つくばエクスプレス「みどりの駅」エリアに世界大会で活躍した植崎シェフのパティスリーがオープン!
2018年5月3日、茨城県つくば市みどりの東に、「La Rivière de Sable(ラ・リヴィエ・ドゥ・サーブル)」がオープンしました。常磐自動車道の谷田部インターより車で約5分。電車ならば、つくばエクスプレスみどりの駅で下車し、バスと徒歩で約15分というアクセスです。オーナーの植崎義明シェフは、茨城県のご出身。東京・世田谷区の老舗菓子店「パーラーローレル」などで、パティシエとしてのキャリアを積んできました。特にチョコレートを得意素材とし、製菓の世界コンクール「ワールドチョコレートマスターズ2011」で準優勝。「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー2017」では日本チームの一員としてチョコレート細工とデザートを担当し、チーム準優勝を遂げた実力派パティシエです。
「ラ・リヴィエ・ドゥ・サーブル」で選ぶべき、多様なケーキたち
「ラ・リヴィエ・ドゥ・サーブル」に並ぶケーキ類には、親しみやすい日常のおやつ菓子から、世界を舞台に活躍していらした植崎シェフならではの、凝った構成のお菓子まで、バラエティーに富んでいます。その中でも、植崎シェフが得意とするチョコレートを使ったケーキは、ぜひとも召し上がっていただきたい品です。「ムッシュ・ノワール」もその一つ。背の高いチョコレートケーキですが、厚めのチョコレート生地の部分はスフレショコラで、間に2層のキャラメルクリームを挟んでいます。ふんわりしっとりしたチョコレートのスフレは、心癒されるようなやさしい味わいで、きめ細やかな食感。キャラメルのほろ苦さが味わいに変化を与えてくれ、思わずパクパクと軽く食べ進んでしまいます。
ハートの形につやつやの赤いグラサージュの上掛けで、ひときわ鮮やかに目を引く「キャトル ルージュ」も、植崎シェフお勧めの自信作です。「4つの赤」を意味する名前のとおり、ビスキュイ、ジュレ、クレーム、グラサージュと、全てのパーツにフランボワーズを使い、可愛らしい真っ赤なケーキに仕上げています。
フォークを入れて断面を見ると、驚くのは、ピンク色のビスキュイの分厚さ。このケーキの高さの1/3ほどの厚みのある生地が2層。その間に、とろりと濃密な質感で木苺の余韻が長く感じられるジュレ。周囲はふんわり軽いムースではなく、より味がぎゅっと詰まったクレームフランボワーズ。全体を覆うグラサージュにも、しっかりと木苺の味が感じられるという、まさに木苺尽くしです。口にすると、木苺の甘酸っぱい味や香りの濃厚さはもちろん、種の粒々感も感じられる生地まで、存在感抜群!
「このお菓子は、ビスキュイもしっかりと味わってほしいと考えました」という植崎シェフ。最近は、ふわふわやとろとろなど、柔らかく口どけのいいお菓子が多く見られ、このようにしっかりと噛み応えのある生地を中に入れる構成は、あまり見られなくなりました。クラシックな日本の老舗洋菓子店のお菓子を彷彿とさせ、新しいのにどこか懐かしいような、植崎シェフのオリジナリティ溢れる作品です。
「レジェール」は、フランス菓子に詳しい方ならば、これはショートケーキとは異なる、フランスの苺のケーキ「フレジエ」ではないかと思われるかもしれません。その想像は、近いけれど、少しだけ違っています。
「レジェール」にサンドされている淡い黄色のクリームは、カスタードクリームと生クリームを合わせた、いわゆる「クレーム・ディプロマット」と言われるもの。表面に薄く塗られたクリームにも、同じものを使っています。
「フレジエ」の場合、カスタードクリームにバタークリームを合わせた「クレーム・ムースリーヌ」と言われるどっしりと濃厚なクリームを使うのが一般的です。
実はこのお菓子、植崎シェフが若き日に修業した東京の「パーラーローレル」で、師匠の武藤邦弘シェフが作っていらしたものだそう。「クレーム・ムースリーヌ」よりも軽く、日本人にとって食べやすい軽やかなクリームをと、「クレーム・ディプロマット」を採用。だからこそ、フランス語で「軽い」という意味の「レジェール」と名付けられたお菓子なのです。
さらに、苺も、「ナイトハーベスト」、即ち、気温の低い夜に収穫することで糖度をギュッと閉じ込めた、茨城県内の生産者・大貫さんによる特別な苺を使用。甘さはもちろん、適度な酸味もあり、まろやかなクリームとマッチして、バランスのよい完成度となっています。
そして、植崎シェフが特別な思いを込めて作るチョコレートケーキ「ローレル」。このお菓子は、まさに「パーラーローレル」のスペシャリテであり、植崎シェフが修業時代に一番好きだったケーキなのだそう。
バタークリームで繊細に絞られた美しい花束のデコレーションと、チョコレートガナッシュで描かれた、表面の緻密な波模様。オープン日にこのホールサイズを目にした時、武藤シェフの「ローレル」を思い出して、私もいたく感激しました。
この名前でこのお菓子を販売することを、師匠の武藤シェフにご了承いただいてから世に出したいと、強く願っていらした植崎シェフ。そして、オープン前の関係者向けお披露目の時、遠方からお祝いに駆けつけられた武藤シェフから、もちろんご快諾を得られ、晴れて「ラ・リヴィエ・ドゥ・サーブル」のショーケースに並ぶことになったのです。誕生日など、大人向けの記念日のアントルメとして贈るのにふさわしい一台ですね。
4層のチョコスポンジで3層の生クリームをサンド。ココアパウダーを入れたスポンジは、一般的に、硬く締まりがちなのですが、この生地はシロップなどを打っている訳ではないのに、ふんわりしっとりしていて、職人の技術の高さが感じられます。さらに、表面に流したチョコレートガナッシュが固まりきらないうちに描く見事な波模様も、見どころの一つです。
もう一つ、私が好きでお勧めしたい「柚子とアーモンドのマリアージュ」は、アーモンドプラリネとショコラを合わせたムースの間に、柚子のジュレとクレームをサンド。どちらも柚子の酸味が効いていて薫り高く、プラリネの香ばしさやミルクチョコレートのやさしい甘さと、口の中でとろけ合います。「マリアージュ」=「結婚」の名のとおり、まさに相性抜群の組み合わせです。
これ以外にも、瓶入りプリンの「クレームキャラメル」、卵や生クリームにこだわったプレーンロールケーキ「奏ロール」や、チョコレートブレンドの生クリームを巻いた「ショコラロール」、普段のおやつ向けのシンプルな生菓子も充実。さらに「ティラミス」や「モンブラン」、植崎シェフのオリジナル作品まで、大人もお子様も楽しめるラインナップが幅広く揃います。
ショーケースの上に並ぶ、焼きっぱなしの素朴なお菓子も個性的です。
中でも私が心惹かれたのは、「マァム」のシリーズ。プレーンのサブレ生地にさつまいもペーストを入れて焼いた「キントン」と、ココアクッキー生地の中に木苺ジャムを入れて焼いた「フランボワーズ」の2種があります。外側はサクッと、中はしっとりとした食感は、まさかこれがサブレ生地とは思えない不思議な感覚。チョコ×木苺という王道コンビも植崎シェフらしいですが、さつまいもペースト入りというのが、干し芋でも有名な茨城らしい!と、私にとって非常に魅力的でした。
「かーくんのおやつ」は、コクのあるアーモンドクリーム入りタルトの上に、アーモンドスライスがたっぷり入ったキャラメルをのせ、カリカリに焼き上げています。土台は甘いパートシュクレではなく、ちょっと塩気のあるパイ生地に近いタイプの生地なのも、フィリングの甘さとほろ苦さを引き立てるアクセントに。
続いて、手土産としてもぴったりな小ぶりホールサイズのチョコレートケーキや、他にない注目の焼き菓子、コンクール出品作を元にブラッシュアップしたボンボンショコラなどもご紹介します。