「青春18きっぷ」と新幹線・在来線特急を組み合わせてみよう

青春18きっぷ

1日2370円でJRが乗り放題になる青春18きっぷ


「青春18きっぷ」をとことん利用して全国を旅する人は多い。しかし、中には日程の都合、体力や気力の問題から、一部区間を、別料金を払ってでも優等列車で時間短縮(正式の用語ではないけれど「ワープ術」という)したいと思ったり、楽をしたりすることも考えられる。青春18きっぷは、一部区間で使用を中断しても、その日のうちであれば、別の区間から使用を再開できるので、何ら問題とはならない。

新幹線や特急列車に乗車することは、一部の特例区間をのぞいては青春18きっぷでは不可となっている。他のJRフリーきっぷ「週末パス」「休日おでかけパス」などのように、特急券さえ購入すれば特急列車に乗れるというルールではなく、特急列車に乗る時は、特急券のみならず、乗車券(運賃)も別途払わなければならないのだ。


ワープ術は、どんな条件のときに使った方がよいのか?

そこまでして青春18きっぷでの旅行中に新幹線や特急に乗る理由としては、以下のことが考えられる。

  • 普通列車の本数が少なく、律儀に普通列車や快速列車を利用することにこだわると、ロスタイムが多くて、先へ進めなくなる。
  • JRの路線は新幹線だけであり、在来線のは第3セクター鉄道路線だけなので、青春18きっぷが使えない。
  • ロングシートの通勤型車両で混雑も予想されるので、景観が楽しめずじっと耐えるだけの移動になってしまう。

これらの要因を解消するような、青春18きっぷと新幹線(or 在来線特急)を組み合わせたワープ術について紹介していく。

パターン1:普通列車、快速列車の本数が極めて少ない場合

まずは、秋田新幹線「こまち」と山形新幹線「つばさ」を利用するワーププラン。新幹線とは言っても実態は在来線なのだが、その一部区間、山越え区間は人口も少ない過疎地域ゆえ、普通列車の本数は極めて少ない。


盛岡~田沢湖~角館 秋田新幹線「こまち」でワープ

E6系

秋田新幹線E6系


秋田新幹線(普通列車は田沢湖線という)の場合、雫石の先、赤渕と田沢湖の間は、早朝の列車の次は、およそ9時間後まで田沢湖方面へ向かう列車はない。そこで、盛岡駅から田沢湖駅、角館駅、大曲駅へ「こまち」でワープすることを考えてみた。

盛岡と田沢湖の間にある雫石駅は、「こまち」が停車するといっても、1日に上下列車4本ずつしか発着しないので、急ぐなら盛岡駅から乗車するのが適切であろう。

「こまち」は全席指定で自由席はないのだが、この区間は特定特急券を買うことで、空いている指定席に座ることができる。年末年始やお盆、大型連休のときでなければ、指定券を持った人は降りる一方なので、座れる確率は高い。

以下に、乗車区間別の料金を示しておく。
盛岡~田沢湖:1510円 (運賃=760円、特定特急料金=750円)
盛岡~角館:2320円 (運賃=1140円、特定特急料金=1180円)
盛岡~大曲:2670円 (運賃=1490円、特定特急料金=1180円)
大曲から秋田方面へは、1時間に1本は普通列車が走っているので、一安心である。


福島~米沢 山形新幹線「つばさ」でワープ

つばさ

山形新幹線「つばさ」


板谷峠を越える福島~米沢間は、普通列車の本数が極めて少なく、朝の列車を逃すと夕方までの間に1本列車が走るのみである。そこで、1時間に1本は走っている「つばさ」を利用することを考えてみたい。「新幹線」といえどもスピードは遅く、普通列車より15分程速いだけであるが、快適性と利便性では遥かに勝っている。

「つばさ」には自由席があるので、特定特急券ではないけれど、それに準じた料金設定となっている。
福島~米沢 所要時間33分 1510円(運賃=760円、自由席特急券=750円)


上越国境(水上~越後湯沢)を上越新幹線でワープ

Maxとき

上越新幹線Maxとき


上越線は、全線複線電化の幹線なので本数が多いものと思いがちだが、水上~越後湯沢の上越国境は、昼間は3~4時間に1本しか列車が走っていない。あらかじめ時刻表を調べておけば、接続は、それほど悪くないけれど、1日の行程によってはネックとなることもあろう。

そこで、上越新幹線でワープすることを考えてみよう。水上に新幹線の駅はなく、一番近いのが上毛高原駅であるけれど、在来線の駅とは離れている。ただし、路線バスが走っていて、水上~上牧~上毛高原駅を結んでいる。
上毛高原駅~水上駅:バス23分 620円
上毛高原駅~上牧駅:バス7分 380円
関越交通(バス)公式サイト 

上毛高原駅~越後湯沢駅は一駅なので、特定特急券が設定されていて、自由席なら860円である。
上毛高原~越後湯沢:上越新幹線13分 1700円(運賃=840円、自由席=860円)

バス乗換が面倒なら、高崎駅から新幹線を利用することになるけれど、それなりの出費となる。
高崎~越後湯沢:上越新幹線29分 3500円(運賃=1660円、自由席=1840円)

水上~越後湯沢間は、とくに越後湯沢からの上り列車に乗車すれば、2つのループ線、清水トンネルを体験できるので、不便とは言え、時間に余裕があれば、在来線利用をおすすめしたい。

パターン2:在来線特急列車でワープする

新幹線ばかりではなく、在来線の山越え区間などでも普通列車の本数が極めて少ない区間がある。


日豊本線 佐伯~延岡を在来線特急列車でワープ

787系

特急「にちりん」に使われる787系


九州の東側をほぼ南北に走る日豊本線は特急列車が頻繁に走る幹線ではあるけれど、大分県と宮崎県の県境にあたる山越え区間(「宗太郎越え」と呼ばれる)の普通列車本数は極めて少なく、2017年2月現在で1日3往復(早朝と夜間のみ)。

2018年3月17日からの改正では、佐伯発で延岡まで向かうのは早朝の1本のみ、夕方と夜間の2本は途中の重岡止まりになってしまうので事実上、普通列車では、この区間を北から南へは通り抜けられなくなってしまう。延岡から佐伯へ向かう普通列車は、早朝と夜に2本ある。

一方、特急は1時間に1本あるので、佐伯~延岡(この間はノンストップ)の利用を考えてみたい。
特急「にちりん」:所要時間1時間前後 1930円(運賃=1110円、自由席=820円)


伯備線 新見~生山(しょうやま)、根雨(ねう)を在来線特急列車でワープ

特急「やくも」

伯備線の新見駅に到着する特急「やくも」


山陽と山陰を結ぶ重要な幹線である伯備線も、とくに新見~生山間を走る普通列車の本数が少ない。午前中は、下り特急「やくも」が4本立て続けに発車するあとに、ようやく普通列車が出発するありさまだ。ただし、特急の停車駅は変則的で、下りの場合、新見の次の停車駅は生山、根雨と1本毎に交互に停車する。

時刻表をよく調べて、どちらの列車にするか決めるといいだろう。

■特急「やくも」
新見~生山:30分前後 1330円(運賃=580円、自由席=750円)
新見~根雨:45分前後 1590円(運賃=840円、自由席=750円)

なお、新見駅は特急停車駅にもかかわらず、売店がないので、食料調達は不可能である。


函館本線 滝川~深川~旭川を在来線特急列車でワープ

特急「ライラック」

特急「ライラック」(滝川にて)


北海道随一の特急ルートが札幌~旭川間で、特急「カムイ」「ライラック」などの列車が、30分~1時間に1本走っていて大変便利である。

それに反して、滝川~旭川間は、普通列車の本数が激減し、とりわけ、滝川~深川間は、4時間ほど間隔が空いてしまう時間帯もある。そこで、この区間を特急に乗ってワープするのも一案であろう。

滝川~深川:13分 760円(運賃=450円、自由席=310円)
滝川~旭川:33分~34分 2200円(運賃=1070円、自由席=1130円)

滝川~深川間なら、それほど負担にならず、深川始発の旭川行き普通列車に乗り継ぐこともできる。


パターン3:新幹線の並行在来線が第3セクター鉄道となり、青春18きっぷが使えない場合

東北新幹線新青森延伸、北陸新幹線金沢延伸などにより並行在来線の多くがJRの手を離れて第3セクター鉄道となってしまった。当然、特例区間をのぞいて、第3セクター鉄道には青春18きっぷが使えない。第3セクター鉄道は経営状態も苦しいので運賃が高めに設定されていることも多い。それならば、新幹線でワープすることも選択肢のひとつとなろう。


盛岡~八戸を東北新幹線でワープ

東北新幹線E5系

東北新幹線E5系


東北新幹線の延伸により東北本線の盛岡以北はIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道に転換された。このうち八戸以北は、飛び地となったJR大湊線に乗車できるように、八戸~野辺地、野辺地~青森間は、途中下車をしなければ18きっぷを使用して通過することができる。

しかし、盛岡~八戸間は、そのような特例がないため、別途乗車券を購入しなければならない。この場合の運賃は、3040円、所要時間は普通列車で107~110分ほどである。

一方、東北新幹線に乗車すると、盛岡~八戸間の所要時間は27~36分、3500円(運賃=1660円、特定特急料金=1840円)となる。第3セクター鉄道経由と新幹線の差が、それほど大きくないのは意外だ。


金沢~新高岡を北陸新幹線でワープ

北陸新幹線新高岡駅

北陸新幹線新高岡駅


この区間は、北陸本線から第3セクター鉄道であるIRいしかわ鉄道&あいの風とやま鉄道に転換された。金沢~津幡間は、JR七尾線直通の普通列車に乗る時に限って、特例として18きっぷ使用が認められるけれど、高岡方面の列車に乗車するときは、特例はなくなるので全区間の運賃が別払いとなる。その場合、金沢~高岡=820円かかる。

一方、北陸新幹線の「はくたか」「つるぎ」に乗車すると、所要時間は14分、費用は1530円(運賃=670円、自由席=860円)と倍近くかかることになる。なお、新高岡~高岡はJR城端線なので、堂々と18きっぷで乗車可能だ。


富山~直江津を北陸新幹線でワープ

北陸新幹線富山駅

北陸新幹線富山駅


かつて北陸本線の一部だった富山~直江津間は、あいの風とやま鉄道とえちごトキめき鉄道に分割された。JRから分離されたので青春18きっぷは使えない。この区間の運賃は2080円となり、所要時間は2時間半ほどだ。

一方、北陸新幹線「はくたか」に富山から上越妙高まで乗車し、上越妙高~直江津はえちごトキめき鉄道を利用すれば、かかる費用は4770円(運賃計=2180円、自由席=2590円)である。上越妙高駅での乗り継ぎがスムーズなら1時間少々で富山から直江津まで行ける。


新八代~川内を九州新幹線でワープ

九州新幹線800系

九州新幹線800系「つばめ」


九州新幹線開業でJR鹿児島本線から第3セクターの肥薩おれんじ鉄道に転換された八代~川内も青春18きっぷの利用は不可となった。新八代~八代はJR鹿児島本線のままなので、この区間のみ青春18きっぷを使い、肥薩おれんじ鉄道は2620円払うことになる。所要時間は2時間半~3時間前後と直通列車なのか出水での乗換かなど列車によって所要時間にはバラつきがある。

なお、青春18きっぷを提示すると、2060円で「おれんじ18フリーきっぷ」を購入することができる。正規の運賃よりは若干安くなる上に、途中下車や行きつ戻りつといった乗り方も可能となる。

一方、九州新幹線に乗れば、わずか32分。ただし、費用は3550円(運賃=1820円、自由席=1730円)かかる。

時間を気にしないのならば、鹿児島へは肥薩線経由もある(快速列車指定席以外は、追加料金不要)。所要時間は6~7時間かかるけれど、変化に富んだ車窓が楽しめる折り紙つきの絶景路線だ。


パターン4:利便性はともかく「苦行」区間を新幹線でワープする

ロングシートの短い編成

熱海~豊橋はロングシートの短い編成が多い


首都圏から関西方面へ青春18きっぷで向かう場合、お世話になるのが東海道本線だ。夜行列車「ムーンライトながら」を利用すれば乗り換えることなく東京~大垣を利用できる。

一方、昼間に移動するとなると、直通列車はないので、少なくても熱海、浜松、豊橋で乗り換える必要がある。都内から熱海まではグリーン車も連結されていて、青春18きっぷの場合、グリーン券だけ別途購入すると利用できるので重宝するし、快適な普通列車の旅が可能だ。

しかし、熱海~豊橋は、ほとんどの列車が通勤形のロングシートであり編成も短く、ラッシュ時の通勤電車なみの混雑も珍しくない。安いからと妥協してじっと耐える人も多いけれど、この区間だけは東海道新幹線でワープしたいと思う人も少なくない。

熱海~豊橋間を東海道新幹線「こだま」で移動すると83分、88分ほど(途中駅で「のぞみ」「ひかり」に何回も抜かれるので、その回数によって所要時間にバラつきがある)。費用は5830円(運賃=3350円、自由席=2480円)とそれなりのものである。青春18きっぷ愛好者にとっては高すぎると感じる人もいるだろう。
東海道新幹線静岡駅

東海道新幹線の静岡駅


そこで、割安な特定特急料金の使える範囲内でワープすることを考えてみよう。例えば、三島~静岡間のみ新幹線利用を考えると、
ひかり16分、こだま26~27分 1950円(運賃=970円、自由席=980円)
あるいは、静岡~浜松間のみ新幹線利用を考えると
ひかり21分、こだま25~26分 2300円(運賃=1320円、自由席=980円)
これくらいなら許容範囲ではないだろうか。

あるいは、三島~静岡、静岡~浜松と2種類の新幹線のきっぷをあらかじめ用意すれば合計で4250円となり、三島~浜松と通しで買うよりも少しは安くなる
三島~浜松:4750円(運賃=2270円、自由席特急券=2480円)

さらに、掛川まで東海道新幹線を利用し、掛川から第3セクター天竜浜名湖鉄道に乗ってローカル線の旅を楽しむのも一案であろう。
その場合
熱海~掛川:こだま52~58分  4750円(運賃=2270円、自由席=2480円)
天竜浜名湖鉄道:掛川~新所原  2時間前後(116~140分) 運賃=1450円(フリーきっぷ 1700円)
趣味的で楽しく、おすすめのルートではあるけれど、費用面で得にはならない。

以上、新幹線や在来線特急列車でワープすることを考えてみたが、最後に青春18きっぷで乗れる(追加料金不要)特急列車を紹介しておきたい。あくまで特例区間である。


番外編:青春18きっぷで乗れる特急列車

スーパーとかち

特急「スーパーとかち」(新得駅にて)


石勝線(JR北海道):新夕張~新得(特急列車しか走っていない区間)
奥羽本線(JR東日本):新青森~青森
日豊本線、日南線、宮崎空港線(JR九州):宮崎~宮崎空港
佐世保線(JR九州):早岐~佐世保

*佐世保線は、今回のダイヤ改正(2018年3月17日)より適用となった
All About News 青春18きっぷ、なぜ「早岐~佐世保」が特例区間になった?

石勝線は、「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」に1時間以上乗れるのが魅力である。もっとも自由席は「スーパーおおぞら」が2両、「スーパーとかち」は1両と少ないので、夏休み期間など混雑が予想され、新夕張や新得からでは座れないことも考えられる。後の区間は乗車時間が長くても10分程であり、特例区間なのも頷ける。

青春18きっぷは、年々使いづらくなってきた。新幹線の開業で第3セクター鉄道が増えて、青春18きっぷが使えない路線や区間が増えたこと、特急列車優先ダイヤとなり、普通列車の本数が減ったこと、通勤型タイプの車両で編成も短くなり、ゆったり座れないこと、などが理由である。

それゆえ、安くて優雅な各駅停車の旅というのは、過去のものとなりつつある。とくに長距離移動は「苦行」となることも多いので利用するには体力、気力等覚悟も必要であろう。

そうしたことを考えると、快適な旅をするためには、ある程度の出費もやむをえないであろう。ぜひ、今回紹介したようなワープ術も参考にしてもらいたいと思う。
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