勝林寺でしか味わえない"夜坐"を体験!
自分に喝を入れたいとき、これまでいくつかの寺院で坐禅を経験してきた私。今回、これまでに体験したことのない、一風変わった坐禅を体験することに。それが、夜行う坐禅、つまり夜坐(やざ)体験です。訪れたのは、京都・東山区にある臨済宗大本山東福寺の塔頭寺院「毘沙門堂 勝林寺」。天文19年(1550)、東福寺第二百五世住持であった高岳令松禅師によって、勝林庵として創建。本山の鬼門にあたる北方に位置することから「東福寺の毘沙門天」と呼ばれるようになりました。
9月は限定体験メニュー「夜坐体験」も
例年9月には、季節限定体験として、夜の坐禅である夜坐体験が行われていて、2017年度は「京の夏の旅」の京都の伝統産業・文化に触れる観光プランのひとつとして、体験できます。夜坐体験では、まず通常非公開の三体の仏像を特別拝観することができます。中央の御本尊・毘沙門天は平安時代の作。東福寺の仏殿の天井裏に安置されていましたが、江戸時代に中興開山独秀令岱禅師より発見され、東福寺の全体を守護するために鬼門にあたる勝林寺に安置されたそうです。御利益は財運、勝運、厄除とされています。
向かって右がその妻にあたる吉祥尊天像。美や幸福、縁結びに御利益があるそうなので、女性はよく拝んでおきたいところ。左が子にあたる善膩師童子像。これら三尊を拝むことで、子授け、子育て、夫婦円満にも御利益があるといわれています。
もうひとつの見どころが、毘沙門堂前堂の左右に描かれた虎の大襖絵。大正時代の日本画家・櫟文峰の作品で、吠える寅は毘沙門天、睦まじい2頭は妻子である吉祥天と善膩師童子を表しているとも伝わります。それぞれ3枚の襖を用いて描かれ、間近にすると大変迫力がありました。
さて、いよいよお待ちかねの夜坐です。日が落ちて、辺りが徐々に闇に包まれる頃、1回目の坐禅が始まります。足と手をそれぞれ組み、呼吸を整えていきます。
半目を開き、視線をやや下にして、心静かに坐禅を行います。その前後をご住職が警策(きょうさく)を手に、ゆっくりと回っていきます。
こちらのお寺では、警策を自ら求め、打っていただくスタイル。心がざわついていた私は、合掌をして警策を求めました。「パシッ!パシッ!」。背中を丸め、肩甲骨の辺りに受けるのですが、思わず痛さに顔が歪みます。でも傷みは一時だけで、爽快感が得られました。
2回目の坐禅の頃になると、辺りはすっかり闇に包まれ、燈明の灯りだけが浮かび上がっています。静まり返った堂内には、虫の音だけが響き渡り、自然と集中力が高まり、精神統一を図ることができました。
最後に抹茶とお干菓子をいただきながら、ご住職から坐禅の意味や心身に与える効果など、貴重な法話をいただきました。
坐禅は宗派によって作法が異なるようで、自ら警策を求めて打っていただくのは初めての経験でしたが、より積極的に坐禅に挑むことができ、身が引き締まりました。周囲が暗いので眠くなるかと思いきや、日中に比べて雑念が拭いやすく、感覚が研ぎすまされていくようでした。
●夜坐体験
開催日:平成29年9月16日(土)・17日(日)・23日(土祝)
時間:17:30:~19:00頃 (所要時間 約1時間30分)
申込み:「京の夏の旅 申込フォーム」坐禅が終わり、ライトアップされた庭園を少し散策しました。11月18日(土)~12月3日(土)の秋の特別拝観では、紅葉のライトアップが行われますので、こちらもチェックしておきましょう。
一年を通じて坐禅の体験メニューが豊富
こちらのお寺の場合、個人での拝観は新春と秋の特別拝観時のみで、一般拝観は8名以上の団体の場合のみ、予約制で受け付けています。一方で、坐禅体験については、予約制ではありますが、個人でも気軽に参加できるスタイル。ほぼ毎日1~2回行われています(HPに日程を掲載)。約1時間をかけて、寺院の紹介から始まり、坐禅の説明、15分間の坐禅を休憩を挟んで2回、最後に抹茶とお菓子をいただきながら、ご住職の法話に耳を傾けるという内容で、通常は日中行われています。
また、基本の坐禅+αの体験メニューとして、通年開催の「坐禅と朝粥体験」(約80分、3000円)、「坐禅とヨガ体験」(毎月開催、約120分、3000円)や、季節開催の「坐禅と聞香体験」、「坐禅とお灸体験」など、坐禅を中心に広がる多彩な体験メニューが充実しているのも特徴。日程や詳細はHPからチェックしてみてください。
「毘沙門堂 勝林寺」
・住所:京都府京都市東山区本町15-795
・TEL:075-561-4311(予約受付時間8:00~17:00)
・拝観時間:8名以上での事前予約(要問い合わせ)
・拝観料:800円(寺宝の説明付き)
・交通:京阪本線東福寺駅から徒歩8分