制度」は相続税にも関係しており、思わぬところで「申告漏れ」と言われないよう、海外に相続人がいる場合は該当していないかの確認が必要です。

国外転出時課税制度とは

海外に相続人がいる場合は国外転出時課税制度に該当しないか確認を

海外に相続人がいる場合は国外転出時課税制度に該当しないか確認を

一定の条件で有価証券を保有する人が「海外に転出」「非居住者へ贈与」「非居住者へ相続」した場合に、譲渡等があったものとして所得税が課税されるのが「国外転出時課税制度」です。これだけを見ると自分には関係ないと思いがちですが、いくつかの落とし穴がありますので、自分が該当していないかの確認をしておきましょう。

国外転出(相続)時課税とは

国外転出時課税制度のうち、特に見落としがちなのが「相続における国外転出(相続)時課税」です。次の条件に該当する場合は、被相続人が相続対象資産を譲渡等したものとみなして含み益に所得税が課されますので、確定申告(準確定申告)が必要です。
  • 相続開始時点で被相続人が1億円以上の対象資産を所有している。
  • 非居住者である相続人等がその対象資産の全部または一部(相続対象資産)を相続等する。

対象財産に落とし穴が?

1億円以上かの判定をするための対象財産には次のものが該当します。
  • 株式・債券・投資信託等の有価証券、匿名組合契約の出資持分
  • 未決済の信用取引や発行日取引
  • 未決済のデリバティブ取引
これらの合計が1億円以上であるかで判定しますが、落とし穴としては有価証券に「未上場株式」(いわゆる自社株)が含まれている点です。法人が土地などをもっていると思いのほか高額な価額となることがあります。

相続税より所得税の申告を先に行う必要がある?

所得税の準確定申告の期限は4ヶ月です。相続税の期限は10ヶ月ですので誰が有価証券を相続するかはまだ4ヶ月では決まらないことが多い。この場合、仮に非居住者は有価証券を相続するつもりはないと意向は決まっていても、非居住者が相続するものとして準確定申告を4ヶ月以内に行わなければならないという落とし穴があります。

準確定申告と更正の請求の手続きの流れ

おそらく最も多いであろうケースで手続き内容を説明します。
  1. 被相続人の対象財産が1億円以上あり、相続人のうちに非居住者がおり、遺産分割が決まらないまま4ヶ月を迎えてしまう見込みなら「準確定申告」を行う。
  2. 準確定申告では非居住者の法定相続分に応じた相続対象資産を被相続人が譲渡したものとみなして「譲渡所得」を計算する。
  3. 後日に遺産分割が成立し非居住者は有価証券を相続しなかったなら、譲渡したものとして払った所得税は「更正の請求」(遺産分割成立後4ヶ月以内)で還付してもらう。
  4. 還付を受けた以外の所得税(準確定申告で実際に支払ったもの)は被相続人の債務として計算に含めて相続税を計算する。

相続が発生し何かとバタバタしているところで、遺産分割や相続税のことよりも先に「国外転出(相続)時課税」(準確定申告)の期限が来てしまいます。将来の相続人のうちに非居住者がいるようであれば、生前に「法人の株式がどれくらいの価額になるのか」「国外転出(相続)時課税に該当しそうか」の判定をしておくと安心です。この判定は相続税に詳しい税理士に依頼することが一番です。

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