トヨタ3兄弟を追うセレナ、ステップワゴン
2018年3月1日に発売された日産セレナe-POWERの登場で、5ナンバーサイズを基本とした(3ナンバーもあり)箱型ミニバンの勢力図が変わるかもしれない。少なくても2018年4月からの注目ポイントになりそうだ。というのも、2017年のミニバン販売台数ナンバー1を獲得したトヨタ3兄弟であるヴォクシー/ノア/エスクァイアが販売面では圧倒的に強く、単体でもヴォクシーが1位で、セレナが2位と続いている。もちろん、昨年秋のマイナーチェンジで2モーターハイブリッドを加えたホンダ・ステップワゴン(スパーダ)も注目だが、トヨタ3兄弟を追う1番手は、e-POWERが加わったセレナだ。
セレナe-POWERの仕上がりは?
ここでは、ヴォクシー/ノア/エスクァイアというミニバンの王者に、セレナe-POWER、ステップワゴン・スパーダ・ハイブリッドがどこまで迫れるか注目してみたい。
1750kg前後のセレナe-POWERに、ノートと同じ1.2Lの発電用エンジン(84ps/103Nm)を積むため、動力性能に対する疑問や不安を抱く向きも多いはず。しかし、ノートの80kW(109ps)/254Nmに対して、100kW(136ps)/320Nmとモーターの最高出力、最大トルクが増強されたことで、中・低速域のトルク感、高速域のパンチ力ともに実用上は何ら不足を感じさせない。
1人乗車時はもちろん、「大人3人、子ども2人」という状況でもほとんどモアパワーを抱かせるシーンはなかった。
良好なトルク感、パワーフィールだけでなく、静粛性の高さもセレナe-POWERの美点だろう。街中でも発電用エンジンが始動する機会は多いものの、その際はほかの騒音(風切り音やロードノイズなど)も入ってくるため、エンジン音は気になるレベルではない。高速域でも巡行時ならガソリンエンジン仕様よりも静かな印象で、ロングドライブも快適にこなしてくれそうだ。
ホンダらしいステップワゴン・スパーダ・ハイブリッド
一方のステップワゴンスパーダに設定された2モーターハイブリッドの「i-MMD」の仕上がりは、ホンダらしさを感じさせる。
145ps/175Nmという2.0Lエンジンに加えて、135kW(184ps)/315Nmというモーターの組み合わせにより、街中はもちろん、高速道路でも力強い。さらに、電気式無段変速機は、ATのようなドライブフィールで、高速道路への合流時などの加速感もスムーズ。従来からのクルマ好きにも支持されそうな仕上がりだ。
走りで大きな違いは、減速フィールだろう。セレナe-POWERは、ノート同様にアクセルを戻すだけで減速する「e-POWER Drive」と呼ぶ制御が採用されていて、初めてだと「予想をよりも減速する」はず。
慣れればアクセルとブレーキペダルの踏み替え回数が減るのは間違いない。逆に慣れるまでは、止まりたい位置よりもかなり手前で停止してしまい、アクセルを踏み直すということもありそうだ。
この「e-POWER Drive」の新しさが好みなのか、従来同様の減速感が得られるステップワゴン・スパーダ・ハイブリッドなのかは試乗して確認してほしい。
セレナe-POWERは7人乗りのみ
なお、王者のヴォクシー/ノア/エスクァイアのハイブリッドモデルは、プリウスと同じシステムを搭載する。乗り心地の良さや素直なフットワークなどが美点で、街中でのスムーズな走りもさすが売れ筋モデルという完成度の高さといえる。注目のセレナe-POWERは、価格面で一見すると割高に思えるかもしれない。しかし、その走りの力強さや静かさなどの新鮮味は、ガソリン仕様では確かに味わえない価値がある。
セレナe-POWER は、7人乗りのみなので、8人乗車が欲しい場合は選択肢には入らないが、7人乗りで十分というのであれば検討したい存在なのは間違いない。