回復してきた世界最大級の銀行シティバンク

グローバル銀行のシティグループの株価回復は、世界経済の更なる本格回復を先取りした動きに見えます。

グローバル銀行のシティグループの株価回復は、世界経済の更なる本格回復を先取りした動きに見えます。

シティバンクを傘下に持つ、シティグループ(銘柄コード:C、米国ニューヨーク証券取引所上場)は世界160以上の国に2億の顧客口座を持つグローバル銀行で、総資産額1.8兆ドル、預金額9,380億ドル、貸出金6,240億ドルを持ちます。200年続くニューヨーク発祥の商業銀行で、古くから何度か全米最大の銀行ともなってきました。歴史のある同行は、保険やクレジットカード会社などとの再編を経て、現在の組織は中核事業を行うシティコープと、それ以外の特殊な業務を行うシティ・ホールディングスに分かれます。

中核のシティコープは、リテールバンキング(個人、中小・零細企業向け)、シティブランドのカード事業などを世界で行う「グローバル個人金融部門(GCB)」と、企業、公的機関、富裕層を相手に投資銀行業務、法人貸付業務、キャッシュマネジメント及びトレードファイナンス業務、プライベートバンキング業務と債券・株式などの市場業務を行う「インスティチューショナル(機関)・クライアント・グループ(ICG)」の二部門に分かれます。

シティの株価は大打撃を受けた金融危機(数兆円もの公的資金やオイルマネーの注入を受ける)で暴落し、その後徐々に立ち直ってきたものの、他の大手行に比べて回復は鈍いというイメージでした。2016年夏~トランプラリーまでに、米国長期金利上昇を材料に銀行株は大きく上昇しましたが、シティは出遅れていました。しかし、直近の同社株は出遅れ修正が進み、JPモルガン(JPM)、バンクオブアメリカ(BAC)、ウェルズファーゴ(WFC)などの優良銀行株よりも大きく上昇し、いち早く高値をブレークした銘柄となりました。時価総額も、金融危機から立ち直りつつあった2009年末時点では1,000億ドル(約11兆円)もなかったのでしたが、現在1,775億ドルにまで回復しています。金融危機で甚大な損失を出したシティでしたが、徐々に資本力が良くなっており、健全な財務体質が金利上昇環境に乗る事で、将来の利益も回復すると期待します。

2016年第4四半期は、収益、利益とも予想平均を上回る内容

シティグループの損益計算書

シティグループの損益計算書

銀行の収益は、保有資産からの収益である「資金運用収益(貸出金からの利息や有価証券配当利息等」と、手数料や取引から発生する非金利収益である「その他経常収益」に分かれます。同社の「資金運用収益」は2011年をピークに下がり続け、長期金利の低下を反映しているものと思われます。ただJPモルガンは前期に回復が見られましたが、同社の平均利鞘はさらに低下を続け、部門収益も減少しています。そして、資金調達収益から預金利息や支払利息などの資金調達費用を引いた利鞘が「純受取利息」となります。

一方、役務取引収益、特定取引収益、投資有価証券売買益当から成る「その他経常収益」は年によってばらつきがありますが、2016年は▼16.7%の減収でした。

銀行の費用は大きく分けて、資金運用収益の基となる貸出金から発生する「貸倒引当金」と、人件費をはじめその他管理費用の「その他経常費用」に分かれます。貸出金の中の不良債権処理の過程で発生する貸倒引当金は、金融危機後の2009年、2010年にそれぞれ400億ドル、258億ドルも発生しましたが、ここ4年はそれぞれ60~70億ドル程度と安定しており、中国の銀行に比べると遥かに少ない金額(費用)となっています。

収益から費用を引いた税引き前利益ですが、2016年は▼13.5%減の214億ドルでした。JPモルガンは同期に+12%増の345億ドルとなっていましたので、見劣りする結果です。ただ元々あまり期待されていなかったのか、シティの第4四半期は、収益、利益とも予想平均を上回る内容で着地しました。

資本力強化へ

シティグループのバランスシート

シティグループのバランスシート

銀行のバランスシートは左の資産側に収益の基となる「貸出金」と有価証券などの「その他収益資産」があり、右の負債・資本側には金利コストを生む「預金」「借入金」があり、それぞれ大きなウェイトを持ちます。総資産、預金、貸出金の規模は三菱UFJより一回り小さい規模ですが、一般に米国の銀行の収益力は高く、資産を運用した結果である利益額は遥かに大きくなります。

国際的な枠組みで通常の自己資本比率よりも厳格に定められた普通株式等Tier 1 比率は直近四半期で12.8%となりました。15年第1四半期の11.2%から継続的に改善を続けており、同行は資本力の強い銀行の一つとなってきました。シティは17年に総額12.1億ドル、18年に11.8億ドルとする配当計画を発表しています。

世界展開に強み、歴史のあるグローバル銀行

北米に705支店、そして海外に計1,896支店を持つシティグループは歴史のあるグローバル銀行

北米に705支店、そして海外に計1,896支店を持つシティグループは歴史のあるグローバル銀行と呼べます

前述のように同社部門はリテールの「グローバル個人金融部門(GCB)」と法人、機関、富裕層向けの「インスティチューショナル・クライアント・グループ(ICG)」に分かれます(あと非継続事業などを管理する本社管理部門もありますが大きな意味は持ちません)。直近四半期の収益、利益を部門別に割ったのが上の図となります。

売上に相当する収益においては各部門の地域別収益も表しています。特にリテール業務では各地域に満遍なく分散されており、アメリカで同社よりも強い優良銀行は幾つもありますが、世界展開という意味では強みを持ちます。ただ、利益への貢献度で見ると北米を中心とする「インスティチューショナル(機関)クライアントグループ(ICG)」が7割以上を占めています。

「インスティチューショナル・クライアント・グループ(ICG)」の収益で大きいのは、キャッシュ・マネジメントおよびトレード・ファイナンス業務を行う「トレジャリー&トレード・ソリューション」と、投資銀行業務、そして市場金利から収入を得る「マーケッツ&セキュリティーズ・サービス」の各業務となります。

純金利マージン(NIM)の低下が止まるか!?

純金利マージン(NIM)の低下が止まるか!?

純金利マージン(NIM)の低下が止まるか!?

2017年第1四半期のシティ決算は、その他収益(非金利収益)が大きく伸びたことで増収増益となりました。ただ利鞘収益である純金利収入は減少を続け、それはNIM(総資金利鞘)が依然として低下傾向にあることによります。一時2.95%あったNIMは、直近で最低となる2.74%にまで低下しています。

預金や短期市場から低利で資金を調達し、それを貸出や高利の長期資金運用で儲けるというのが銀行の本業であり、それにはNIMの上昇が欠かせません。JPモルガンなどは一足早く改善傾向を見せており、今後シティにも底打ちを期待したいところです。

最終の四半期一株あたり利益(EPS)はばらつきがあるものの、全体として上昇、改善の傾向にあると見えます。第1四半期のEPSは1.35ドルで、前年同期の1.10ドルから大幅に上昇し、予想平均をも超えて着地しました。ただこのうち8セントほどは本社管理部門の特別益があった模様で、今後の継続的な増益にはNIMの改善が待たれるところです。

株価は上昇トレンドへ、世界経済の本格回復を先取りした動きか!?

株価チャートは6月に二番底を付け、以降は完全に上昇トレンドに乗っている形

株価チャートは6月に二番底を付け、以降は完全に上昇トレンドに乗っている形

国内で強いJPモルガンやウェルズファーゴなどのより大きな優良行に比べ、これまで見劣りのしてきた感のあるシティですが、世界的な低金利(一部ではマイナス金利も)と株式市場の動揺で大きく下げた昨年1月、そしてブレグジットのあった6月に二番底を付け、以降は完全に上昇トレンドに乗っている形です。ブレグジット以降の米国長期金利は上昇傾向にあり、直近では下がっているものの、金利や物価はFRBの見立てに沿って正常化に進むと思います。

これまで他行に比べても弱いNIMの推移を見せていたシティですが、第1四半期にさらに20ベーシスポイント低下したものの、底打ちを意識したいところと思います。景気や株価の良い世界環境からみて、グローバル銀行のシティ株は、本格回復を先取りした動きに見えます。景気と金融市場がこのまま良いのであれば、金融機関の株価は必然的に再び舞い上がることになります。

参考:米国株通信

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