自動車メーカーがスポーツカーブランドに注力する理由とは?
2017年9月、トヨタが「GR」を立ち上げたことで、注目を集めているスポーツカーブランド。かつて「マツダスピード」を展開していたマツダ、またスズキも「スズキスポーツ」というモータースポーツを担当する会社に出資(いまは別会社)するなど、かつてはほぼすべての自動車メーカーがスポーツカーブランドを所有、もしくは支援していた。
しかし、モータースポーツ、とくに国内のレースシーンが少し下火になると、存在感が低下していた。
そんな中、トヨタの「GR」、日産の「ニスモ」、SUBARUの「STI」など、モータースポーツを担うだけでなく、スポーティな市販車もラインナップすることで、メーカーのスポーティイメージ、ブランド力向上を図るため、再びスポーツカーブランドが注目されている。
ベースとなる市販車との違いは、エアロパーツなどによる見た目だけが違うソフトなモデルから、エンジンやサスペンションまで手を入れるハードなものまで様々で、各メーカーがニーズに応じて複数用意するケースもある。当然ながら価格は、そのドレスアップやチューニングの度合いによって異なってくる。
スポーツカーブランドは、レースで培われたノウハウを市販車に投入し、そのメーカーのクルマとしての能力を引き上げるのが狙いで、景気などに左右されるが、今後も各メーカーが力を入れるのは間違いなさそう。
日産、SUBARU、ホンダのスポーツブランド戦略とは?
2017年11月5日まで東京ビッグサイトで開催されている東京モーターショー。日産は完成検査の不正問題もあってか、プレスデー初日のプレスカンファレンスにカルロス ゴーン会長はもちろん、西川廣人社長も姿を表さず、ダニエレ スキラッチ副社長の謝罪からスタートした。日産だけにとどまらず、SUBARUでも行われていた完成検査の不正問題は、東京モーターショーに水を差したと指摘する声もある。
それでも、各ブースに並ぶ最新コンセプトカーや市販予定モデルなど一見の価値があるし、試乗イベントなども催されている。ほかにも、ディズニー映画「カーズ」とコラボレーションであるスタンプラリーなども開催されているから子ども連れもの方もぜひ足を運んで欲しいと思う。
日産のスポーツカーブランド「NISMO」とは?
さて、日産のブースで目を引くスポーツブランドといえば新型リーフにもコンセプトカーとして設定された「NISMO(ニスモ)」。ファンの方には説明不要ではあるが、簡単におさらいするとNISMOは(Nissan Motorsports International)の略で、日産のモータースポーツを担うだけでなく、2013年からは日産のスポーツブランドとしてカタログモデル化され、事業を拡大している。
今回の東京モーターショーで初公開されたコンセプトカーの新型リーフ ニスモ(LEAF NISMO Concept)をはじめ、スポーツカーのGT-R、フェアレディZなどのほか、コンパクトカーのマーチやノート、SUVのジュークなどのコンプリートモデル(ニスモ仕様)が日産のいわゆるサブブランドとして用意されている。
さらに、ニスモからはエアロパーツやアルミホイール、サスペンションキットなどのパーツも幅広く用意されていて、セレナやエルグランドなどのミニバンにもパーツ、キット販売で対応している。
ニスモ専用エクステリアをまとう「LEAF NISMO Concept」は、見た目だけでなく、専用チューニングが施されたサスペンション、高性能タイヤなどが装備されている。さらに、専用チューニングコンピューターの搭載によりEV、そしてニスモらしい鋭い走りが楽しめるという。
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SUBARUは「STI」と「STI Sport」を出展
10月25日に開催された東京モーターショーのプレスデー初日の午前中、SUBARUもプレスカンファレンスを行った。この時点でSUBARUの完成検査の不正問題は明らかにされておらず、吉永泰之社長は、にこやかな表情でプレス向けのフォトセッションにのぞんでいた。
SUBARUは「安心・安全」、「走る歓び」を社是のようにアピールし、ブランド力を磨き、今回の東京モーターショーでも主要テーマだけにイメージダウンは避けられないだろう。
あとはSUBARUが完成検査の体制を変え、リコールを行うことで着地点は見えている。今後は、きめ細かい顧客へのフォローと魅力的なクルマを送り出すしかない。
東京モーターショーでは、SUBARUのスポーツカーブランドである「STI(SUBARU TECNICA INTERNATIONAL)」による「WRX STI S208」、「BRZ STI Sport」がデビューを飾った。
前者は450台限定でのマニア向けといっていい本格スポーツモデル。SUBARUとモータースポーツ統括会社である「STI」が共同で、エンジンや足まわりを専用開発し、内・外装にも専用装備が追加されたスペシャルな限定車だ。
2年前に登場した「S207」よりもスペックを向上。標準仕様を含めて3グレードが用意され、2.0Lツインスクロールターボは329ps/432Nmというアウトプットを誇る。
また、レヴォーグに続き、今回の東京モーターショーで披露されたBRZの「STI Sport」は、「STI」のスポーツイメージはもちろん、さらに大人の上質感を付加させたのが特徴で、いまやレヴォーグでは主力グレードの1つにまで成長している。
装備面では、215/40R18ハイパフォーマンスタイヤ&18インチアルミホイールをはじめ、専用チューニングのSACHS(ザックス)ダンパー(ZF製)&コイルスプリングが用意され、STIらしいスポーティな見た目や走りを実現しながら、アルカンターラ/本革シートなどにより上質な雰囲気も漂う。
SUBARUは、本格派の「STI」、スポーティかつ上質な「STI Sport」という2つのラインを軸にスポーツカーブランド戦略を推進していきそうだ。
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ホンダアクセスによる「モデューロ」に注目
現在、ホンダのスポーツブランドを担うのはホンダアクセスによる「Modulo(モデューロ)」。「無限」ブランドも知られているが、ホンダとは資本関係はない。
ホンダの100%子会社であるホンダアクセスは、各種アクセサリーやドレスアップ、カスタマイズパーツ、カーナビやペット関連用品など幅広い商品ラインナップを誇る。
「Modulo X」というブランド名で、コンプリートカーも用意されている。現在は、N-ONE Modulo X、ステップワゴンModulo Xの2台だが、ほかの車種にも展開される可能性もありそうだ。
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