NISA・つみたてNISA・iDeCoの違いとは
税制優遇が受けられる制度として、NISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)があります。どちらも資産形成をサポートする制度ですが、特徴をしっかりと把握して、目的に応じて使い分けることが重要です。また、2018年1月からは、つみたてNISAが始まりました。
今回は、それぞれの制度の違いや使い分けのポイントについてお伝えします。
NISA(既存NISA/つみたてNISA)とiDeCoの違い
まずは、NISAとiDeCoについて改めて各制度の特徴を確認してみましょう。NISAは、株式や投資信託への投資から生じた利益(売却益、配当金、分配金)にかかる税金がゼロになる制度です。利用できる金額は一定の上限があり、既存のNISAとつみたてNISAのどちらか選択して利用します。一方でiDeCo(個人型確定拠出年金)とは、税制の優遇を受けながら、将来の老後資産を自分で準備する制度です。自分で金融機関を選び、預金や保険、投資信託など利用する金融商品も選択し運用を行います。掛け金の上限額は自営業か会社勤務かなどの働き方によって異なります。運用してきた資産は60歳以降に、一時金か年金方式(または併用)など各個人の事情に応じて受け取り方も選択できます。
iDeCoは毎月の掛金全額が、所得控除の対象になるので、現在の税金負担を軽減できます。この点はNISAには無い大きなメリットです。しかし、iDeCoで運用してきた資産は受け取る際に課税対象となりますので、課税の時期を繰り延べているだけとも言えます。
ただし、受け取る際には大きな非課税枠もありますし、退職後の方が現役時代より所得水準も低くなっているので、多くの人は利用するメリットの方が大きくなります。
また、iDeCoは公的年金の補完という位置付けであるため、60歳までは引き出して使うことができません。60歳よりも前に使う可能性のある資金についてはNISAを優先的に利用し、老後資産の準備が目的の資金であればiDeCoを優先するなど、2つの制度を上手く組み合わせて利用するのが望ましいでしょう。
(既存の)NISAとつみたてNISAの比較
2018年1月からは、つみたてNISA制度が始まりました。(既存の)NISAとの選択制になりますので、どちらを利用するか判断が必要です。NISAとつみたてNISAは投資金額の上限と非課税運用期間が大きく異なります。NISAは、年間120万円まで、最長5年間を非課税で運用できます。一方で、つみたてNISAは、年間40万円ずつ、最長20年間となっています。年間の投資限度額は、つみたてNISAの方が少なくなりますが、20年間利用し続ければ最大800万円を非課税で運用できます。
また、投資可能な商品も異なります。
NISAは株や投資信託、ETFなど幅広い選択肢から選ぶことができますが、つみたてNISAは、金融庁が定めたガイドラインに合致した投資信託とETFが対象となります。(2017年12月時点で135本のみ)
(既存の)NISAとつみたてNISAの選択
では、(既存の)NISAとつみたてNISAのどちらを選べば良いのでしょう?年間の投資可能金額や検討している投資対象など判断のポイントはいくつかありますが、最も重視すべきポイントは運用を予定している期間です。
途中で運用をやめてお金を使うこともできる制度ではありますが、つみたてNISAの最大の特徴は20年という長期の非課税運用期間にあります。今後20年間にわたって積立投資が可能で、長期で運用を継続できそうな人はつみたてNISAを選択した方が良いでしょう。
判断が難しいのは、これまで(既存の)NISAを利用していた人です。つみたてNISAに変更する場合には注意が必要です。
つみたてNISAに変更をしても、それまでNISAで投資した商品は予定通り5年間は非課税運用が可能なので、売却したり課税口座に移す必要はありません。
しかし、(既存の)NISAは「ロールオーバー(5年経過後も翌年の枠に移してそのまま非課税で運用を継続すること)」ができましたが、つみたてNISAに変更するとロールオーバーが出来なくなってしまいます。
ロールオーバーができないと、非課税期間終了時に評価損が発生していると税金計算上不利になる可能性もあります。また、120万円の枠を超えて大きな利益出ている場合もロールオーバーできれば全額をそのまま非課税での運用を継続できるにもかかわらず、それができなくなってしまいます。
今後も法改正により制度が変更される可能性もありますが、(既存の)NISAは2023年までの制度とされているので、それまでは(既存の)NISAを利用し、その後につみたてNISAの利用を開始するということでも良いかもしれません。
まとめ
iDeCo、NISA、つみたてNISA、と各制度はそれぞれ特徴があります。「どの制度が良いのか」ではなく、資産形成や資産運用の目的に応じて組み合わせて使うことが重要です。
税制も考慮して効率的な資産の配置を考えるアセットロケーション(資産の配置)の重要性が今後益々高まります。iDeCoやNISAで資産運用する場合には、ご自身の資産全体の中での効率的なアセットロケーションを常に意識して取り組みましょう。